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AI ray(エイレイ)~小さな蛇は夢を見る~  作者: 紙木 一覇
後章 ~水折り(みおり)の炎~
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第274話「アトミックとキスさせてあげる」

ごゆっくりどうぞ。

「――⁉」


 いや、方向を急速に変えたのだ。矢、つまり黄金の槍そのものが曲がって空へと上がり、更に方向を変えて急降下。ワシの背後からその心臓を狙う。


「くっ!」


 妖精のカバーが間に合わずワシは自ら飛び退いて矢をかわし、そこに別の矢が飛んで来た。

 回避は間に合わない。んならば。


「アイテム顕現」


 ワシの頭に、白いうさ耳が生えた。


「可愛いなおい!」


 うさ耳着用のワシは二つ目の矢をかわさず、それとの間に綿毛の盾を造りだして矢を絡め捕った。

 しかしすぐ後ろから三つ目の矢が飛んで来て、なんとその上にアトミックが乗っているではないか。

 ワシは綿毛を使ってアトミックごと矢を止めようとするがアトミックはその前に離脱。宙へと飛んで奇跡を乗せたレーザーの雨を降らす。


「ムダなんだよねぇ」


 綿毛の盾で全身を包みレーザーを霧散させる。

 妖精たちが宙に浮くアトミックを討つべく動き出し、ララが掟を以て動きを制すとサザイがララの影を盗るべく動き、黄金の矢がそれを牽制する。

 黒い街がビームを放つとアトミックがビルに手をついて奇跡を流し、ビームを止めさせる。


「キリがないねぇ。

『ウォーリアネーム 【今は無き伝説の王都】!』


 ワシとサザイの同化。更に。


「【覇―トリ―】――エスペラント!」

「「――!」」


 ワシの体を黒紫の炎が包み、弾けたその時には円環がワシの体を装飾していた。


「せーの」


 軽く、ソフトに地面を踏みつけるワシ。しかし地面は隕石でも落ちたかのようにクレーターを作り出し、衝撃が地と大気を伝ってララとアトミックを襲った。


「「つぅ!」」

「君ら【覇―トリ―】を得てまだほんの数時間、永くても数日でしょう? それで良く向かって来れるよねぇ?」


 本来何かを会得したならばそれを使いこなせるまで鍛錬をするものだ。だがこの奇襲を成功させる為にそれは行われていない。最高管理の考えでは自分たちで付け焼刃の鍛錬をするより実戦での成長を見込んでいたのだろうが、ダメだね。


「さあ、そろそろ決着と行くよ」

「アトミック!」

「あいさ!」


 ララは奇跡の力を最大限に乗せた矢をアトミックに向けて射った。アトミックはそれを受け取ると今度は自分の奇跡の力を上乗せして、更に自らのレーザーを全身に纏い、


「行くぞシンリー!」


ワシに向けて自身を撃ち出す。


「ムダだっての!」


 二人の間に奇跡の力を乗せた綿毛の盾を造り出し、そこにララの矢が飛んで来て脚を着く地面を崩された。


「ムダって言った!」


 アトミックが綿毛の直前で方向を変えた。ララによる操作だ。


「成程!」


 しかし背後から迫るアトミックにワシの反応は凄まじく速く片方の掌だけで矢を止める。


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 それでもアトミックは尚も矢を突こうと叫ぶ。だが矢にヒビが入って――パン! と砕け散った。


「ま・だ・だー!」


 アトミックの矢を握っていた手にエネルギーが集まり小さな三角錐の形を作った。レーザーを一つだけに集中させたのだ。


「穿てえええええええええええええええええええええええええええええええ!」

「ムダだっての!」


 ワシが手を横に薙いだ。その勢いでアトミックの手も弾かれて、


「ジ・エンド!」


ワシの大鎌がアトミックの首を狩るべく動く。


「――え」


 そのワシに向かって、黄金の雨が降り注いだ。

 全身を傷つけられるワシ。同化を維持できなくなってパペット・サザイと分離してしまう。


「何が……」

「砕けたら矢を操れないなんて言ってないわよ」


 倒れ込むワシに向けて放たれるララの言葉。彼女の全身が震えている。痛みを押しての言葉だ。


「……は、慣れない事して体にガタが来てるみたいだね」

「そっちの状態よりはマシよ」

「こ……こっちも結構ガタが……」


 そう言うのはアトミックだ。彼もレーザーを駆使した為に言う通りガタが来ている。


「だけど……」


 アトミックは懸命に二本の足で立ってワシを見下ろす。


「悪いけど……拘束くらいさせてもらうぜ」

「懸命だねぇ……」

「これ以上……邪魔されるわけにはいかないからな」


 ドレッドノートとの同化を解いて、彼の中から拘束帯を取り出した。ワシの腕、脚を拘束帯で結んで近くの街路樹に括り付ける。


「けど……殺さないなんて……甘い甘い」


 口角があがる。ワシは笑ったのだ。


「甘くて結構。この戦いが終わったらちゃんと牢に……入れてやっからな」

「甘い対応で宜しく」


 敗けたと言うのに笑う。大した精神力だろう?


「ふん。

 行きましょう姫さま」

「……どこに向かって?」

「…………」

「…………」


 考えなしかい。


「シンリー」

「え? まさかワシから情報取ろうって言うのララ?」

「アトミックとキスさせてあげる」

「街の中央に行ってごらん」

「ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおとぉ⁉」

お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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