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48.give.新しい仲間


「ニードって仲間とどんな感じだったんだろうな」

「いい関係ではなさそう、ってこと?」

ラファエルがテーブルに頬杖をついた。

「本人に聞けばいいんじゃないかしら?」

「聞けないからここで愚痴ってんだろ」

「なら考えたって仕方ないんじゃないかしら」

コーヒーを飲みながらケイが呟くと、アリアは面倒臭そうに髪をいじってそっけなく答えた。

アリアとラファエルはお茶を飲んでいる。ケイのだけはコーヒーだ。

いつもコーヒーを飲むのは俺だけなのでラファエルには手数をかけるがここに来るのもほとんどコーヒーを飲みにくる口実のようなものだし仕方ないだろう。

ってか、まだコーヒーメーカーをもらってない

「そういや、コーヒーメーカーはまだ? まだもらってないぞ。」

「あれ、そういえばそうだったね、後で渡すよ。

 ・・・でもそこまで気になるなら見てみる?」

「みるって?」

「ニードの元仲間が今何してるか」

「見れんの?」

「君たちが頑張ってくれたおかげだよ」

「見れるなら見てみたいな」

「呆れた。盗撮盗聴は犯罪よ」

「だって気になるんだよ、あいつ物分かりいい態度だけどあれで結構頑固だし、喧嘩別れみたいになってないかとか・・・」

「はいはい、流すよ〜」

ラファエルがテレビをつけた。

映し出されたのは夕闇亭の食堂より少し広めの酒場だ。

カメラが寄るように、酒を酌み交わす男たちの間を通り抜けて画面が移動した。





「でもジタン、本当に良かったのか? お前、ニードの作ったスクロールしか使わないだろ」


カウンターで飲みながら話してるのは3人の男たちだ。

銀髪の背の高い男に声をかけたのはクリーム色の髪の男。

背は高いがニードによく似た顔立ちをしている。

兄弟だろうか?

