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4.oneself.神様なんかいない

四話です。まだ歩いてます。



「そろそろ戦ってみるか…」

通算3本目になるパンを齧りながら、遠目でぽよぽよと歩いてる?スライムを見つめた。

「スライムって何食べて生きてんだろ・・・

俺なんていつ街に行けるかわかんないから腹減っても限界まで我慢してんのに。」

愚痴りながらスライムを見守る。

クリクリとした目と、動くたびにたぷんと揺れる体。

いつの間にか2匹になったスライムが、ぶつかり合いながら遠くに跳ねていくのを見送りながら、

ケイはハッとして頭をふった。

「いやいや、そんなこと考えちゃダメだ・・・あれは倒す相手だ、魔物だ。」


悶々としながらじっと見つめると、、やっぱり可愛い。

初日ほど群生してる所は未だ見ていないが、もう異世界に来てからそろそろ五日目だ。

ずっと歩くだけなのはしんどい。


「とりあえず、来た方角もわかんなくなるし進行方向の敵だけ倒すってことで…」

しばらく歩いたところで自分の少し先にぽよぽよ跳ねてきた緑のスライムを見つけた。

目標がてら、カバンを置いて、スライムに向かって小走りでかけながら、ケイは剣を引き抜いた。

歩きながら暇潰しにやっていた、「剣を背負ったまま抜く練習」は結構な成果が出ていたらしい。

重い剣は思ったよりもすんなりと抜けた。


そのままスライムに向かって上段から振り下ろした。

面を取りに行く構えだ。


こちらに気づかず、振り返りもしないままのスライムを叩き斬る。


「しゃっ!やりぃ!・・・ってあれ?」


剣を受けたスライムはずるりと半身に裂け、半分が溶けた。

が、解けなかった部分はぷるりと球状に戻っていく。その動きは変わらず、意外に素早い。


「どういうことだ・・・? っと、あぶね!」

スライムが怒ったように目を釣り上げて、魔法を放つモーションに入る。

魔法を放つ時、スライムの体が淡い青緑色に包まれるからすぐにわかる。きっとあれが魔力なんだろう。

ケイはスライムのモーションが終わるギリギリで飛び退いて、魔法射程から逃げる。

以前、この色のスライムから風魔法を浴びとき、前髪を数本と額を軽く切られた。

傷になるようなものでもなかったから、きっとスライムは弱いのだろう。

でもあの時は慌てて逃げたから、今度こそ敵討ちだ。

「俺の前髪の恨みはでかいぞ!」


スライムも一度魔法を放った後は、ジリジリと後退している。二発目の準備をしてるのか?そうはさせんぞ。ぐへへ。

おなごを追い詰めるお代官様を思い浮かべながら、

ケイはスライムを駆け足で追いかけ、切りつけた。


今度は横から目の下あたりを一閃してやった。

スライムは半分になって、やっぱり半身は溶けた。

今や1/3だ。動く小さな的に当てるのはなかなかに至難で、何度か空振りもしたが、これはなかなか楽しい。


「ほらほら、もっといくぞ!!」


調子に乗って笑いながら攻撃していたら、後ろからいきなり水を浴びせかけられた。

バッと振り返ると、後ろにいつの間にやら現れた青いスライムがいた。

「ちょ、2対1は卑怯だぞ!!」

慌てて2匹を視界に収める位置に逃げて、緑のやつから仕留めようと決める。

青いスライムが攻撃してこないのを確認しつつ、緑に攻撃を繰り返した。

3度切りつけると、スライムの半透明な体から、丸い核のようなものが透けて見えた。


「もしや。核を潰さないと行けないのか・・・」

ケイはスライムの中の核を刮目し、狙いを定めて剣を突き出した。

青色のスライムは水を吐くだけだとわかっていたので放置する。


3度空ぶって、ようやくあたる。

ピシッとなり、核が砕ける音に合わせて、スライムが驚いたような目をしながら溶けていき、その場に緑の小さな石が残された。

「っと、今はスライムに集中!」

青色のスライムは緑よりも色が薄いので嵩を減らさなくても核が見えた。

ぽよぽよと動くスライムに狙いを定めて一撃で核を砕いて仕留め、あたりを見渡す。もう他のスライムはいないようだ。


