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AI ray(エイレイ)~小さな蛇は夢を見る~  作者: 紙木 一覇
前章 ~小さな蛇は夢を見る~
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第176話「それ! なんで【COSMOS】って言うか知ってる⁉」

おいでませ。

 オレたちは転がる人たちを横目に捉えながら走り去る。その行動を見た他ウォーリアたちも仲間と合流して別の非常口へと向かった。

 外に出て振り返り、改めてそれぞれパペットを顕現する。

 大気に散布されているナノマシン【逢―あい―】によって実体が与えられているパペットに支えられてオレたちは会場外壁の上へ上へと昇って行く。

 昇って行って――落とされた。


「ちょ――」

(ヨイ)!』


 落ちるオレの体をアエルの頭が受け止めた。オレは痛む背中をさすりながら上を見る。

 なに? 何された?

 見上げる先には皆がいて、その更に上に女性がいた。女性が脚をあげているのを見るに蹴落とされたのだろうと思われる。


「あ」

「え? って」


 気づけばインフィが泉王(イズミオウ)の頭の上に乗っていた。タダ乗り厳禁。


「インフィ、何かする前に一言欲しいんだけど」

「人生にはある程度のドッキリが必要だよ?」


 ……まあ、変化のない日常はつまらないと言うけれど……。でもここのところ平凡どころか激動の日々ですよ。


「――で、あの人誰?」

「アポスタタエ。人類背信プログラム」

「「「――!」」」


 仮想災厄ヴァーチャル・カラミティ。最後の一人。


「インフィ――――――!」

「あー自分大声は嫌いだよアポスタタエ」


 アポスタタエは上空からこっちを見下ろし、短い髪をかきあげながらインフィに向けて声を発する。他の人間なんて無視である。


「もう良いからこっちに戻って来いよ!」

「え~?」

「ごねんな! 定番なセリフは嫌いだけど言っちゃうよ! 今なら赦してやっからさ!」


 ふむ、ホントに定番セリフ。


「そもそも父さまも母さまも怒ってないでしょ?」

「わ・た・し・が! 怒ってんの!」


 腰に両手をあてるアポスタタエとやら。


「ぶ~、自分たちの間なら自分もアポスタタエに怒ってます」

「はぁ⁉ なんでだよ⁉」

「お菓子を盗ったからです」

「「「ちっさ!」」」


 思わずオレたちとアポスタタエの声が重なった。

 インフィはと言えば「え? どこが?」と不思議そうに首を傾げている。きっとのんびりやの彼にとっては重大なのだろう。


「戻ってくる気はないんだね⁉」

「ないよ。あ、宵たちに味方するわけでもないから」


 それについては後でゆっくり話し合おうと思う。オレの勘が正しければインフィは何らかの目的を持ってこちらにいるだろうから。


「あ~わかったよ! んじゃお前ら! バトるよ!」


 こちらの返事を待たずにアポスタタエは長大な銃を構えた。バズーカよりもまだ大きい。それでいて豪奢な作りでとても重そうだけどアポスタタエは平然とそれを担いでいる。


「ギャラクティカキャノン!」


 恥ずかしい!


「――!」


 ダサくてやばい名前とは裏腹に銃口から飛び出たレーザーは巨大で現代兵器を上回る火力だ。


「避けろぉ!」


 叫ぶアトミック。同時にドレッドノートでレーザー砲の射線を塞ぐ。ドレッドノートに当たったビームは拡散し周囲に光の滝となって降り注ぐ。ビルを穿ち、車道を抉り、人々を打ち抜き、樹木を炭にしていく。

 その威力にドレッドノートは耐え切れずに――艦体を貫かれて爆散した。


「アトミック! ドレッドノートの顕現を解いて!」

「くっそ!」


 もう遅いかも知れない。パペットはあまりに酷い状態までやられると死ぬ。卵からやり直す、またはセーブしたところから複製を作ったりはできるけれどそれはあくまで同じ記憶を持った別個体で……。


「あははははヨッワ! これがわたしのパペット恒星レーザー『ファシネイティング』! わたしらと人間の持てるパペットの違いだよ!」


 恒星レーザー?


「因みに! さっさとここから離れないと人間は大変だよ!」

「大変……まさか――」

「核レーザーさ!」

「「「――⁉」」」


【COSMOS】!

 オレは急ぎ【COSMOS】を起動させ放射能を取り除き、


「――!」


そんなオレにアポスタタエが迫る。

 まて、まだ作業中だ。


「邪魔だよ!」


 二人の間を涙月(ルツキ)たちが塞ぐ。ファシネイティングを至近距離で構えるアポスタタエ。

 彼女は【COSMOS】を狙っている? 壊す為? それとも奪う為?


「ギャラクティカ――」

「――! 皆離れて!」

「キャノン!」


 撃ち放たれる音が二つ。一つはアポスタタエのファシネイティング。一つはオレが【COSMOS】から取り出したもう一つの核レーザー。

 同威力の青い光がぶつかり合って、その触手を撒き散らす。

 しまった、ブラックホールで吸収すべきだったか? いやそもそも吸収できるかわからないし――ええいもう後悔しても遅い!


「それ! なんで【COSMOS】って言うか知ってる⁉」

「知らない!」

「そいつの中に広がるサイバー空間がもう一つの宇宙だからさ! 人間が創り出した宇宙! まずいよそれは神さまの所有物さ!」


 人が持つにはすぎると。けれどそれならこちらにも言い分はある。


「神さまは人間の想像したものだし! オレは神さま(ソウゾウ)を超えるのを怖がらない!」

「わたしもだよ神さま! わたしは人間を越えるのを怖がらない!

 だから! 貰っちゃうよ【COSMOS】! ――ん⁉」


 二人がレーザーをぶつけ合っている隙に後ろに回り込んだ(オミ)とゼイルがアポスタタエに攻撃する。二人揃って勢い良く蹴打をアポスタタエの首に向けて放ち、ヒットする。


「――っ! 二人共! エレクトロンと綺羅星(キラボシ)を裏切るでOK⁉」

「良くないけどね!」

「『ダートマス』は壊す!」


 良く言った。それでこそ元気印の子供だ。


「「うわ!」」


 アポスタタエに足首を掴まれて振り回される二人。会場の外壁に向けて飛ばされて二人共背中を打ち付ける。


「臣! ゼイル!」

「だ……」

「大丈夫……さ」


 しかしずるずると外壁を伝って落ちて、地面に横たわる。


「涙月! ララ! ゾーイ! 三人はユメたちのところに! ここはオレたちがやる!」

「――っ、了解!」


 三人は臣たちの元へと駆け寄りだそうとしていた動きを止めて会場外壁を飛び越える。アポスタタエはそれを無視。


「アトミック! 臣とゼイルの様子を!」

「ああ!」

「ふ、良いじゃないか! 羽虫がいるより相手しやすいってもんだ!」


 だからアトミックが二人に駆け寄るのも無視をする。


「『ウォーリアネーム! 【小さな蛇は夢を見る】!』」

「『ウォーリアネーム! 【燦々巡り恵まれ光の使者!】』」

お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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