飲んでるものまで見ることが出来ないが、3人にしては結構な酒量だ。

その隣で酒を煽るのは青い髪の男。

「いいんだ、あいつが何かを自分で決めたことなんて、数えるほどだし、俺だって足枷にはなりたくない。」

「確かに、いくら弱いからって完全裏方は可哀想だったよな」

「スルガ、ニードは強いとは言い難いが、スクロール制作とか、武具の手入れは確かだから、裏方でも問題なかった」

「でもクエスト連れてってもまともに話せるのがジタンだけじゃ戦闘にも困るしなぁ・・・。

 兄弟でも会話に支障が出るなんて難儀だな」

スルガと呼ばれた青髪の男がカウンターに突っ伏す。

ニードを思ってくれてるのか、この男の性格は知らないからよく把握できないが、ニードにはいい友人、兄弟は居たようだ。

「これで俺たちも解散か。」

銀髪の髪の男が言った。

「・・・リーダーが決めたことだから、僕は構わない。」

青髪の男がへらりと笑った。

「わかってたことだけど。 ちょっと上手くいってたから、なおさら悲しいな」

クリーム髪の男が言う。


まるで通夜のような暗い空気になってしまった。





「もういいよ、なんか胃もたれしそうだ」

ケイが言う。

「そう? でも思ったより愛されてたみたいだねぇ」

そう言いながら画面を消すラファエル。

「兄弟って言ったわね。 家族愛、仲間愛はいいものね」

「そうだね、彼はニードの兄だよ、あとは下に妹がいる」

「あーあー。それ以上は聞きたくない。聞いてもない事知ってたらニードに怪しまれる。いつかボロが出そうだ。」

「あなた、本当にバカね」

「お前こそ、のぞきは犯罪って言ってたじゃないか」

「うるさいわね」


「はいはい、今回の石碑クリアしたんだから次の作戦会議しようよ〜」

アリアとギャイギャイやりあってるとラファエルがコーヒーとお茶のおかわりを入れてくれた。


「そういや石碑といえば魔物みたいなのに襲われたんだよ。あれ、なんだったのか、わかるか?」

伸びをするラファエルに、ケイは聞いた。

「見てたよ。 僕にも一切わからなかった。確実に邪神の手のものだろうね」

「なるほど。遠隔操作だから実体がなく、だから体も残らなかったのね」

「そうかもしれない」

頷く2人に、ケイは片手を上げた。

「ごめん、全くわからない。」

「・・・つまり、魔法で作られた偽物だったわけよ」

「ふうん・・・?」

わかったような、わからないような。

「で、次はどこだ?」

「うん、次はトラガだね」

「トラガ? 私の領地ね」

「そうだね、誰の所有地でもないはずだから、結界生成には問題はないね。

 次も奇襲があるかもしれないから警戒は大事だよ」

「奇襲・・・。 ニードは連れて行かないほうがいいか?」

「街道沿いだからニードの広範囲魔法は役に立つはずだよ」

「今回の敵は能力知的には低かったけれど、どうしても必要じゃないなら連れて行かないほうが無難ね、あなたより弱いんでしょう?」

2人の意見が分かれてしまった。

「うーん。」

悩むのは苦手だ。

「とりあえず、タバコ吸いたい」

「灰皿どーぞ?」

「ん」

「非喫煙者の前で吸うのね」

「たまにはいいじゃん、僕も吸お〜っと。」


ラファエルと2人、庭に出てタバコに火をつけた。

いつもは縁側で吸うけど、アリアに配慮して外に出た。

「それにしても、運が良かったね」

ラファエルが言う。

「何が?」

「アリアが一緒の時に奇襲があって。」

「そうだな、1人だったら背後からやられてたもんな」

「そう考えたらやっぱり味方は多いほうがいいよ」

「・・・そうだな」

ちらりとアリアを見た。彼女が仲間になってくれたら心強いのだけど。

「トラガだけならまだしも、他は無理よ。貴族が簡単に郊外に行けると思って?」

「そうだよな・・・。 って、お前今日トラガから来てくれたのか? 近いの?」

つい、驚きで煙がアリアに向かってしまった。慌てて手で気流を作って流す。

「近くないわよ。祭りがあったから。」

「祭り・・・。」

「今回の赤の祭りは結構大きい祭りなのよ、レガラシアの王女も来てるくらいにはね。」


「あ、そういやフェルも言ってたな。2人は知り合い?」

「あなたがなぜ王女を愛称で呼ぶのかは聞かないでおいてあげるけれど。

 そうね、よく会うわけじゃないけれど、知ってるわ。 こう見えて公爵家だもの。」

「そういやそうだった」

ケイが呟くとアリアに睨まれた。忘れてたわけじゃないけど。


それからしばらく話して、アリアは帰って行った。


「今日は修行無しなんだな」

「たまには休みも必要でしょう?って言ってたよ」

ラファエルが笑う。修行があると寝た気がしないからありがたい。


「次はトラガか。どこだっけ。」

カバンから地図を取り出して確認する。

今いるのは地図の左側。ヴァスクに入ったすぐのところだ。

「今ここだから、ここだね」

石碑マーカーのついた場所より少し上を指すラファエル。

「ここがトラガ?」

「そう。この街はそこまで大きくないけど、海が近くて魚が美味しい街だよ」

「へえ、いいじゃん。」

楽しみだ。









「おはよう、ケイ。早いね。」

目を覚まして、伸びをするニード。

神の家から少し早めに戻ってきてから、あまり寝付けなかった。

タバコを吹かしながら受け取ったばかりのコーヒーメーカーをいじっている。

「おう、今日の予定は?」

「うん、今日からフリーだし、ケイに合わせるよ」

「そっか。次の目的地はトラガなんだけど、どうしよう?」

