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42/53

42.receive.人として*

___________

アル


Lv.40

HP 680/680

MP 673/803

種族:《スライム》

称号:勇者のパートナー

状態:正常




*スキル*

全攻撃魔法

聖魔法

念話

魔力操作

ドレイン

___________


鑑定結果と目の前の少女を見比べて、ケイは唸った。

色彩の特徴と問答でなんとなく察しはついていたが・・・。

状態には正常と出てるし、何かのスキルかと思ったけどそれらしいものはない。

一体何が起きてるのか。


「えっと・・・」

「・・・・・・・。」

ベッドの上に座って、ケイと少女は向かい合っていた。


少女は腰まで伸びた白髪に、ルビーのような赤い瞳。怒られると思ってるのか、不安そうに下を向いている。


「あー・・・。 アル、だよな?」

「・・・うん」

気まずい雰囲気に、ケイは頭をかく。鑑定でもアルと表示されたので間違いはないだろうけど、唐突に変わってしまって不安だ。

とりあえず、アルは全裸だったので自分のシャツを着せた。

アルの体は4、5歳だろうか。幼い体つきでかなり細い。もしあのスライムボディが変化した体だと言うのならあの大量の飯はどこに消えたんだろうか?

ケイの貸したシャツはダボダボだ。

結んでるというよりは頭に絡まっていたリボンをアルの腰に巻いてみたら、いい感じにワンピースになった。

・・・似合うな。

っと、それどころじゃない。


「・・・なんで人の形に?」

「・・・わかんない」

「スライムに戻れないのか?」

「・・・・・・わかんない」

手を上にしたり下にしたりして体をあちこち見ながら困った顔のアル。かわいい。

「・・・ま、いっか。

 そのうち神様に聞いてみるよ。なんか知ってんだろ。」


「・・・・・・ケイ、いやじゃない?」

不安そうに揺れる赤い瞳。


そんなアルを見ていたら、昔、同性愛を告白してきた友人を思い出した。

今でこそ社会的にも増えてきてカミングアウトするしないの問題になってきたが、あの頃はそうではなかった。


認めてもらえないことを前提にした受け答えは、苦手だ。

俺は普通に女が好きだから、あいつの好きになった人が俺じゃないなら何も問題はない。

・・・と思うけど、こういうシビアな問題は、一言間違えただけで相手を傷付けてしまう。


どう答えるのが一番傷付けないのか、考えるだけでいやになる。


誰かの不安そうな顔は苦手だ。

重たい告白も嫌いだ。

誰かの期待に応えられないのも嫌いだ。


アルを撫でて、ケイは軽くため息をついた。


「お前はお前だろ? 確かにびっくりしたけど、いやじゃないよ。」

「・・・・・・そっか!!」


単細胞なのは2人とも同じで、すぐに元気を取り戻すアル。


何も知らないというアルにしつこく質問したって有意義な時間にはなりそうにない。

本当は気にした方がいいのだろうけど、あんな不安そうな顔をされたらケイも黙るしか手がない。


「・・・飯行くか」


もう、周りに人はいないようで朝独特の騒がしさは消えた。そろそろ行かないと飯もなくなってしまう。

「ごはん!!」

ベッドの上でぴょんと飛び跳ねるアル。

スライムでも人でも、ご飯が好きで反応も変わらない。うん。かわいい。

なんでこんな風になってしまったのかよく分からないが、人の形になっても変わらずかわいいのなら、問題はないだろう。


そろそろ行くか、と腰を浮かせたところ。


「おはよう!!  ・・・って、その子は誰だい!? 宿泊料倍がけするよ!?」

「いや、待って説明を」

「しかもその服・・・この大部屋でいかがわしい事したの!?」

「いやだから待って!?!?」



朝から元気な女将だった。














女将からの怒涛の質問をアルの腹の音で切り上げて、ケイは朝ご飯の用意された席に着く。

今日の朝ごはんは、パンにベーコンエッグと具がゴロゴロ入ったスープだ。

目の前には、子連れで来たケイに驚いたニードが座っている。


「おはよう、ニード。 ・・・いただきます」

「いただきます!!」


真似をして手を合わせたアルにフォークの使い方を教えてケイも食べ始めた。


『おはよう・・・。 ケイ、この子、誰・・・?』

もぐもぐと厚切りのベーコンエッグを頬張りながら幸せそうなアル。

本人が話す気のない様子に、ケイはため息をついた。


「これ、アル。朝起きたらこうなってた。さっきも女将に質問攻めされて疲れてんだ・・・ほっといてくれ。」

『・・・・・・そう。ま、元々珍しい魔物だし色々あるよね。ケイが気にしてないならいいや』

「理解が早くて助かる。」


パンを咀嚼しながら、ケイは再度ため息をつく。


朝イチでアルの変身があったから忘れていたが、これから毎晩、神の家でのアリアとの修行をすることが決まった。これからは毎日寝ずに行かないといけない。体は休めているから、効率的とはいえ、心が休めていないのは誰が悟ってくれるだろうか。

