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44.accept.加護と魔道具*

疲れたというフェルの案内で揚々と大通りに戻ってきたケイはとりあえず宿に戻ることにした。

道を聞いて呆れられたのは内緒。


宿に着くと、昼すぎで食堂はガラガラ。

人の気配はすでになかった。フェルのこともあるから、ちょうどいい。

カウンターを拭いてる女将に声をかけると疲れた返事が返ってきた。

忙しかったんだろうか?


「おかえり、部屋空いたよ。 ・・・あれ、アルちゃんはどうしたんだい? その子は?」

「ただいま。祭りが見たいってんで残してきた。こいつのことは気にしないで。」

「でも1人は心配じゃないかい?」

「ああ見えて中身は魔物だし多分大丈夫だろ。」

「そう? あ、植木鉢は買えた?」

「あ、そうだった。これに入れたいんだって。」

そう言ってアルが飲み干してしまっておいた木の実を取り出す。

「ルコーの実だね。祭りで買ったのかい? これも魔力で育つから相性いいよ。肥料がわりになる。」

「そうなんだ。ノコギリってある? これ平らにしたい。」

「包丁でできるよ。貸してみな」

「任せます」

奥に引っ込んだのち、すぐに戻ってきた女将から渡されたのは半分に切られた木の実だ。ご丁寧に、自立するよう裏側も平らにしてくれていた。

「ありがとう」

「このくらい、いいってこと。 はい、部屋の鍵だよ。無くさないように。」

「ありがとう」

「階段上がってすぐの部屋だよ」

「はーい」


女将にお礼を言って、ケイはフェルを連れて階段を上がっていくと、さっきまで黙っていたフェルが呟く。

「ボロい宿ね」

2階は初めて入った。狭い階段を上がって、ケイはため息をつく。

「うるさい、放り出すぞ」

「口の悪い人ね・・・」

どの口がいうか。

部屋に入って、中を確認する。

広くはないが、机に椅子、クローゼット、ベッド。洗面台もある。最低限は揃ってるな。

ベッドは大部屋のものより大きめで、アルと2人でも十分だろう。



部屋に招き入れてから、すぐにフェルを鑑定する。


___________


フェルミ・レガラシア




Lv.15

HP 86/110

HP 300/300

種族:ヒューマ

称号:《闇の加護》、王候補

状態:疲労



___________




レガラシア・・・見事な金髪といい、やっぱりこいつがラファエルの言っていた王族の子供か。

ってか闇の加護ってやばくない? 俺やニードの持ってる加護と系統が違う気がする。明らかに敵側の人間だろ。

どーすりゃいいんだこの状況。


フードをとって、椅子に座ったフェルを見つめながら、ケイはベッドに座った。

どかりと腰を下ろすと、途端に疲労が出てきた。寝たい。もう帰ってほしい。

「で、なんだって?」

少し投げやりに問いかけて、ケイは頭をかいた。

「疲れたわ、何か飲み物ない?」

「・・・ブレンド茶でいいか?」

そう言って、棚に置いてあったカップにいれる。

「・・・珍しい魔法ね」

「そう? うまいぞ」

ケイも一口飲んで進める。フェルはちびりと飲んでからごくりと飲み干した。よほど喉が渇いていたのだろう。

微笑ましく思いながら、おかわりを注いでやる。

「・・・いいわね」

「笑うとかわいいな」

疲れていて変なことを口走った気がする。まあいいや。

「で、お前はこれからどうすんだ?」

「うーん。どうしようかしら。祭りが終わって落ち着くまでここにいていいかしら?」

「いいわけねえだろ・・・。」

「あの時、連れは逃げ出して信用できないの。お金は払うからここにいさせて。」

真摯に頼むフェルに、つい聞いてみた。

「お前は、どこの子なんだ?」

「私のことはまだ詮索しないで。お互いのために、お願い。」

真摯にそう言われて、ケイは黙る。

「探し物があるの、それを見つけるまでは帰れない。」

そう続けるフェルに、ケイはため息を吐いた。

「・・・手伝えって?」

「そこまでは言わないわ。 そうね、衣食住を用意してくれれば・・・」

「お前、厚かましいって言われない?」

「このベッドでいいわ」

「いや、勝手に決めんなよ」


言い合いになりかけた時、部屋の扉が開いた。

「ただいまーーー!!!!」

「あら、連れがいたの?」

フェルがコテリと首を傾げる。

「おかえり、迷子にならんかったか?」

「うん!!おみあげ、かってきたよ」

舌足らずなところがかわいい。渡したお金は全部使ったようだ。

差し出されたカステラのようなものを口に入れて、ケイは楽しむ。シュワっとして美味しい。

「このひと、だれ?」

手に持った飴を舐めながらアルが聞く。

「えーっと。フェルだ。仲良くしてくれ。」

「ふぇる、よろしく。 あるだよ」

「よろしく、これから厄介になるわ」

「よろしくしなくていい。もうお前出てけよ・・・」

「いやよ、せっかく見つけた隠れ家だもの」



しばらく押し問答が続いたが、フェルは部屋から一歩も出ないと言い張り、そして押し通しやがった。

ベッドは一つ。魔物のアルと一緒なのはいいにしても、流石に見知らぬ幼女と添い寝は案件だろう。

それこそ女将が突撃してくる。


俺、どこで寝よう。











「ケイといると飽きないねぇ」

ことの顛末を話し終えると、ニードはそう言って笑った。

パシャリと湯をかぶって、ケイは不貞腐れたようにつぶやく。

女将に説明して、追加分を払い、ケイはニードの部屋に厄介になることにした。

大部屋はもう空いてなかったのと、ニードの部屋は元々パーティメンバーと借りていたのでツインベッドなことで助かった。フェルも、アルと寝るなら護衛もいらないし、いいだろう。

