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AI ray(エイレイ)~小さな蛇は夢を見る~  作者: 紙木 一覇
前章 ~小さな蛇は夢を見る~
197/334

第197話『ラストバトル! スタ――――――――――――――――――――――――ト!』

welcome!

前章最終話です。

よろしくお願いします。

 魔法処女会(ハリストス・ハイマ)教皇――神巫(カンナギ)

 パランにアマリリスと共に抱きかかえられて、そのままオレたちの場所に向かって降り立つ彼女。


「動いたものは魔法処女会(ハリストス・ハイマ)からの攻撃を受けます。そうさせないで」


 アンチウィルスプログラム相手にも毅然として言い放つ神巫(カンナギ)。言葉から察するにもう会場を魔法処女会(ハリストス・ハイマ)が取り囲んでいるのだろう。

 神巫(カンナギ)はオレに顔を向けると、


「優勝おめでとう、(ヨイ)


と笑顔と共に言ってくれた。


「ありがとう」

「早速であれなんだけど、アマリリスに【魂―むすび―】を」

「はい」


 その言葉を待っていたかのように神巫(カンナギ)の脚にしがみついていたアマリリスがとててと小さな足を動かして寄ってきた。


「宵、おめっと」

「うん、ありがと」

「おむすび――じゃなかった、【魂―むすび―】貰って良い?」

「ん」


 オレは片膝をついてアマリリスに目線を合わせる。次いで彼女の小さな左手を取ると【COSMOS】を起動させて【魂―むすび―】二つを転送した。彼女の小指に現れるタトゥー。


「これで後は――」

「これで最後だ」

「――! 幽化(ユウカ)さん!」


 一体いつの間に現れたのか幽化さんがフィールドに脚を乗せてこちらに悠然と歩いてきていた。いや、彼だけではない。彼についてダートマス打倒に向かった人全員だ。多くの人が【seal―シール―】や通常ナノマシン衣料をボロボロにしている。修復が間に合っていないところを見るに衣料ユニットを傷付けられたかナノマシンの機能を阻害する攻撃を受けたのだろう。

 そんな中で幽化さんだけが無傷であった。


「【魂―むすび―】は回収した。

 アマリリス、手を」


 合流すると彼は早速アマリリスの手を取って【魂―むすび―】を転送する。

 更に次いで。


「アマリリス、全ての【紬―つむぎ―】と火球らの施した紐を以て人と自身を接続しろ。アマリリスの機能が解放される」

「ん」


 アマリリスが集中する為に目を閉ざした。

 途端。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――ァ!


「「「――⁉」」」


 暁色の光がアマリリスから放たれて世界に広がっていく。

 都市から都市へ、国から国へと。

 その光は落ち着くと幾百幾千もの暁色の数式に変わっていって。どれもこれもが知らない数式だ。


「これからこれらを利用して世界の拡張革新が始まる。ぼやぼやしていると置いて行かれるぞ」


 そう言えば【覇―はたがしら―】の機能もアマリリスの能力に影響して解放されると言っていた。一体どんな機能があるのだろう?

 胸を高鳴らせていると幽化さんがユメに目をやった。


「お前はオレが預かる」

「ああ、良いよ」


 それを聞いて、今度はオレを見た。


「宵を残して全員フィールドから降りろ。エキシビションだ」

「――はい!」


 慌てて皆はユメを抱えてフィールドから降りていく。


「実況、カウントダウンを――」

「「「よーちゃーん!」」」


 ん?

 客席からのオレを呼ぶ声。お姉ちゃんのものではない複数の声だ。オレをちゃん付けで呼ぶ人間は限られ――あ。


天嬢(テンジョウ)ー!」

「よーちゃーん!」


 あれは……クラスメイトたちだ。

 いやそれだけではない。二人の生徒会長に前哨戦で戦った人たちも。


「観てたよー!」

「優勝おめでとう!」

「かっこ良かったぜー!」

「最後まで頑張ってねー!」

「勝っちゃえ!」


 …………………………………………ああ、いけない……泣きそうだ。

 涙月(ルツキ)の方を見るとグッと親指を立てて満面の笑顔を向けてくれていた。

 嘲笑から始まったオレのパペットとの付き合いは、今ようやく幸福を与えられた。


「「「幽化せんせー!」」」

「――?」


 また別の所から声が上がった。今度は幽化さんへと向けられたものだ。


「勝ってくださーい!」

「まだ子供に負けちゃダメですよ!」

「好きです!」

「「「頑張ってー!」」」


 今どさくさ紛れに告った子がいたけど⁉

 生徒たちの想いは届いたのか届かなかったのか、幽化さんは一瞬視線を向けただけで極めて冷静平静で。実に幽化さんらしい。

 そんな事を思っていると頭の中でメールの着信音が鳴った。後で見ようかと迷っていると幽化さんが何も言わずに頷いて。……何でメールが来たってわかったんだろう……。

 まあそれもそれで幽化さんらしいと、オレは頷き返してメールを開いた。


【八月三十一日十二時ちょうど、想い出のキスの場所で待っています。

 貴方を好きな二人の女の子より】


「…………」


 オレは何も言わずに涙月とララのいる方向を見た。すると二人の女の子はこちらに笑みを向けていた。

 微笑み、と言うものだ。

 オレに答えを求めている。

 同じ時間に二か所は行けないから、そろそろ選んでと言っている。

 ……そう、だ。彼女たちの好意に甘え曖昧にするのはダメだろう。

 オレは二人に一つ頷いた。こちらも当然微笑んで。

 きちんとオレの気持ちを伝えよう。

 この勝負に――幽化さんとのバトルをきっちり終えて。

 前を見る。幽化さんと視線が合った。

 ……勝ちたいな……いや、勝とう。勝つんだ。皆の期待に応える為に。自分の為に。


「実況、カウントダウンだ」

『はっはい!』


 オレと幽化さんは五十メートル程の距離を取って向かい合った。

 これがこの大会のラストバトルになる。


「幽化さん」


 オレは息を吸って、吐く。


「今日オレは、貴方を超える!」


 夢見た瞬間を、今。


「……やってみろ」


 二人揃ってパペットと同化して――


『カウントダウンを始めます!

 10

 9

 8



 3

 2

 1

 0! ラストバトル! スタ――――――――――――――――――――――――ト!』


 オレは幽化さんへ向けて、フィールドを蹴った。




                         ~小さな蛇は夢を見る~ 編 了

お読みいただきありがとうございます。

と、言うわけで前章最終話でした。

ここまでのお付き合い感謝いたします。

そして可能ならば後章もよろしくお願いします!

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