考えるだけで億劫だ。

『にしてもずいぶん疲れてるね』

「今日は夢見が悪くて寝た気がしないんだ」

本当は体の疲労は残ってないし夢でもないけど、これが気持ち的に一番伝わりやすいだろう。


『そっか、じゃあ部屋を移ったらよく休んで』

「ありがと」

『魔道具も楽しみにしてるからね!!』

「お、おう・・・」

羊皮紙をグイグイ押し付けてくるニードから圧を感じた。プレッシャーに弱いのでやめてほしい。


「とりあえず、いつまでも俺の服着せるわけには行かないし、今日はこいつの服を買いに行くんだけど、子供服の店知らない? 」

昨日行った店は大人用の服しかなかった。

日本でも子供服は高い傾向にあったし、予算はまだあるとはいえ、新たな出費に胃が痛くなる。

スープに口をつけながら、アルを見た。

パンを頬張りスープで流し込んでいる。人の姿に慣れてないせいか、少しこぼした。

かわいいな。

そう思いながらこっちを向かせてアルの口を拭いた。


『じゃあ、案内するよ。今日は商業ギルドの後に図書館行くから帰りは送れないけど、アルちゃんなら道わかるよね?』

たしか商業ギルドは商売関係、こないだ行ったギルドは冒険者ギルドだ。似た名前だからややこしいな。

「あ、俺もそこ行きたい。金預けたいんだ。たしか、その方が会計も楽なんだろ?」

『そうだね。 じゃあご飯食べたら行こうか』

「おかわり!!」

パンをもしゃもしゃと小さい口に押し込んで、アルが言う。

「こら、飲み込んでから言えよ・・・」

「あらあら、ほんとよく食べるね!!」

通りがかった女将がすぐに焼きたてのパンをアルの皿に置いていく。

一通り席を回ったのか、すぐに戻ってきて「さっきは怒鳴ってごめんね」と言った。

「気にしないでください、ややこしいこいつが悪いんです」

「にしても、人の形になる魔物なんて、びっくりしたよ。 ・・・あんまり言いふらさない方がいいね。」

「俺も同感です」

「ある、へん?」

おかわりしたパンを食べきって、むぐむぐしながらアルがつぶやいた。

『アルちゃんは変じゃないよ、珍しい。って言うんだ。』

「そうだね、色も姿も全部が珍しい子だ。」


口々に言う彼らの優しい雰囲気を悟ったのか、アルはご機嫌に戻る。


「アルは珍しいけど、何よりかわいいから、このままでいいよ」

ケイはそう言って、アルの頭を撫でた。硬質な見た目だが柔らかな髪質で、撫で心地がいい。



「んふふ、ある、めずらしい!!」

みんなにそう言われては笑顔になるしかない。能天気なアルだ。


「さて、お詫びにデザートはどうだい?」

にこりと笑って、女将がさくらんぼのような果物の入った器を置いた。

「なにこれ?」

首を傾げるアル。


「うちで採れた木の実だよ。甘くて美味しいんだ。」

「たべる!!」