ケイはカバンのところまで戻り、蹲み込んで、麦茶を飲み一息つく。

「なんだこれ・・・もしかして、これが魔石?」

落ちていた石ころを剣で手元に引き寄せてから拾うと、太陽に翳してみた。

少し歪な形をしたその石は、光を受けてエメラルドのようにキラキラと反射する。

青スライムが落としたもう一つは澄んだ綺麗な水色だった。淡いガラス玉のようだ。


「何かに使えるかも。もーらい。」


すこし嬉しくなって、ついウキウキする。

立ち上がって歩き出すと、気分が上向きだと足も速くなる。

嬉しい反面、スッと心に影がさす。


一人はもう嫌だ。一人は寂しい。


「はやく街に行きたい。 あと風呂にも入りたい。 酒も欲しい。 

あとは・・・柔らかいベットだな・・・。」

しみじみと呟いて、恨めしげに地面を見た。

体もだいぶ慣れてはきたが、こんなところじゃよく寝れないのだ。





 




「これ・・・道?」

もう何日歩いたかもわからないくらい歩いたし、青と緑のスライムもそこそこな数を倒した。

レベルも上がったし、魔石も両手に収まらないほどたくさんある。成果は上々だろう。

途中、もうめんどくさくなって歩くのサボったし、気がついたら昼過ぎくらいまで寝ててスライムに囲まれて戦ってたらどっからきたかもわからなくなったけど、やっと、やっっと、緑と白と青以外を見つけた。


道と呼ぶにはあまりに細いが、道は道だろう。

自転車が通るようなわだち程度の狭い間隔の、草の禿げた茶色の土が見えていた。


「端は・・・見えないな。とりあえずこれを進むか。」

その道は横一本にずっと伸びていて、地平線と交わる前に見えなくなってしまう。とにかく長い。


道に困ったら神頼みだ。また剣をぐるぐる回して倒れた方に、ケイはひたすら歩いた。



歩いた。


歩いて、

走って、

休んで、


  また歩いた。



「そろそろ街とか人とかなんかないかな…。」


道を見つけてから2日になる。

スライムが出たらいつものようにカバンを目印に置いて、倒しに行った。

今回倒した青いスライムから出たものは皮袋が一つと今までよりちょっと大きい魔石だった。ちょうどいいので皮袋にざらっと今まで集めた魔石を入れ直す。さすがにカバンの中にゴロゴロ転がすのは邪魔だからだ。

休憩しながら、パンをかじる。

最近、動きがよくなってきたのか、一発で倒せるスライムもかなりいて、剣を振るのが少し楽しくなってきた。

「そろそろレベルも上がってんじゃないのー?」

ワクワクしながら、ケイはここしばらくわざと見なかった《ステータス》を開く。



________


アズマ・ケイ

Lv.4

HP 120/130

MP 40/65

種族:ヒューマ

職業:みならい剣士

称号:スライムハンター

状態:正常


*スキル*

生活魔法

鑑定

ブレンド茶

居合い

天読み

________



「お、いい感じじゃん。 称号も変わったしなんか嬉しい。

スキルも増えてる・・・ 天読みってなんだ?雨予測のことかな?

居合いは次に使ってみようかな。」


何日も歩いて体力もついたし、レベルも多少上がった。

戦いもそれなりに板についてきて、いろいろな戦い方をする余裕も出てきた。

麦茶を飲みながら空を見ると、雨の雰囲気を感じ取ってケイは荷物をまとめた。

この草原の雨は唐突に雲が集まってきて前触れもなく降る。

雲が多くなってきたら要注意。

これは何度もずぶ濡れになって学んだことだ。


「そろそろ人に会ってもいい頃合いなんじゃないの? 長すぎるよこの道。」


道がある以上、誰かしらが定期的にここを通るはずだ。

もう何日歩いたかわからないが、あまりに広すぎる。

あたりを見回しながら歩いているから、街を見逃したってことはないはずだ。見逃すってか、地平線しかない。

まぁ、魔法で隠されてるなら見逃しても仕方ないけど。




現代日本だったら気合の入った膝栗毛でもそろそろ諦めて電車乗りますね。

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