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AI ray(エイレイ)~小さな蛇は夢を見る~  作者: 紙木 一覇
後章 ~水折り(みおり)の炎~
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第212話「先読みされるなら力で叩き潰す!」

ごゆっくりどうぞ。

 オレたちは三方向に別れて一足飛びにビキニ環礁を目指す。オレは上空から、涙月(ルツキ)は右から、パフパフは左から。

 すぐに目的地にまで達し用心深く停止。周囲をあらゆるレーダーで探る。


「……いない、か」


 一つ息を吐いた瞬間――オレは見知らぬ黒い街へと飛ばされていた。


「――⁉」


 黒いビルの立ち並ぶ街。街? いや違う。至る所にある銃火器を見るにこれは戦闘要塞。


「涙月! パフパフ!」


 敵の発見と注意を促すべく呼んでみるがそれに応える声はなく。

 切り離された。

 オレはどこへ飛ばされた? や、それよりまずは。


「キリエ、【覇―はたがしら―】の全機能で要塞をスキャン。銃火器の射線から隠れられる場所を探して」

『…………』

「キリエ?」


 沈黙とは珍しい。しかしそれってとても言い辛いと言う意味だよね?


『ごめんなさい、死角なし』

「……マジで」


 オレにも観えるようにキリエはホログラムを表示する。要塞全域を表示したそれは真っ赤に染まっていた。


『来ます!』


 ビルの外壁に光が走った。撃ち出されるレーザー、ミサイル、銃弾。

 オレはエナジーシールドを全開にし、同時に空に急上昇。しかしオレを追って更なる攻撃が放たれる。


(ヨイ)! 一旦ビキニ環礁から離れましょう!』

「退避できたら――ね!」


 追って来る攻撃に対してオレは無数のガラスに似た透明な苦無(クナイ)を放つ。ミサイルを切り落とし、レーザーの盾になり、銃弾を砕く苦無。だけどその何倍もの攻撃が次から次へと放たれる。


「ん? キリエ、さっきビキニ環礁から離れようって言った?」

『はい』

「ここはビキニ環礁なの? どこかに飛ばされたわけではなく?」

『そうです。座標は変わっていません』


 ……どうなっている?

 これは誰かのパペットか?

 どうやって突然現れた?

 他の二人は無事なのか?


『宵、まずは自分を考えて』

「――うん」


 しかしだ。

 撃たれる攻撃は数を一向に減らさず、ただ無暗にオレの体力を削っていく。

 幾ら【覇―はたがしら―】のエネルギー源が永久ものですぐにオレの体力を回復してくれると言ってもそれは永続すると言うだけで一定以上の回復力を超える事はない。つまり回復する前に体力を失えば決定的な隙になる。

 空に!

 オレは全速力で空へと昇る。幾ら何でも宇宙までは攻撃も届くまい。と思ったのに。


「――⁉」


 黒い要塞が――倍加した。

 そんなバカな!

 要塞はぐんぐん姿を伸ばしてかのプラネタリウムシティもかくやと言う程に巨大になる。地から天へと聳え立つそれは最早建造物と言うより成長し過ぎた黒水晶にも見えた。

 なら横に!

 飛んでみるがやはり要塞がその腕を伸ばしてくる。

 放たれるレーザー、ミサイル、銃弾。が、苦無の隙を縫ってオレと衝突する。


『宵!』

「だいっじょうぶ! エナジーシールドを最大で維持して!」


 とは言え上もダメ横もダメ。ならばあとは、下。

 急降下。海に飛び込んで苦無をドリル状に回転させ土中へと潜る。エナジーシールドは地球の大気成分を作り出してくれるから呼吸の問題はない。要塞の下に出て――砕く。つもりだったが。


「――だ!」


 黒い要塞が伸びてきて横っ腹を殴られた。

 っつ……。エナジーシールドがあるとは言え、痺れた……。


『宵!』

「え」


 超至近距離。オレを殴った要塞が目の前でレーザーを放つ。


「グ――ぅ!」


 土中から無理やりに出され海を上がって吹き飛ばされる。


「この!」


 不格好な体勢から紙剣(シケン)を薙いでレーザーを弾く。少しばかりレーザーが途切れた隙にその場を離れ――


「――!」


 要塞全体から超々巨大なレーザーが放たれた。


星章(セイショウ)!」


 叫んだ瞬間にオレの周りが超高熱のレーザーに包まれる。

 ちょ……これは!

 エナジーシールドと星章を全開にしても前に突き出された両手に熱と振動が伝わってくる。完全に防ぎきれていない。このままではいずれ突破されるだろう。その前に脱出しなければ。

【門―ゲート―】を出現させレーザーが放たれている方向とは逆位置に転移する。が。


「――⁉」


 転移したそこもレーザーの光が満ちていた。

 位置がばれた⁉

 その後も二度三度と転移してみるが結果は全て同じ。まるでこちらの思考を先回りしている気がする。

 ……思考を先読み? 思考――つまり未来。【史実演算機】を持っている?


『宵!』

「キリエ! ジョーカーを!」


 世界が白く輝いた。光は収斂し、あらゆる命を象っていく。鯨に象に鳥に蟻に菌。遥か昔から今、未来に至るまでの全ての命が繋がって。命の光。それをオレに集中させる。


「先読みされるなら力で叩き潰す!」


 命の光に包まれたままオレは要塞に向けて突撃する。レーザーに押されているから速度は精々時速十キロメートルと言ったところだが確実に迫り、黒い要塞が姿を見せた。

 全身から苦無を放って紙剣に吸収させる。


「く・だ・け・ろ!」


 叩きつける勢いで斬撃を放った。


「――!」


 要塞に一筋の線が走る。斬撃の剣閃だ。剣閃を中央に要塞が割れて行き――崩壊。

 オレは崩れゆく要塞に巻き込まれないようもう一度空へと上がり下を見た。見た。確かに見た。崩壊していない要塞を。


「なっ?」


 どうなった? なぜ崩壊が止まって、いや元に戻っている? この要塞がパペットなら回復には時間がかかるはずで、ナノマシンの集合体だとしても設計図通りに瞬時に戻ったりはない。ナノマシンがナノマシンを複製する時間が必要だからだ。

 なのになぜ!

お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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