5.爆弾発言
「そうだ、ラルフとフローラ嬢には今まで頑張ってもらっていたから、慰労を兼ねて二人で旅行に行っておいで。」
「・・・は?」
「・・・はい?」
「あら、いい考えね。最近休みも取れてなかったみたいだし、行ってきたらどう?」
困惑している。
非常に困惑している。
わけのわからない提案をされた二人は、異国の言葉を聞いたかのように眉間に皺を寄せて聞き返した。
かくいうクレメンティアもそうだった。
(え、何、これは。このご主人方は従者を犯罪者にしたいの?婚約者がいるのかどうかはわかんないけどさ、二人きりで旅行なんて行ったら世の奥様方に『はしたないわ!』なんてこと言われて、社交界から爪弾きにされちゃうわよ!)
そう感じたのは二人も一緒のようで、何とかして回避しようとあの手この手で奮闘していた。
「いやー、たまにはこう・・・田舎でスローライフをしてみたいなーなんて!!フローラ嬢は王都のほうが好きですもんねぇ!?」
「私だって田舎でのんびりしたいわよ!!ラルフ様の方こそ王都で華々しく散財されたほうがよろしいのではないのですか!?」
「いやいや、婚約者もいないようなそれがしには、王都は眩しすぎるでござる!!フローラ殿のような若いおなごこそ、王都で輝くような休日を過ごされるのが良いかと!!」
「妾は田舎でスローライフがしたいのじゃー!!そなたこそ、王都におったら良いおなごを見つけて婚約者にすることができるじゃろーが!!」
(なんかキャラ変してませんかね・・・?)
だんだんおかしくなっていく口調にクレメンティアが呆れ始めた頃、またもレドモンドが爆弾を投下した。
「そうだララ、フローラ嬢にはずっと一緒にいててほしいよね?」
「?どういう意味です?」
「例えばだけど、もしフローラ嬢が隣国の貴族に見初められたら、どうなると思う?」
「っ!?レドモンド様!?そのようなことは決してございません!!」
いきなり始まったレドモンドのもしもの話に、強く否定をするフローラをスルーして考え込むララベット。
そして、ララベットは閃いた!
「隣国に行ってしまって、もう二度と会えない!?」
「ララベット様!?そんなこ―――」
「そうだ。フローラ嬢はララ付きの侍女を辞めて、隣国へと嫁いでしまうだろうね。」
「なんてこと!!それでは早くこの国に繋ぎ止めておかなければ!!」
・・・婚約者の扱いが上手でございますねぇ〜、レドモンド様?
可能性がほぼ皆無の例え話を信じ込ませて、間接的にララベットの元に留まらせる。
すなわち、彼が考えているのは・・・
「ねぇ、ララ?我々貴族がご令嬢を手っ取り早く国に留める方法、思いつくかな?」
「・・・!婚姻!!」
「そうだね。つまり、私が言いたいことが分かる?」
子供に言い聞かせるように言っているので、馬鹿にしているように感じるが、表情が恐ろしく穏やかなのでたぶんあれだ。
今まで我慢してきた分の箍が外れて、超溺愛モードに突入してるんだろう。
うん。
きっとそうだ。
まあ、溺愛カップルは置いといて、今はラルフとフローラだ。
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