「トラガかぁ。ケイ、まだ宿の宿泊日数余ってるけどどうするの?」

「仕方ないかな、次の目的地が決まった以上あんま長居する意味ないし。」

「そっか、じゃあ僕の宿泊予定、明日で終わりだから明日出発する?」

「そーすっか。ごめんな、急ぎになっちゃって。」

「構わないよ。じゃあ今日の予定は旅の買い物だね、付き合ってくれる?」

「おう。俺、フェルをギルドに送りにいくから、その後でいいか? 」

「うん。それで、それは何?」

「これ、コーヒーメーカー。飲み物を出す機械だよ」

「ふうん、お茶、とは違うんだよね? 美味しいの?」

「お茶よりだいぶ苦い。でもこれ飲んで作業すると集中力が上がる」

「へー!! 飲んでみたい!!」

珍しく食いついた。朝飯にはまだ時間がある。入れてみようか。

「いいよ、これをこうして・・・」

水と開けたてのコーヒー豆をセットしたコーヒーメーカーに魔力を注ぐ。

これはラファエルお手製の魔道具だ。電気の代わりに魔力で動く。

しばらくすると、ごぽりと音がしてコーヒーを抽出し出すと、いい香りが室内にたちこめる。

「面白いね、香ばしい匂いだ」

「いいだろ?」

コーヒーが入ったのでカップに注いでニードの前に出す。

「どーぞ」

「ありがとう・・・。熱い!!苦い!! 何これ!!」

「あっはっはっは!!」

大笑いして机を叩くケイ。赤くなったニードが苦情を返す。

「笑いすぎだよ」

「ごめんごめん。でも慣れたらこれがうまいんだ」

自分もあまり味がわかってないけど、強がってぐいと飲む。

「でも癖になる味だね」

「作業中にもってこいだろ?」

「そうだね」

2人でのんびりとコーヒーを楽しむ。

「目が覚めてきたよ、やっぱり面白い飲み物だね」

「そうだろ?」

「これも作ったの?」

コーヒーメーカーをいじりながらニードが言う。

「いや、これは貰い物。でも作れると思うよ」

「ケイは本当にすごいね」

「そろそろ時間かぁ。いく?」

時計を見て、ニードが言う。

「ん、そうだな」

はにかむニードと連れ立って部屋を出ると、アルとフェルも出てきたところだった。

「荷物まとめたか?」

声をかけるとフェルは笑った。

「もともと荷物なんてないわ」

「そか」

「きょうのごはん、なにかな?」

「なんだろうな」

相変わらず、アルは元気だ。

「アル、この宿に泊まるの、明日までだからな。 女将にちゃんとお礼言っとけよ」

「あした、どこかいくの?」

「おう、次の目的地だ。」

「わかった!!」

ニコニコと先を歩くアルを追いかけて、3人は階段を降りていった。









「あら、もう行っちゃうのかい。」

女将に明日で出て行く旨を告げると、少し悲しそうに笑った。


「おう、お世話になりました。」

「おせわになりました!!」


「じゃあ特別にデザートをだそうかね」

相変わらず、周りの奴らはアルに甘い。

出てきたデザートはアルが以前もらったことのある木の実のゼリーだった。

「そういやアル、もらった木の実はちゃんと世話してるか?」

「うん!! もう め、でてきたよ」

「もう? よほど魔力注いだんだね」

ニードが驚いたようにつぶやいた。

「アル、街の外に出たら魔力注ぐの禁止な。戦闘中に魔力切れになったら危ないから。」

前に長に回復魔法をかけすぎて溶けたのを忘れてはいけない。

「えー。」

「えーじゃない、わかったか?」

「わかった・・・。」

後で成長を確認しないと。カバンに入らないサイズになったら困るし。

「ケイ、昨日の約束、覚えてる?」

フェルが声をかけてきた。

「覚えてる。そこまで馬鹿じゃないぞ。」

「よろしく」

「あいよ、もう行くのか?」

「ええ。」

席を立つケイに続いて、みんなが立ち上がる。

「おやおや、みんな、もう出てくのかい?」

「明日の準備もあるしね」

「そうかい」

笑って見送ってくれた。







「ケイ、見送りしたらそのまま買い物に付き合ってよ」

「何買うんだ?」

「野宿の準備とかしたい」

「わかった」

「ケイ、あめかって」

「いいよ」

あっちこっち話しかけられて、少し楽しくなってきた。

こんな大勢で行動することなんて日本ではあまりなかった。


「仲間っていいな」

つい呟く。

「私はあなたの仲間じゃないわよ」

「わーってるよ」

フェルの冷めた目を見返して、ケイはため息をついた。

見送りと言っても別に何かあるわけじゃない。

ケイたちは誰かに絡まれることもなくギルドの前についた。

少し萎縮してるフェルの肩に触れる。

「着いたぞ、大丈夫か?」

「ええ・・・」

「なんかあるのか?」

「何もないわ。 ・・・楽しかったのよ」

「楽しい?」

「1人で出歩くことなんてなかったから、アルと2人で街歩きも新鮮だったし、楽しかったの。」

ぐっと袖を掴んで、フェルは笑った。

「ありがとう」

アルが前に出て、フェルの手を取る。

「またあいにいくね!!」

「うん、約束よ」

「やくそく!!」

「じゃあ、またね、ケイ、ニード、アル。」

「おう、またな」

またね。そう言ってフェルはギルドの中に入っていった。


「いい子だったね」

「そうだな」

「無事に帰れるのかな」

「まあ、そこまで面倒は見れないさ。・・・さて、買い物いくか」

アルの手を繋いで、ケイたちは歩き出した。




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