「ニードが泊めてくれなかったら野宿だよ、ありがとな」

「それはいいけど、どこの子かもわからないの? 家出少女だったらどうする?」

「うーん、どうしよっかな。」

「ほんと、無鉄砲だね」

「ちょっと路地裏で迷子になっただけで、こんな結果になるなんて思ってもみなかった」

笑って、ケイは湯をかぶった。

フェルの身元はわかってる。隣国の次期国王だ。

でももっと重要な情報があった。あいつの加護、《闇の加護》だ。

今日も訓練の約束があるが、ニードの横で仮死状態になれるだろうか。

不安ばかりだ。

行き当たりばったりなのはどうにも性分だが、メンタルも同じくらい不安定なので手に負えない。

ため息をついたケイに、ニードに肩を叩かれた。

「で、ケイ。せっかく一緒にいるんだし、魔道具作ろっか」

にこりと笑ったニードに乗っかることにした。考えたって、仕方ないこともあるだろう。

「魔道具ね、考えたんだけど、こんなのどう?」

そう言って、考えを言葉にしていく。

言葉にするのは難しい。なかなかまとまらず、ニードが質問しケイが答える形になって、ようやくまとまる。

「つまり、入れ物に魔力を詰め込むんだね?」

「そう、そうすればいちいち魔力を使って描いて消してって必要なくなると思うんだ。」

要は、液晶画面みたいなものだ。

今回は背景と文字の二色で十分だから、重要なのは液体素子の代わりになるもの。

それを魔力で作ろうって話。

「それじゃやってみよう」

湯から上がって、ニードはさっさと着替え始める。

疲れてるけど、このまま寝かしてくれないだろうしやれるとこまでやってしまおう。

ケイもニードの後に続いた。

「魔道具を作るなんて、楽しみ。

 作りたいとは思ってたけど、ひらめきの才能ないから・・・でも手先は器用だから手伝えるよ」

「ありがと。・・・でもな〜。」

「何かあった?」

「・・・いや、とりあえず取っ掛かるか。」

液体素子の作り方が思い浮かばないのだ。魔力を貯めるものがあればいいのだけれど。

材料触ってれば思いつくかな。それこそ、仕方ないだろう。










魔道具はそもそも、魔力で動かすものだ。

それを内部に魔力を仕込むという発想がイレギュラー。

初めて会った時から思っていたけれど、ケイという人物はどこか普通とは違った。

「これ使えるんじゃない?」

そう言って、ロッシェル液を背の低い箱の形に組み立てたものに注いだ。

「これで〜。 こうして〜。」

楽しそうに鼻歌を歌いながら、魔力を注いでケイはすぐに完成させてしまった。

ロッシェル液は魔力を注がれてと固まってしまった。入れすぎだよ、という前にケイは笑ってこちらをみた。

「ほら。どうよ」

「これ、どう描くの?」

「・・・そっか、中身だけあっても使えないな。つい、そっちばっか考えてた。」

ロッシェル液は羊皮紙を浸すと魔力を吸い取る液体なので魔力で書いた文字も消せる。

便利だがこんな使い方、生まれて初めてみた。


ケイは箱をひっくり返して、あれこれする。

ごめんね、手伝うと言った手前、何もしないわけにはいかないけど、みててもわからない。

そもそも、その魔力を吸い尽溜めたロッシェル液は廃棄するものだ。使えるわけない。

「ケイのやってること、訳わからないよ」

「んーーー。 そこまで出かかってるんだ、ちょっと待って。」

ブツブツと呟きながら、ケイは箱をつつく。しばらく待って、茶でも入れようと動いた時、ケイは唐突に声を上げた。

「魔法陣・・・そうだ!! 魔法陣!! それで魔力に方向性をつければ!!」

カバンに手を突っ込んで、こないだ買った鉱石を取り出したケイ。

ゆらゆらとした光に、ニードは手を伸ばした。

「これは?」

「マラカイト鉱石。これで魔力を吸い上げる。へへ、里で学んだこと、意外と役に立つもんだな。」

魔法陣にあれこれと書き込んで、ケイは満悦な顔になった。

魔法陣の紋様は、魔力を制御する機構なのはわかったけど、はちゃめちゃな書き方で僕の理解が追いつかない。

「んと、紙に書いてどうするの?」

「こうする」

魔法陣の書かれた紙から《コピーアンドペースト》で箱の中の板状になったロッシェル液に貼り付けると、魔法陣はスッと消えた。

何が起きてるのか。

