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AI ray(エイレイ)~小さな蛇は夢を見る~  作者: 紙木 一覇
後章 ~水折り(みおり)の炎~
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第281話「ここで仲良く吹っ飛ぼうぜ!」

ごゆっくりどうぞ。

 ネフィリムの肩に担がれた四つの砲台からエネルギー弾が放たれ、同時に神巫(カンナギ)の体は白い太陽に包まれ、コリスの体は水色の太陽に包まれる。

 エネルギー弾は二つの太陽に着弾してそれを吹き飛ばし――中から円環を身に付けた二人を露わにした。


「って、コリス⁉ 【覇―トリ―】禁止したわよね⁉」

「今初めてやりました!」


 ぶっつけ本番で成功したのか。

 それは見事だが、「この戦いが終わったらちょっと説教です」「え~?」なんてやりとりが。


「オーオー、やってみな! ワシをこいつから降ろせたら負けを認めてやるよ!」

「だそうよ」

「やっちゃります!」


 一歩、二人が踏み出した時――下がったはずのワシが円環を纏った状態で二人の背後に。


「「――⁉」」

「終わりよ!」

「邪魔だ!」


 ネフィリムの全砲門が開いた。放たれるビームが空中で狙いを定め、そして――ワシの全身を焼き貫いた。


「――は……」

「鬱陶しいんだよバカ野郎が。ブライド! そいつ回収しろ!」

「……メイレイスルナ」


 そう言いながらも囚人はどこからか飛び降りて来てワシを抱える。


「イッテオクガソノフタリニオマエガマケテモテヲカスコトハナイ」

「オーオー、良いぜ別に」

「…………」


 囚人はそれ以上言葉を発さず、ビルの間を飛び跳ねながら改めて去る。


「さぁて、リスタートと行こうか!」

「空を見なさい」

「あ?」


 神巫(カンナギ)の言葉に素直に上を向くクソ看守。余裕を見せての行動だったが顔色があっと言う間に青く変化した。


「まさか……」


 目に映るはネフィリムの巨体と良い勝負をする程の巨大な岩の群体。流星群。


「ここに⁉」


 隕石となって落ちて来る。それを悟ったバカ看守はネフィリムを浮上させて逃げようとする。が、足と地面が凍り付き引っ付いているではないか。


「こんなもん!」


 足を包む氷に向かってエネルギー弾を放ちそれを破壊、今度こそ飛び立とうとする。けれども今度はアホ看守の体が動かなくなってネフィリムは無様にも転んでしまう。押し潰されて倒れる小さなビル。破片が神巫(カンナギ)とコリスを襲うも二人は初めて見せる球形のバリアで護られていた。

 そんな神巫(カンナギ)の手には笹と願いを書いた短冊があった。


「くそ!」


 ネフィリムを、ドジ看守を隕石群が襲う。まるで爆弾の雨でも降り注いでいるかのような豪風と爆発。このバトルに使われていた範囲全てが瓦礫となって飛び交う。しかし神巫(カンナギ)たちは護られて、一方でネフィリムは何弾も直撃を受ける。

 ネフィリムの腕が半ばで断ち切れ、指すら吹き飛ばし、足を吹き飛ばし、胴体を抉る。辛うじて頭部は無事だったが、不幸な事にマヌケ看守が乗り込んでいたのは胸の部分。胴体を抉られた衝撃が届いたはずだ。


「ぐ……は」


 操縦席は半壊して、切断されたケーブル類から散る火花。


「何でだ……どっちの能力だこりゃあ……応えろ!」

「わたしよ」


 言ったのは、神巫(カンナギ)


「楽譜化した能力は自由に引き出せるの」

「オーオー! 能力の奪略か! 綺麗な顔してえぐいじゃねぇか!」

「まだ元気みたいね。コリス」

「ハイです」


 地面を殴りつけるコリス。すると地面が脈動して細い針が出て来て、ヘンタイ看守の乗る操縦席を貫いた。


「はっ……」


 両肩、両掌、両脚を貫かれたNOみそ看守。気合いで持たせていた体が震え始めている。


「降参しなさい」

「……はっ! 誰が!」

「そう、なら」


 神巫(カンナギ)が倒れているネフィリムに優しく触れる。ネフィリムの体が淡く白く輝いて――楽譜に変わっていく。


「てめぇ!」

「そこから降ろせば負けを認めるのよね?」

「『ウォーリアネーム』!」

「無理よ」


 神巫(カンナギ)の楽譜化の方が早い。ネフィリムは楽譜となって消えてしまった。


「――ぐ!」


 ネフィリムが消え、針も消えた事でフヌケ看守は力なく倒れ落ちる。


「行きましょコリス」

「……ま…て」


 その言葉は届かずに神巫(カンナギ)は背を向けた。


「待てよ!」


 オタンコナス看守の手にコマが顕現する。それは唸り声をあげる程に急速回転を始め、風を巻き込み、空気の塊を造り出した。


「ぶっ飛びやがれ―――――――――――――――――――――――――!」


 神巫(カンナギ)に向かってコマごと空気ボールを投げつける。しかし。


「ネフィリム」

「――!」


 神巫(カンナギ)を護るようにネフィリムが再び顕現。両肩の砲からエネルギー弾が放たれ、空気ボールは霧散した。


「まだだ! 【覇―トリ―】――エスペラント!」


 唱えられた言霊。けれどもチカン看守を包むはずの太陽は現れずに。


「なん……⁉」

「貴方の【覇―はたがしら―】は凍結させていただきましたのです」

「な……」

「ほら、体の方にも影響が出始めますよ」


【覇―はたがしら―】は細胞の至る所に染み込んでいる。それはもう融合に近い状態。

 であるならば、【覇―はたがしら―】の機能が凍結されれば。


「体が……」


 崩れて行く。細胞は破壊され、再生も複製もない。


「それなら!」


 ガチン! 歯を強く噛み合わせる音。


「オーオー! ここで仲良く吹っ飛ぼうぜ!」


 五秒後、ウスヨゴレ看守の体は爆発する――はずであったのだが何も起こらない。


「自爆用の爆弾から希望が消えたのよ」

「……くそったれ」


 諦めた、その時。


「「「――⁉」」」


 ザコ看守の体に――大鎌の刃が突き立った。


「この……鎌は…」

「ふん、ざまぁ」


 ブライドと共に退いたはずのワシのモノ。


「……オー…オー、負け犬が」

「どっちが。戦場は返してもらうよ」


 声はする。だが神巫(カンナギ)たちが見回してもワシの姿は見えない。見せない。


「三人纏めて消え去りな!」

お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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