食い気味に答えたアルに「種があるから気をつけて食べるんだよ」と女将は笑う。


アルは嬉しそうに一粒手にとって、はむりと口に入れた。

「あまい!」

がり、っと音がして、種をペっと吐き出す。

「そう言うところは器用だな」

「おいしい!!」

笑いながらケイが茶々を言うと、アルは元気いっぱいに答えた。


「この木の実は少し珍しくてね。魔力で育つんだ。アルちゃんと同じだね」

魔力で育つ木。名前はない雑草のようなものだそうだ。


女将の話を聞いて、アルは手を上げた。

「そだてる、みたい! おいしい!!」

「じゃ、名前つけて育てようか」


ケイがそう言うと、アルは嬉しそうに吐き出したいくつかの種を手に包む。


「たのしみ!」


ニードが貸してくれたハンカチに種を包んでアルが席を立つ。よほど楽しみのようだ。


「そろそろ行こうか」











「商業ギルドはここだよ」

水色の塗装がされた、綺麗かつ堅実な建物だ。

銀行ぽさを感じながら、3人は中に入る。


作りは冒険者ギルドと変わりないようで、奥にカウンター、テーブル、物販スペースがあった。

朝イチだからか、業者以外、あまり人がいない。

「お金預けたらちょっと待ってて」

「はいよ」

案内されて奥に入っていくニードを見送り、辺りを見回しながらアルと2人でカウンターに行く。

「おはようございます。今日はなんの御用ですか?」

「お金を預けたいんだけど・・・」

「ではギルドカードとお金をこちらに・・・」


屋台ではお金の方が払いやすいので少量は別にしておきたい。

ケイが大金の入った方の皮袋を差し出すと、店員は数を数えて機械に通す。

ガチャガチャとお金が擦れ、最後にチーンと音がする。


物珍しいのでつい見入ってしまった。


「はい、終わりましたよ」


返されたギルドカードに魔力を通してお金の欄が正しく埋まっているのを確認して、ケイはカードをカバンにしまった。


「よいお取引をありがとうございました」

「ありがとう」

丁寧なお辞儀に適当に返して、ケイはいつのまにか隣にいないアルを探す。

「おーい、アル?」


いた。

物販の棚を覗き込んでる。

そばに行って、アルの頭に触れた。

やわらかい髪を撫でて、「どうした?」と聞くと、こちらを向いた。


「ケイ、これほしい」

アルの身長でギリギリ覗き込める高さの棚には、カラフルな石・・・昨日もねだられた、宝石アメだ。

「気に入ったのか?」

「うん!!」

キラキラしたルビーの瞳で元気に答える。

「2つまでな。」


自分で選びたいと言うアルを抱き抱えて選ばせると、両手に1つずつ握って、カウンターに持っていくアル。

「ください」

カウンターにいた眠そうな店員にそう言って飴を差し出す。


うーん、かわいい。

人の形になって、余計に可愛さを増していないか? 

