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AI ray(エイレイ)~小さな蛇は夢を見る~  作者: 紙木 一覇
前章 ~小さな蛇は夢を見る~
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第10話『オレはオレを諦めない』

いらっしゃいませ。

「あ、そう言えば幽化(ユウカ)さん、どうしてこないだ西京にいたんですか?」

「お前の学校と打ち合わせがあった」

「ああ、成程」


 オレと幽化さんの番になり、二人はウォーリアフィールド草原ステージにあがった。

 二人共にパペットを顕現し、オレはアイテムも使用する。


「先にお前の全力を見ておく。好きな攻撃を好きなだけやれ」

「……そこまで言われると」


 流石にムカついてきた。

 オレはアエルに『お菓子』を食べさせる。

 するとアエルの周りを数字や記号が舞い、吸収され、巨躯を現した。

 ドヨドヨと成り行きを見ていた生徒たちがざわめき始める。


「なにあれ?」

「でっか」

「よーちゃんが……よーちゃんがおっきくなっちゃった」


 あ、そう言えば皆に見せるのは初めてだ。

 でもそれに気分良くなっている場合ではない。相手は世界ナンバー1。まだ今年の世界大会は行われていないがきっと上位に食い込むだろう幽化さん。

 全力で行かなきゃ。

 全力――全力……て、火を出すか噛み砕くくらいしかできないんだけど……。


「アエル! 噛み砕け!」


 巨頭八つが同時に動き幽化さんのパペットを噛み砕――こうとしたところで頭が頭に当たり、魔獣まで届かなかった。


「首ごとの名前がないのか。ハプニングは全て予想しておけ」

「は、はい!」

「それなら私が考えたぜい!」

「え?」


 声に振り向いてみると高良(タカラ)が大きなデジタルスクリーンを全員に公開した状態で放り込んできた。


「えっと……」


 桜色の一つ目オロチが『覇王』

 無目オロチが『闇王』

 牙を持つオロチが『血王(チオウ)

 二つの口オロチが『泉王(イズミオウ)

 髭オロチが『冥王』

 光の粒子を放つオロチが『電王』

 角持つオロチが『獣王』

 透け通る葉に似たヒレを持つオロチが『樹王(ジュオウ)


「か、かっこつけ過ぎじゃない?」

「若い頃はかっこつけてるくらいが丁度良いのさ!」


 多分アエルとは飽きるまで一緒だと思うんですけど……。


「それにしても、八つだから惑星で来ると思った」

「アエルが『メシエ』や『トレミー』って名前だったらそうしたかもね」

「おい」

「――え」


 再び声に振り向いてみると――魔獣の角がオレの首に突き立てられていた。


「会話するなとは言わんがそれでも敵に気を配っておけ」

「――はい!」


 一応、指導にはなっているのかな。


「で? 有効な攻撃ができるのか?」

「……えっと」


 痛い。そこは痛い。


「ジョーカーはどうした?」

「……まだ発現していません」

「そうか。それは良い」

「え?」

「強力な奴ほど発見し辛く発現は遅い。オレのパペット――『レヴナント』の“コラプサー”もそうだった」


 ……暗にオレ(幽化さん)のは強力だって言ってるんだろうか?


「発見は努力ですが発現するには何か条件があるんですか?」

「火事場のバカ力だ」

「……それって……」

「そうだな、オレが追い詰めてやる」


 やっぱり。


「行け、レヴナント」


 ひと叫びする魔獣。


「覇王!」

『オウ!』


 覇王が口を大きく開け、レヴナントを砕くべく牙を見せる。

 その牙は土ごとレヴナントを喰い破る――はずだった。


「噛み砕けない⁉」

「コラプサー」

「――!」


 レヴナントの角が輝き覇王の形が歪んだ。

 吸収!


