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51.give.新しい仲間4*

「で、この態度のでかい獣族は何?」

アリアが高圧的にモノを言うので、ニードがびくりとはねた。怯えすぎだろ。気持ちはわかるけども。

アルは相手を知ってるのか、とてもご機嫌に抱きついている。

「あー・・・。 誰だろう?」

アリアは多分、4人がかりですら追い込まれていたのがそもそも屈辱だったんだろうとは予測がつくくらいにはケイも付き合いがある。

防御で精一杯だった相手を1人で瞬殺したこいつがまー、とにかく気に入らないのだろう。

だからって、そこまで態度に出すのはいかがなものかとは思うが、言っても聞かないだろう。

土を蹴り上げるアリアと一挙手一投足に怯えるニードに辟易しながら、ケイはケモ耳男とアルの側に行く。

とりあえず、何者なのか知るために《ステータス》を唱えた。



___________


フェンリル

Lv.82

HP 2000/3200

MP 362/830

種族:ウルフ

称号:ウルフの王、《天の加護》

状態:通常


*スキル*

攻撃魔法(風・火・水・光・闇)

念話

魔法封じ

獣人化


空を駆け、風を追うモノと伝承に残っている。


___________




「フェンリル・・・お前が?」

ステータスを見た後、ケイは目を見開いた。

これがラファエルの言ってた「狼」か?