奇跡のような出来事に僕はびっくりして言葉も出ない。

そもそも魔道具に魔法陣なんて使わないのに。

ケイは箱からロッシェル液が固まったものを箱から取り出して、マラカイト鉱石で軽くつつく。

出来上がったのは羊皮紙より大きい、石板のようなものだった。

「これをこうすれば・・・」

ニヤリ、ケイが笑った。


ロッシェル液が固まったものは、マラカイト鉱石に引きずられるように赤黒い線を引く。

「やってみ?」

渡された板に、ゴツい石を押し当てる。がりっと音がして、少し表面が削れた。

ケイが「優しくでいいよ」ともう一度笑った。

ドキドキしながら、スッとスライドさせて、僕は線をひいた。

「すごい・・・できた。」

口から、感嘆の声が漏れた。

「これ、どう消すの?」

そう問いかけると、ケイは板を反対側に裏返して、マラカイト鉱石をスッとなぞった。

反対に返すと、もうさっき引いた2本の線は消えていた。

「これで使える。」

「どういう仕組みなのこれ!?」

驚きしかない。

これでは、新しい魔道具の話ではすまない。世紀の発見だ。

「だから、この板そのものに方向性をつけたんだよ。そんで、魔力を引きつけるマラカイト鉱石で引っ張る。すると文字が書ける。裏面を擦ると消えるのは同じ要領。」

そう言って、もう一枚作り始めた。

やり方を見てもわからない。でも予算と結果が見合ってないのが気に掛かった。

「裏の色と表の色が違うのはなぜ?」

「魔法陣で固定した」

「これはこれでアリだけど、それって、ロッシェル液じゃなくてもできる? これ、意外と魔力吸うし高いんだ。」

「・・・確かに、マラカイト鉱石の加工もできないと意味ないしな。やってみるか。でも魔力を貯めるものって他に何がある?」

「それならミスリル合金は? このくらい薄いなら安く作れるし魔力吸収もできるくらい魔力に強い耐性がある」

「あったっけ・・・」


そんなこんなで夜がふけていった。


完成したのは明日、商業ギルドに売りにいくことになった。

きっと高値で売れるだろう。


僕とケイ、きっと相性がいいのかもしれない。

発明のケイと、改良の僕。いい仲間になれそうだ。

早ければ明後日にはあいつも帰ってくるだろう。きっとケイとも仲良くなれる。楽しみだ。



夜更けになって、ケイとニードは眠った。








いつものようにケイは神の家に来ていた。アリアはもう帰ってしまったようだ。明日謝らないと。

「レガラシアの子を見つけたね。これで視えなかった理由がわかったよ。もう手下を作ってたとは。」

「ああ、やっぱ味方じゃないのね。これ、どう扱えばいいん?」

「うーん。どうしようね?」

へらり、とラファエルが笑った。

「どうしようって、俺より無鉄砲かよ。」

コーヒーを飲みながらケイはため息をつく。

「もういっそ、味方にしちゃえば? 片割れと会わせてやるって言えば案外ころっとこっちにくるんじゃない?」

思ってもみなかったというように頭をかくラファエル。

「そっか。その手もあるね」

「ん? 他に思いついたのか?」

「殺しちゃえば早いと思って。」

「おい、何のために助けたのよ・・・」

「わかってるよー、適当に言っただけ。」

「そうかい」

「でもいい手だね」

「その片割れはどこにいるの?」

「うん、レガラシアのジャズにいるよ。」

「そっちはすぐわかるのな」

「妨害がなければね」


へへっと鼻を擦るラファエル。なんか腹たつな。

「で、そこに行ってどうすればいい?」

「仲間になってもらうとか?」

「強いのか?」

「ぜーんぜん。ただの子供だもの。」

ケイはもう一度ため息をついた。

「結局、俺はどうすればいいんだよ?」

「まずはヴァスクの石碑を埋めてよ。アリアに頼んでおいたから、彼女について行けば今回の石碑は見つかるよ。」

「・・・わかった。フェルはひとまず無事に国に帰せばいい?」

「そうだね。今回は準備もできてないし、様子見も兼ねて見逃そう。」

「はいはい」


じゃあね。その言葉で世界は暗転した。

仕事が忙しくてなかなか追いつかないのでしばらく更新不定期になります、ごめんなさい。

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