「覇王下がれ!」


 覇王は即座に距離をとり、首を力なく下げる。

 鎧のような鱗がひび割れていて、今にも砕けそうになってしまった。


「……今本気で口を開けたか?」

「え?」

「オレの目にはまだ開きそうに映ったが」


 覇王を睨み上げながら、幽化さん。


「……覇王?」

『何かに邪魔をされた感覚はある』


 何か――


「無理やり開けてやろう」


 オレが悩んでいると、レヴナントが容赦なく向かってきた。


「レヴナント、Lv99からLv101へ」

『了解』


 Lv――101⁉

 レヴナントの体が光の粒になって弾け、再び集まりだした。

 巨大な足が大地を凹ませ、岩を砕き、胴体が天井のようにそびえ立つ。


「レヴナント『狼王』――砕け」


オオオオオオオオ――――――――――――――――――――――――――ッ!


 狼王の叫び。それだけで空気が震えた。


「獣王!」

『はっ!』


 威勢良く敵に向かう獣王。

 狼王は怯えず獣王を迎え撃ち、その頭部に噛み付いた。

 途端に響く、金属音。


「獣王⁉」


 まさか砕かれた⁉ 頭部を⁉


「いや、砕いたのは鎖だ」

「え?」


 獣王の頭から何かがジャラジャラと落ちてきた。透明だったそれは徐々に色をつけていき、黄金の鎖になる。


「鎖――」

『オオオ!』

「獣王!」


 獣王の口に橙色の何かが集まっていく。

 まるで橙色の恒星のようになったそれを獣王は狼王に向けて撃った。

 エネルギーの塊は狼王の周りを素早く回ると、多面体のガラスで動きを封じる。


「レヴナント」


 幽化さんがその名を呼ぶ。

 けれども狼王は応えず、動きを止めていた。


「空間凍結――いや、時間か?」

『覇王!』


 獣王は家族である覇王を呼ぶと、頭に噛み付いた。

 獣王と覇王は別の二つの首に噛み付き、鎖をちぎり、また同じように噛み砕いていく。

 泉王が蒼いエネルギーを集め、空に撃った。

 すると雲の隙間から『天使の階段』が狼王に降り注ぎ、狼王の体を小さく――時間を巻き戻して元の体へと戻していく。


「そうか、時間を操るジョーカーか。だが――」

「――!」


 レヴナントを囲っていたガラスが砕けた。


「長時間の発動はできないようだな」

「闇王!」


 闇王の口に黒いエネルギーが集まり、撃った。


「レヴナント」


 レヴナントの角が光る。

 その角に黒いエネルギーが吸収され、消えてしまう。


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』


 レヴナントが啼き形状が変わっていく。

 一本角だった頭に刃のような角が新たに二本生え、体も大きくなった。


『小生が行こうか?』

「……いや、良い。

 負けです、幽化さん」


 恐らく、今のアエルでは全て吸収されて終わりだったはずだ。


「敗北に気づけるなら良い。見ろ」


 と言って彼はオレの後ろに光っているステータスを指さした。オレはそちらを向いて、全身が安堵でふらついた。


「Lv――100」

「ついでに一つ言っておいてやる。

 これはオレがオレ自身に言い聞かせている言葉だ。

『オレはオレを諦めない』

 忘れるな。お前が諦めさえしなければお前が折れる未来はない」

「オレを……諦めない!」

「そこのお前」

「おっおお⁉」


 急に指名されて思わず挙動不審になる高良。


「あとはお前が相手をしてやれ。オレは寝る」

「「……寝る」」

「返事はどうした」

「りょ、了解であります!」


 頭に手を当てて了解のポーズ。

 幽化さんが舞台から降り、代わりに高良が上がる。


『す、すみません皆さま、順番と言うものがありまして~』


 スタッフの一人がマイクを持って小さく自重するように促してみるが。


「…………」

『ひぃ! あの! 決まりなので!』


 幽化さんに睨まれ、スタッフは怯えながらも言葉を出す。


「ふん。ならこうしよう」

『へ?』


 オオ、幽化さんが折れた。柔軟なところもあるんだなぁ。


「バトルロイヤルだ。全員上がれ」


 はい⁉


「ちょ、幽化さん」

「今喋った天嬢(テンジョウ) (ヨイ)を破ったら一万コインくれてやる」

「ええ⁉」


 一万コイン――それは中学生にとっては大金だ。

 だから――


「俺が行くぜ!」

「いいや俺だ!」

「俺が倒してやる!」

「私も行こーと」

「倒したらよーちゃん貰って良い?」


 えええええ?

お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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