ケイもそれなりにレベルは上がったが、数値が桁違いだ。

「おおかみのすがた、もどれないの?」

アルがその腕にしがみつきながら言う。

フェンリルが優しく笑って「待ってろ」というと、青白く光った。

とても眩しくて、3人は目を閉じる。

アルの嬉しそうな声が響いて、ケイは目を開けると

そこにはケイやアリアをゆうに超える、とてつもなく大きい獣がいた。

白かった毛並みは美しい濡羽色に、洞窟で爛々と光っていた金の眼は優しげな藍色に変わっていた。


「え、もしかして朝に言ってた狼!?」

「ウルフ、きれい!!」

はしゃいだアルと狼狽えるニードが対照的だ。

アルがその巨躯に飛びつくが、アルの小さな体は跳ね返されてしまった。

ニードが転がったアルに駆け寄ろうとしたが、その前に大きな獣はスルスルと体を小さくしてアルを背中に引き上げる。

背に乗せられたアルは赤い目を見開いたのち、また楽しそうに笑った。・・・かわいい。

そんなアルを見る藍色の瞳はとても優しくて、あの洞窟で通じ合った気持ちを思い出した。

姿は変わっても、心は変わってないのだろう。

神から躾やなんだと言われたのを思い出したが、面倒臭い気持ちを差し置いてケイはフェンリルに声をかけた。

「フェンリル、俺たちの仲間になる気はあるか?」

「もとより、姫の力になるためにここにきた。姫がお前のそばにいるのであれば、付き従おう。」

じっとこちらを見る獣を見返して、ケイが次の言葉を言う前に、頭に低い声が響いた。

そういえば、こいつも念話使えたんだったな。

「じゃあ、これからは仲間だ。」

ケイはその真っ黒で、いつでもケイなんか押し潰せてしまいそうな前脚に手のひらを乗せて、笑った。

背後では不機嫌そうなアリアの声と、右斜め前では驚きのまま固まったニード。

でもこれが筋書き通りなので仕方ないだろう。

大幅な戦力増強で、素晴らしい。








「うっぷ・・・」

「すごく速いけど・・・うっ・・・吐く・・・」

そう情けなく吐き気を抑えるのはニードとケイだ。

結構な道のりを、フェンリルはひと駆けでたどり着いた。

・・・が、あまりの速さに耐えきれなかったのだった。


街の近くまで乗せてもらったのはいいが、ここまできて吐き気のためにリタイヤした。

もう目の前だし、ここからなら歩いても10分やそこらだ。

アリアとはその場で解散になった。最後までフェンリルを睨んでいたのはもうご愛嬌だろう。

「ケイ、ニード、だいじょうぶ?」

アルだけは元々の魔物の性質なのか、ピンピンしている。

「うん、大丈夫。ありがとう」

視線を上げて、アルと目を合わせると、ニードが情けなく笑った。

今フェンリルは人に戻っている。その肩で笑うのはアルだ。

イケメンのケモ耳男子とは、本当にケイの周りは顔面偏差値が高すぎる。

「・・・そーいや、名前どーする?」

「そっか、魔物だから、このままじゃ入れないね」

街は結界が貼られていて、魔物は入れない。

入れるのは使役された魔物か、獣人だけだ。

一応今の姿のままでいれば神の加護もあるしなんとかなりそうな気もするが・・・

使役しとかないと言うことを聞かせるときに苦労しそうだ。

根本は魔物。アルと一緒なのだし。

「なんでも構わん」

そっけなくそういうフェンリルに、アルが途端に声を張り上げた。

「だめ!! ウルフ、なまえ、大事。じぶんだけのもの。」

アルがここまで怒るところを初めてみた。赤の瞳をきっと吊り上げて、とてもかわいい。

「・・・そうか。では姫が決めてくれ」

「アル? いいの? じゃあ・・・。 アメ!!」

少し悩んでから笑顔で言い切る。

最近やたら飴を欲しがるからそうかなとは思ったが、やっぱり虹色の飴が気に入っていたのだろう。

「お菓子じゃん」

「それはダメだよ、アルちゃん」

「ふむ。好きなのか?」

「うん!!」

「本望だな」

にこりと笑ったフェンリルは大層イケメンだったが、そんな奴を「飴」と呼ぶこっちの身にもなってほしい。

「俺たちがやだよ」

呆れたように、ケイが呟く。

「ケイはどんな、なまえがいいの?」

「んー。」

じっとケモ耳を見つめる。

こちらを睨む視線と目があって、今度は藍色の瞳をしっかりと見た。その眼差しはアル相手以外には少し怖い。

金だった頃と何も変わらない。

まだ数ヶ月も経ってないのに、懐かしいと感じるのはなぜだろう。

「サウザンドウルフ・・・だった頃はさ、白かったんだ。金眼で。」

「そうだったんだ。じゃあヴァイスは? 白って意味。」

「ゔぁいす?」

「言いづらそうだね・・・」

舌足らずなところもかわいいが、これではダメだろう、何より・・・

「何よりも姫に呼ばれたいのだ、姫がいいならなんでも構わんな。」

「じゃあ、セン。」

「せん? って?」

ニードが問う。

「俺の故郷では、サウザンは1000って意味だ。

 多分、そもそもの名前が1000匹のウルフを統率するぐらい凄いってことなんだと思うけど。」

「セン!! セン!!」

「気に入ったみたいだね」

「姫も呼びやすいか? ・・・いいだろう。」

頭部の耳を一度動かしたのち、フェンリルは笑った。

「スティグマはどうする? アルと一緒にするか?」

「そんなものまであるのか、一緒がいい」

「おそろい!!」

嬉しそうな姿を見ると、なんだか少し胸が騒ぐ。

