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AI ray(エイレイ)~小さな蛇は夢を見る~  作者: 紙木 一覇
前章 ~小さな蛇は夢を見る~
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第122話「アマリリス!」

おいでませ。

 それから一時間後、朝食を食べ終えてホテルを出てすぐ。


「じゃ、皆会場に向かうでOK?」

「「「OK」」」


 男の子だから、と言う理由だけでリーダーを任されてしまったオレの確認に皆揃って声を出した。オレは頷いてタクシー乗り場を見て、


「タクシーを――使う距離じゃないからいっか」


と皆に聞こえる声量で言った。反対の声はなし。

 会場は近い。がそれは(オミ)の出場する第三会場までの話だ。世界五十か国を超える国の代表者が競う本戦第三戦はニューヨークと周辺の会場計五つにて行われる。

 まずは小学生の部。三日かけて大会は進んでいく。

 スイスとイギリスの小学生代表は違う会場だが「臣って子のバトル観てからでも間に合うから」とそれまではこちらについて来るとの事。

 歩きながら「臣が勝ち進んだら?」と聞いてみたら「その時は一旦離脱させてもらうから」とララから返事が。特に文句はないのでオレは頷いた。


「お~人が溢れてます~」


 会場についてみるともうお祭り騒ぎだった。色とりどりの髪の毛、肌、目の色。集まっているのは選手やその家族・知人だけではない。ジュースやビール・お菓子を売る人も人の波を作るのに一役買っている。と思っていたらお姫さま二人が早速ポップコーンを買ってきた。朝食べたばかりですよね?


「この! お面!」


 一方コリスは日本のショップからヒーロー戦隊のお面を買ってきて、


「おお……これ面白いよよー君」


涙月(ルツキ)は最近アメリカで先行販売された宙に散布されているナノマシンを捉えその上を歩ける浮遊シューズを買っていた。

 せっかくご両親に新たな軍資金を貰ったと言うのにいきなり二万使うとは……。

 オレは呆れつつ一人まっすぐ入口に向かい――向か――向――あれは……レアな懐中時計じゃありませんか。オレは吸い寄せられるように路上ショップに近づいて、値段を見て諦めた。五十万て……。


「よー君はホントかっこ良いものに目がないねぇ。ロックとか」

「買ってあげましょうか?」

「う――え?」


 ララのするっと入ってきた言葉に思わず頷きかけた。


「いやダメでしょ普通に考えて」

「え? 五十万くらいお小遣いでしょ?」

「…………」


 お姫さまの金銭感覚って……。


『会場にお越しの皆さま! こちら実況のハーベルです!

 バトルスタートまで十五分です! ウォーリアの皆さまは控室へ! ギャラリーの皆さまは席にお着きくださいますようお願いします!

 尚! 会場へのアクセスについて注意事項が! 駐車場はショップで埋まっております! アクセスは徒歩・バス・タクシー等でお願いしております!

 繰り返します――』

「あ、早く行こう」


 オレが皆を先導しようとするとララが次のように言うのだ。


「あ、ポップコーンが空になっちゃった」


 まだ始まってもいないのに⁉






『さあさあさあさあ! 皆さまようこそバトルは間もなくスタートです!』


 直径二キロメートル、つまり半径一キロメートルの大バトルフィールドに実況のお姉さんの声が元気に響く。


『小学生の部第三会場第一回戦のお二人は出揃っていますね!

 マレーシア代表ハフィス選手v.s.オランダ代表フィロメナ選手!

 ではではバトルフィールドを選定します! ルーレットスタート!』


 フィールド上空に現れ回り始めるルーレット。針がくるくると回って――止まる。


『決定! 都市トロイ!』


 ナノマシン【逢―あい―】が収斂し伝説の都市を形作る。白く四角い建造物と高い壁が立ち並ぶ。


『では両選手フィールドへ!』


 オレたちは前から六段目の席に並んで腰掛け、緊張から喉を鳴らした。

 いよいよ世界戦が始まる。


『バトルスタートまで――

 10

 9

 8



 3

 2

 1

 0! バトルスタ――――――トォ⁉ スト――プ! ストップです!』 

「「「は?」」」


 実況の合図を待って身構えていた両ウォーリアは勿論オレたち観客も間が抜けた声を出してしまった。

 急ブレーキをかけるとは何事?


『あの……あれはどうしましょう?』


 実況のお姉さんは会場を見ていなかった。視線の先にあるのはここアメリカの象徴とも言える自由の女神像で、本を持つその左腕に――赤ん坊がいた。


 アマリリスのパペット『パラン』――


 オレの中にある液体状コンピュータ【覇―はたがしら―】が警報を鳴らす。【覇―はたがしら―】に溶け込んでいる【紬―つむぎ―】がアマリリスとの『対話』を望んでいる。


「よー君、【紬―つむぎ―】が……」

「うん……」


 糸を辿れと言っている。目に見えない糸を手繰りオレたちは視線を伸ばしていき、丸まる『パラン』の腕の中に――白銀の髪の少女を見つけた。


「アマリリス!」

「行こう! よー君!」

『皆さま少々お待ちください! エレクトロンより緊急連絡です!』


 立ち上がったオレたちは実況から放たれた言葉に足を止めた。


『自由の女神像に巣食うあのパペットを「殺した」ウォーリアにエレクトロンから懸賞200万コインを支払う! ただしあれの抱く少女は「捕獲」し譲る事! 繰り返します――』


 懸賞金⁉


「涙月急ごう! アマリリスとパランを助けなきゃ!」

仮想災厄ヴァーチャル・カラミティが来てるよ。【紬―つむぎ―】が反応してる」

「うん」


 こちらにも警告が響いている。


「「行こう!」」

「あー待ってくださいわたしも行きます~」

「なになにあれ(ヨイ)たちの知り合いのパペットなわけ?」


 オレたちの後についてくるコリス、ララ、ゾーイ。


「知り合い――知り合いだけど……それ以上にあの子をエレクトロンに渡せばどうなるか」

「あの赤い服の子も知っているのだな? 何者だ?」

「走りながら説明する!」


 しかし高速飛行可能なパペットが既に自由の女神像を取り囲んでいた。


「一斉に攻撃する!」


 そんな声が聞こえてくる。

 だけど、パランの両手の間に光が生まれて、上に放たれる。それは遥か上空で弾けて火の粉となって降り注ぎ、パペットのほとんどを貫いた。


(コア)を外すたァあめぇなパラン!」

「――!」


 倒れ落ちていくパペットの一つを踏みつけそいつが姿を見せた。

 人類侵入プログラム――アエリアエ・ポテスタテス!


「そら! さっさと同化したらどうだ⁉ 金に目がくらんだ拝金主義ども!」


 この挑発にマスターユーザーたちは怒号を上げ、口々にウォーリアネームを言い放つ。


「ムダだけどなぁ!」


 アエリアエが左腕を空に掲げた。その先に巨大なUFOが顕現し――


「やるぞ『エイリアンクラフト』!

『ウォーリアネーム! 【全愚者共に脳壊を】!』」

お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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