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7.encounter.白いの。

スライム、お喋りです。





《コレハ ナニ? アレハ?》


しつこくしゃべる白いスライムに辟易しながら、いったん休憩しようとケイは腰を下ろした。

ケイはカバンから取り出したパンをちぎってスライムの前に置く。

もう残りのパンも半分を切った。そろそろ何か対策を考えないと、と思いつつ、毎回スライムにもわけてしまう。


「食うか?」

《タベル!! パン、スキ!!》

スライムは、嬉しそうに返事をしてその白い体をぽよん、と揺らしてパンの上に飛び乗った。

半透明の体に透けて見えるパンがしゅわっと消えていくのをぼんやり見つつ、これから先のことを考える。


今は、『木がたくさんあるところなら知ってる』と言うスライムの先導で、そこまで案内してもらってるところだ。

目的地が明確になったのは素直に嬉しい。

話し相手ができたのも案内人がいるのも嬉しいが、これはなんだ、あれはなんだと、こうも質問責めにされるとうんざりしてくる。何にでも興味を持つ子供のようだ。きっと俺は親にはなれないな・・・としみじみ思う。


「なぁ、そんなに話してて疲れないか?」

そう問いかけると、スライムはキョトンとしてからパンからこちらに視線を移す。


《ハナス、タノシイ!! ココハ、クサタベル、ナニモナイ。》

しゅんとしたように下を向くスライム。ルビーの瞳が陰って見えて、少しかわいそうに思う。

俺だって、この草原を何日も何ヶ月も一人で歩いている。それだけでもしんどいのに。

スライムの年齢はわからないが、生まれた時からこんな何もないところにいるんだとしたら・・・。

俺だったらどうしたんだろう。


「まあ、茶でも飲めよ・・・」

水筒の蓋に麦茶を入れて目の前に差し出してやる。

パンを初めてみて、美味しいと食べ、人間を初めて見たと喜び、

「知らないを知ることが楽しい」と念話で伝えてくれるスライムに少し同情してしまった。

念話は、声に出すよりも感情をダイレクトに伝えてくるから、スライムの喜びや悲しみにかなり心を揺すられてしまう。


《コレナニ!? オイシイ!!》

ぴょんぴょんと飛び跳ねる白いスライム。

自慢の麦茶を褒められて、少し得意げに返す。


「そうか、オリジナルのブレンド茶だよ」

《ブレンドチャ、スキ!》


大量の茶で胃袋をごまかして、ズボンについた草を払いながらケイは立ち上がる。

そろそろ歩こうか。

パンとお茶を飲み終わった白いスライムを促して、一人と1匹はまた歩き出す。





スライムは前を歩いたり、肩に乗ったり、カバンの上にいたりと忙しない。

スライムのMPが切れると少し静かになるけど、半日も経たずに忙しなく喋り始めるからタチが悪い。


歩き続けて、もう話す話題もなくなると、今度は鼻歌を真似される。

頭に流れ込んでくる下手な『どんぐりコロコロ』を聴きながら、ふと思った。

真似や怒涛のお喋りにうんざりしたわけじゃない。

ずっと思っていたことだ。

ただ切り出し方がわからなくて唐突になってしまったけど、思い切って声をかけた。


「なあ、何でお前、レベルが1なんだ? やっぱ仲間を倒すのが嫌なのか?」

歩きながら、ずっと気になっていたことだ。

あくまで何でもないように聞いてみた。


スライムは動きを止めて、キョトンとこちらをみる。

《タタカウッテ、ナニ? レベルッテナニ?》

と、いつも通りの反応だ。


仲間は攻撃されないのか・・・?

大したことではないのかなと思いながら、じゃあなんで他のスライムはレベルが上がってるんだ?

しばらくこの草原を歩いていて、ケイはスライム以外をまだ見ていない。


「相手を攻撃することだよ。そのくらいはわかるだろ? 