「じゃあもうすぐそこだしパパッとやるぞ」

そう言ってケイは手慣れたように魔法陣を描き始めた。









「1人追加だね、流石に4人部屋はないから別の部屋になるが、いいか?」

「センといっしょがいい!!」

「・・・じゃあ2人部屋を二つで」

「あいよ」


追加の銀貨を払って、ケイたちはすぐ後ろの夕食の席に着く。

すぐに出された夕食に、ニードがチップを払ったので真似をした。

出された肉と野菜の炒め物を食べながら、周りを見る。

いつも隣にいたアルは、今日はセンの隣だ。嬉しそうに食器の使い方を教えている。

元が獣だからだろう、フォークやスプーンに慣れていない。見た目がこれなのでギャップがすごい。

「・・・俺は外でも構わんが?」

視線の意味に気がついたのだろう、不機嫌そうにセンが言う。

「そんなもん、慣れだろ。アルだって初めはそうだった。」

「・・・そうか」

途端、嬉しそうな顔をするもんだから、こっちが困る。

「ケイ、よけいなこといわないの!!」

「はいはい」

怒ったアルの口に魚の切り身を放り込んで黙らせると、ケイはため息をついた。

「ケイ。困ったときはアルちゃんの話で丸め込めそうだね」

小声で話かけてくるニード。

同じことを思ったが、どうせ獣の耳だ。聞こえているだろう。

適当に返事をして、スープを飲んだ。









神の家に行くと、アリアはきていなかった。

まだ拗ねてんのか?とも思ったが、ラファエルが言うには貴族としてのお勤めが忙しいらしい。

そんなラファエルも、なんだかバタバタしている。

久しぶりにコーヒー片手にゆっくりしながら、ケイは1人こたつに入って思考を巡らせた。

「戦力か・・・」

今回のことで、今のままではダメだと気がついた。

1度目は余裕があったが、今回はセンがいなかったらやばかった。

「ニードのこと、とやかく言ってる暇ねーな・・・」

センをうまく使えば足は早くなるだろうが、それだけだ。いずれはセンでも太刀打ちできなくなる敵が出てくるだろう。

そうなったらこのパーティは終わりだ。

そうなる前に強くなるか、新たな戦力を補充しなければ・・・。

「ケイ、考え事?」

そう問いかけられて、手元を見た。コーヒーはいつの間にか冷めていた。

大丈夫、まだできる。

まだ、弱音を吐く段階じゃない。

「ん、まあ。 戦力どうしようかなって。アリアも忙しそうだしさ」

「そうだねぇ」

「・・・もう暇なん?」

「暇じゃないけどぉ、ケイくんが悩んでるみたいだったから。」

目の前に座って、お茶を飲んでから答えるラファエル。相変わらず動作がゆっくりだ。

「戦力ならいるじゃない」

「ん?」

「エルフの里」

そう言ってウインクするラフェエル。うざい。

「ジェイドのことか? でもあいつは・・・」

里から出られない。そんなこと、わかってるはずだ。

ならなぜ言った?

「もしかして、ジェイドを里から出せる方法があるのか?」

目を見開いて、ケイは訊ねた。

「ないよ」

「ないのかよ・・・」

聞いて損した。

冷めたコーヒー飲んで、ケイはため息をつく。

「僕には何もできないけど、今のケイくんならなんとかできるんじゃない?」

「俺? 無理だろ。あいつにはドレインも使えねえ体質だってお前が・・・」

そこまで言って、気がついた。

「待てよ・・・」

特殊な魔力だから、ケイに魔力を与えることはできても、逆はできない。

それなら、魔力の波長を合わせることができたなら。

「いやいや、無理だろ、そんな繊細なこと、俺には。」

「ケイくんの作ったこのノート、面白いね。魔力を封じて使うなんて発想、なかなかないよ」

 ーーまるでアーティファクトファだね。

続けて言われたことばに、ケイは考え込んだ。

ニードが言った。アーティファクトは今の技術では作れない。ケイなら作れるかも。

アーティストなら、ジェイドの魔力もなんとかできるのでは?


「アーティファクト・・・ならさ、ジェイドの魔力を補充するのも、できるか?」

つい、前のめりになってラファエルを見つめてしまう。

そんな姿になってるのに気がついて、ケイはすぐに体勢を戻したけど、ラファエルは楽しそうに笑った。

「神の遺物に挑戦してみる?」

差し出されたのは四角い箱。身に覚えのありすぎるそれを手にとって裏返す。

つるりとした背に、齧られた痕のあるシンプルな果実の絵。

「スマホ?」

それはどこから見てもりんごの会社が作ったそれだ。

「電波がないからここでは使えないけど、参考にしていいよ」

「電波がないと使えないものをどう参考にしろと?」

呆れた声が出る。何かいい方法があると思ったのに。

「作ってみてよ、君ならできるよ」

にこりと笑われて、ケイはもう一度ため息をついた。

「木端プログラマーの血が騒ぐじゃん・・・」

これでも昔はアプリ制作に携わってきた。

「できなくても文句言うなよ」

そう言って、ケイは元の世界に戻るために立ち上がった。

パネルが裏返るとき、ラファエルは言った。

「君なら世界も救えるし、スマホだって作れるよ」



ーー大丈夫だよ


聞こえるはずのない声がした気がして、背中を押されるように、ケイは目を覚ます。

「奈緒・・・?」





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