誘拐されないか心配だ。


「銅貨2枚だよ」

小銭を渡してアルに買い物をさせる。まるで子供のお使いだ。

「ありがと〜」

適当な店員に思うところかないわけでもないが、ちょうどニードが戻ってきたので意識を戻す。


『また飴買ったの?』

「そう、気に入ったみたい」


『なら出店を見ておいでよ。赤の祭り、始まってるはずだよ』

「え? 祭りまで、まだ猶予あると思ってたんだけど。」

『本祭は明日だけど、今日からフレアマーケットは始まってる』


「ふーん、アル。行くか?」

「なにがあるの?」

「祭りだもんな、なんかしらあるだろうよ」

ケイがそう言うと、ニードが笑った。

『植木鉢もそこにあるんじゃない? 育てるなら必要でしょ?』


忘れかけていたことを言われて、ケイは手を打つ。

「そういやそうだった。植木鉢も買わないとな」


「あ!!」


アルも忘れていたみたいだ。脳みそは子供らしい。













「へえ。結構色々あんな。」

「ふく、いっぱい!!」


店先でニードと別れて、ケイとアルは店に入った。


服屋独特の匂いにアルが走り出す。

「勝手に動くな!!」

咄嗟に命令すると、ビタンと転んでしまった。


「いたーい」

「・・・ごめん」


悪いことをした。


今度からは店に入るときは手を繋いでいこう。

「いらっしゃいませ〜」

奥から優しそうな女性店員の声がした。


数が多い。

手短にあるラックにかけられたフリルのついた服を手に取って、アルに当ててサイズを見る。


うーん。サイズはこのくらいだろうか。

思ったより、あんまりピンクは似合わないな。

当てた服と同じ90と書かれたハンガーを探して、漁る。


よく動くから、あまり布地の多いものはやめた方が良いだろう。

水色のすっきりとしたワンピースが目についた。爽やかさが似合いそうだ。


アルに当てるがあちこちキョロキョロしてサイズがわからない。

「動くなって、わからないだろ」


とりあえず保留だろうか。サイズは後にして、次に行こう。

ガラガラとハンガーを押し退けて、探す。


「何かお探しですか〜?」

ブカブカのお仕着せを着た店員がいつの間にか隣にいた。


これ幸いとケイは話をする。

「この子の服が欲しいんですが、サイズがわからなくて。」

「測りますね〜」


首にかけていた紐で、アルの身長、腹囲をものの数秒で測った。まさにプロの技だ。

感心しながら眺めているとメモを手にこちらを向いた。


まるで聞き込みだ。


「そのワンピース、気に入りました?」

「いや、まだ決めてなくて。」

頭をかいて、手に持ったワンピースを見た。

「娘さんのサイズは80ですね〜。

 でもこのくらいの子供は身長が伸びやすいのでワンピースなら90でも良いかと思いますよ」


「なるほど」


「好みはありますか?」

屈んで、アルと目線を合わせると、店員さんは優しくそう聞いた。

「あめすき!! にくすき!!」

口の中の飴を転がして答えるアル。

そうじゃない。

困った顔でこちらを見上げた店員さんに少し申し訳なくなった。

「あー・・・。 俺たち旅してて、レガラシアまで行くので動きやすい服を一式欲しいです。

 あと街歩きできる服も。似合うやつ見立ててください。」


「わかりました〜。予算は?」

「えっと、高くない範囲で・・・」

「かしこまりました」


笑顔になった店員に後を任せて、アルを試着室に連れて行く。

とりあえず持ったままだった水色のワンピースを着せてみた。


いつまでも俺の服を着せるわけにはいかないので着て出る予定だ。


「うーん。かわいいけど、腹回りがだぼってんな」

もっと似合うやつがあると良いのだが。


「子供ですから、このくらいは仕方ないですよ」

後ろから覗き込んだ店員さんが言う。子供の服なんて買ったことがないからわからん。


「これとこれはどうでしょう?」

黒ベースの動きやすいスリットの入ったスカートにシャツと、茶色ベースのチュニックに短パンだ。

「どっちも似合いそうだな」


「美人さんだから迷いますね〜。 両方着せてみますか?」

「ケイ、おなかすいた」

「待ってろ、服買ったら食いに行こうな。」


ワンピースを脱がせて、シャツから着せる。子供向けだからか、ボタンは飾りだった。

ゴソゴソとしていたら、店員さんが覗き込んで呟くように言った。


「もしかして、下着は着ない子ですか?」

「えっ・・・と。」


そういえばまだパンツ履かせてなかった。

咄嗟に言い訳が思いつかない。


「まだ買ってなくて・・・合わせて買います」

「・・・そうですか」

ジトッとした視線が刺さる。


アルの体は3、4歳程度。この歳までノーパンなんてあり得ないだろう。

怪しい人認定されてしまったかもしれない。

不可抗力だ。


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