・・・じゃあ戦ってないあいつらは何でレベル上がってるんだ?」

ポツリとこぼすとスライムは答えた。


《「年をとって死んじゃうと、若い子たちが体を食べて空に送る」ッテ、キイタ》


昔、漫画で読んだ鳥葬を思い出す。

死んだ遺体を野原に置き、鳥や虫にそれを喰わせるという葬儀方法があるらしい。

自然に還すと言う意味では正しいのだろうが、日本でそれをやると死体遺棄になる。


「へえ。お前はそう言うことしないの?」

《ボクハ、「同じ色じゃない」ッテイワレタ・・・》


「スライムにも色ごとに仲間意識があるんだな」


《ケイハ、スライムジャナイノニ、ナンデ、ココニイルノ?》


ジッとルビーの瞳に見つめられて、ケイは言葉に詰まった。


「お、れは・・・。 神様に置いていかれたんだ。」

ぽつりぽつりと、白いスライムに今までのことを話した。


異世界から来たこと。

草原に置き去りにされたこと。

ずっと街を目指して歩いてること。

ついでに、カバンを盗まれたり

初めの頃は魔法が使えなくて喉が渇きすぎて死にかけたことも話した。


《ケイ・・・ヨク、ガンバッタネ・・・》

白いスライムにそう言われて、視界が歪んだ。

男の意地だ。絶対に泣かないと決めてグッと目力を強くしたけど鼻声は誤魔化せなかった。

「ありがとう・・・」


《ハヤク、マチ、イケルトイイネ》

ニコリとルビーの目を細めるスライムの頭を撫でた。

ぽよぽよ、ぷよぷよと手に吸い付くような撫で心地に、少しくせになりそうだ、と思った。







スライムは「念話」で言葉を話すことができるけど、それもMPの尽きるまでだ。

MPが回復するとしゃべりまくり、切れると眠るを繰り返した。

ここまで1人で歩いてきたから耐性はついたと思ってたけど、自分以外の誰かがいるということはひどく、安心した。


そこから3.4日くらい歩いたところで、ケイは地平線が濃い緑に染まっていることに気づいた。


その間、スライムに何度も襲われたりしたけど白いのは、参戦しなかった。


襲ってきたスライムと何か話した後は俺が戦うのを黙って見ていた。

いわく、俺は邪魔者なんだという。

確かにスライムからしたら俺はいきなり現れた謎の攻撃者だ。

でもだからと言って襲われたままでいるのは俺だって腹も据えかねる。

白いスライムにはカバンの保護を願って戦いながら

「スライムってなんなんだろう」と考えるようになった。


白いスライムはきっと例外だろう。

じゃあこのブルースライムは?グリーンスライムは?


死んだら食べると言う葬儀方法も疑問が残る。

だってスライムは核を割れば跡形もなく消えるのだ。

スライムのいう「死」とはなんなんだろう。


疑問は尽きないが、とりあえず襲ってきた大軍を倒し終わり、

スライムからお疲れ様と言われ、カバンを受け取る。


《モウスグ、キノアルトコ、ツクヨ》

「そうだな、案内してくれてありがとう」


こいつとも、もうお別れなのだろうか。

世間話の中で、なぜ草を食ってたのか聞いたらスライムはこえ答えた。

《ナンニモナクテ、ツマラナカッタ。 ケイガキテクレテ、イッパイシッタ。

ココイガイニモイッパイアル、ミタイ。シリタイ。

デモ、ココイガイ、シラナイ。コワイ。》


それを聞いて、俺は思わず聞いた。

「じゃあ、俺と一緒に来るか?」


スライムは驚いたようにルビーの瞳をまんまるにしてから

嬉しそうに笑った。

《ケイト、イッショ、ナラ、コワクナイ!》


「俺も心強いよ」


そうこたえて、照れ臭くて、ケイは前髪を混ぜた。いつの間にか、仙人のような出で立ちになってる

髪もヒゲも伸びた。剃りたい。

街に着いたら何するかをスライムと話しながら、緑の森を目指して歩き続けた。

「風呂も入りたいし、髪もヒゲも切りたい。あとはフカフカのベッドだな」


《オフロ、タノシミ!オイシイゴハン、タクサンタベル!》


初めは鬱陶しかったスライムの話し声も、いつの間にか当たり前のように感じる。

森はもうすぐそこだ。

パンはなくなって、もう2日食べてない。お腹の調子も訳わかんない感じだけど森に入れば何かあるだろう。

気持ちが急くのを感じながらケイとスライムははひたすら歩いた。




投稿早かったり遅かったり予測つかなくてすみません。のんびりやらせてください。

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