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AI ray(エイレイ)~小さな蛇は夢を見る~  作者: 紙木 一覇
前章 ~小さな蛇は夢を見る~
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第158話「え? イジメかこわるい」

おいでませ。

 ざわめく一同。

 標識――つまり【紬―つむぎ―】とアマリリスに繋がっているパイプを切ってしまおうと。

 待て待て、標識を無理に切ったらアマリリスは死ぬと言う話だったはずだ。だからオレたちは安全に標識を外す方法を模索しているのだ。そしてその方法は見つかっていない。


「なんで? 場合によってはオレたちここで君と戦う流れになると思うんだけど」

「え? イジメかこわるい」

「「「イジメじゃありません」」」


 相変わらずのマイペース。ペースを握れるのは強者である、と認識してはいるけれどこの場合なんか違う。ダメっ子の世話を焼いている気分だ。


「アマリリスのね、標識があるから【紬―つむぎ―】所有者は狙われるんだよ。自分も含めて。なら切っちゃった方が良くない?」


 良くない? と聞かれると……。その通りではあるのだ。だけどそれは――


「アマリリスの成長はどうするのさ?」

「アマリリスは【紬―つむぎ―】が――【紬―つむぎ―】所有者がいなくても成長するよ。

 そもそもアマリリスに影響を与えすぎなんだよ【紬―つむぎ―】所有者は。

 あの子は自分たちの所有物じゃないよね。であるならもっと広く深く情報を蓄積するべきだと思うよ」

「……成程」


 一理はある。でも前例はどう否定する?


「昔AIをとあるサイトに放ったらどうなったかは知ってる?」

「ああ、悪い人を称えだしたとか言う?」

「とか言う」


 それを聞いて(オミ)とゼイルがネット検索を始めた。若いから聞いた事がなかったのだろう。オレだって小学生の頃当時を生きていた祖父から聞いて初めて知ったのだ。


「その事例を繰り返さない為に【紬―つむぎ―】所有者が有効に働いているのは認めるよ。けどね、自分は仮想災厄ヴァーチャル・カラミティだよ? なんで自分が【紬―つむぎ―】を持っててアマリリスに標識つけたと思う?」

「それは――わからない……」


 疑問に思っていたのだが、未だに答えは出ていない。


「よー君みたいになんかの大会に出たとか?」

「うんにゃ。実はねプレゼントされたの」

「プレゼント? 誰に?」

「パラン」


 パラン――アマリリスのパペット。現実・仮想双方に干渉できる親プログラム。


「なんで?」

「勿論、人だけの情報じゃ足らなかったからだよ。人の――アマリリスの敵のデータも取り込んでその上でアマリリスの行く末を決めようとしたからだね。

 つまり」

「アマリリスが人の敵になる可能性がある?」

「その通りだよ(ヨイ)。んでも自分じゃダメだなぁと思って。ほら、自分ってこんな性格でしょ?」


 自分を指さすインフィデレス。

 まあ、なんだ、言われるまでもなく『人の敵』と言う印象は受けないけれど。


「でもパランが自分の性格も含めてプレゼントしてくれたのだとしたら残ってる仮想災厄ヴァーチャル・カラミティに渡すのは違うかなって。

 だから返すよ。もう充分自分からは情報を取っただろうし、勿論他の【紬―つむぎ―】所有者からもね、だからそろそろ標識を外そうかと」


 ふむ。オレは顎に指を一つ当てて考える。皆も思い思いの形で考え出している。

 標識を安全に外す事は必要だ、と思う。ではその時期は今だろうか? そして子供だけで決めて良いのだろうか?

 ……困り果てる。

 ん? そう言えば。


「アマリリスに聞けば良いんじゃ?」

「「「あ」」」


 失念。肝心のアマリリス抜きで話を進めても仕方ないじゃないか。


「えっと、オレはこの後バトルだから急いで行けないんだけど……一度分かれる?」

「え? 私よー君の応援とアマリリス両方行きたいんだけど」

「そうそう。宵兄寂しがるでしょ?」


 当たり前でしょ? とばかりに。オレはそんなに寂しがり屋に見えるのだろうか。


「寂しがりません」

「……ワタシは貴方を知りたい」


 鋭い目をインフィデレスに向ける、ララ。


「え? 脱げと?」

「そう言う意味じゃない!」


 当然性格を、例えば安全かどうかを見極めたいと言う話だろう。インフィデレスがわかっているかどうかはともかく。


「暫く貴方と行動を共にするって言う意味よ」

「トイレも?」

「そこまで行くか!」


 ペース。ペースを握られていますよララさま。

 オレは視界の隅に表示されている時計を見る。バトル開始まで一時間半。アマリリスの所に行って戻ってくるには少し足りないかな。朝食もまだ摂っていないし。


「それじゃ、オレは朝食を摂りに行きたいんだけど」

「同行しまーす私も摂ってないから」


 まず涙月(ルツキ)がついて来て、


「あたしも行くー。食後のお菓子摂ってないから」


次に臣が、


「ボクは宵兄さんのおごりなら行く」


更にゼイルが、


「わ、ワタシも行こうかな」


遠慮しがちにララが、


「ララが行くなら私もだ」


堂々とゾーイがついて来る。


「皆が行くならオレも」

「「「最後の誰?」」」

「オレだよ! アトミック!」


 そう言えばちゃっかりいるなこの男。

 そしてゼイル、お金持ちの坊やになぜオレがおごる必要が?






「なぜだ……?」

「何が?」

「なぜオレが全員分をおごったの涙月?」


 年長でもないしお金持ちでもないのに。


「もうすぐ優勝賞金が手に入るから?」

「そうだよゼイルだって優勝賞金もらったでしょ」


 決して低い額ではない。一億だ。


「ボクの財布は親管理だから」


 ……うんまあ……子供だしね。


「アトミック!」

「なんで負かされた相手に払うのさ」


 それって払わなくて良い理由にならないと思う。


「お姫さま二人は⁉」

「「え? 付き人が払うのは当然でしょ?」」

「オレは付き人だったのか……」


 予想外の立ち位置。いや付き人が悪いわけではないようん。


「はぁ……それじゃ、会場に行こうか……」

「身軽になったしね」

「涙月、そんな励ましはいらない」

お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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