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3.Appeared.ステータス

三話です。まだまだ歩きます。



雄叫びを上げた後、しばらく休憩しようと思い、草の柔らかそうなところを探してケイは少し歩いた。

5分ほど歩いたところで立ち止まって靴を脱ぐ。

久々の大音量で少し喉を痛めたのでお茶を満足するまで飲んでから、ふぅ、とため息をついた。

よくわからない場所で心は休まらないが、今は休憩が必要だと思う。

足はガクガクして、とてもじゃないが、これ以上は歩けない。


「・・・この靴も久しぶりに履いてんだよな。」

しみじみと呟いて、綺麗な靴を眺めた。ひっくり返すとソールには草の汁がついているが、

表面はまるで洗った後のような、さっきの雨のせいとは思えないほどの綺麗さだった。

ここしばらく買い物も仕事終わりで、履くのも仕事の革靴ばかりで。

お気に入りだったスニーカーは、ほとんどしまいっぱなしだった。


「あーーー。・・・・・・疲れた。」

空も草も、もう見飽きた。せっかくここまできたんだ。

どこからきたかわかるように、進行方向の地面に剣を突き刺した後、

カバンを枕にしてパーカーを体にかぶせて、フードを頭にかぶって、丸くなって、目を閉じた。

お腹が空いてるけど、パンを食べたらなくなってしまう。お茶の恐怖がまだ頭にこびりついている。

どうせ寝起きにも腹が減るのなら、起きてから食べたほうが効率はいいだろう。


ぶっちゃけ、太陽の位置がおかしいのは結構前に気づいていた。

体感的にも4時間以上は確実に歩いたのに、太陽の位置は目が覚めたときよりほんの少しずれた程度で、

もうそうなると何時間経ってるのかもよくわかっていない。いつ夜になるのかもわからない。

「寝て起きて、夜だったらまた寝よう・・・」

考えを放棄して、ケイは意識を手放した。




目を覚ますと、寝る前に確認した時は剣のに右側にあったはずの太陽が反対側に来ていた。

ケイの寝相はかなりよく、ひどい時はみじろぎ一つしない上、薄目を開けて寝てしまうケイなので、自分が動いた可能性はない。

そう考えると夜すら見逃してしまったようだ。

「丸一日寝てたの・・・?」

おかげで頭は結構スッキリしている。


もそもそと起き上がると、体にかかっていたパーカーを着て、ケイは立ち上がって軽くストレッチをする。

「いーちにぃ、さんっし・・・!」

掛け声をつけて、腕を伸ばして足を伸ばして・・・と、固まった肩や腰をほぐした。

流石に硬い地面の上で寝るのは体に負担があるようだ。

フローリングの床で寝るよりはマシだが、なかなかにしんどい。


「はぁ。パン食うか・・・」

お腹は空いているが、食欲が沸かない。

仕方なく《ウォーター》で麦茶を出して喉を潤した。


10分くらいだろうか、少しゴロゴロしながらめんどくさそうにパンを取り出してちぎる。

「意外に硬いな・・・フランスパンかな?」

ムシャリとかじって、意外なうまさに二口目を放り込む。

じわりと広がった小麦とは違う濃厚な麦の味に舌鼓を打つと、鞄に戻した食べかけのパンを取り出して、

今度は少し大きめにちぎって食べた。

「スープとも相性良さそうだな・・・早く街に行きたい。」

髪を適当に直してカバンと剣を背負い、さっさと身支度をして、また歩き出した。


「今日もまたいきなり降るのかな・・・」

空を睨んでも、今日は雲ひとつない。

こんな草原なのだから、たまにしか降らないなんてことはないだろう。

「それでここまで生えそろうならサハラ砂漠なんてとっくに大草原だな。」

昨日よりは気も楽だ。

ベットで寝るのを目標に、今日もひたすら歩いていくケイ。


視界の左側にあった太陽が真上に来た頃、ふと神様のメモを思い出した。

「確かステータスが確認できたんだっけ?」

放任主義の神様の言うことなんか聞きたくはないが仕方がない。

「歩く以外に今やることもやりたいこともわかんないし、メモ通りにすっか。」

歩きながら、ケイはメモの指示通りにステータスを開いて見た。

「よし。 《ステータス》・・・お、なんか出た。」


パッと宙に現れた半透明なウィンドウを見ると、

________


アズマ・ケイ

Lv.1

HP 97/100

MP 33/50

種族:ヒューマ

職業:無職

称号:放浪者

状態:正常


*スキル*

生活魔法

鑑定

ブレンド茶

________


「HP、MPとかその辺はゲームと同じかな。 ふんふん・・・

不本意だけどまだこっちの世界では働いてないし無職なのは仕方ないとして・・・

称号が放浪者ってなんやねん!! 確かに他所から見たらそうなのがさらにムカつくわ。 クソ神のせいでこんな目にあってるんですけど。 無職と合わせた時の印象が最悪すぎる!! これの設定してるヤツ、ぶん殴りてぇ・・・!!!」

憤慨しつつ、独り言を並べてるうちに熱も冷めた。

「メモだけでいるかどうかもわからない神に怒るのはやめよう。 もしかしたら異世界漂流の先輩のイタズラかもしれん。」

ふぅ・・・と深呼吸したのち、《ステータス》をもう一度見た。


ヒューマは確かどっかの国の言葉で『人間』だったはずだ。これはゲームで覚えた。

こっちでも地球の言葉が使えるんだろうか? 

正直、イングリッシュですら高校では選択しなかったから中卒レベルな上、リスニングは皆無と言っていいほど自信がない。

英語圏どころかましてや他国なんて、笑顔が共通言語レベルだ。

ため息をひとつ付いて、ケイは脱線した頭を切り替えた。


「えっと・・・HPがちょっと減ってる。なんでだろ」


MPがそこそこ減ってるのはさっき喉が渇いて麦茶を出したからだろうか。と思いながら、ケイは考察をするために自分の行動を振り返った。

二度寝から目が覚めて、スライムと遭遇した時に攻撃らしき水を浴びた。そのせいだろうか?

「でも痛みとか苦痛はなかったんだよな〜、ただちょっと寒かっただけで。」

そのずぶ濡れになった体も髪も、サンサンと照りつけるいい感じの太陽ですでに乾いている。

なんならそれは昨日のことだ。

「そのあとは・・・あぁ、脱水症状になりかけたな。」

あの時の雨には助けられた。神の計らいかと思ったがムカつくのでスルーした。

ステータスによると状態も正常だから、風邪を引いたとかもなさそうだ。


「あれ、でもそしたら、そーゆー時はステータスになんて出るんだろ。

 体調不良? それともまんま風邪? いや、もしそうじゃない場合は・・・」


《ステータス》を見ながら考え込んでいたら、いつの間にか足が止まっていた。

それに気づいて、もう一度踏み出した時、ステータスの表記が変わった。


________

アズマ・ケイ

Lv.1

HP 96/100

MP 32/50

種族:ヒューマ

職業:無職

称号:放浪者

状態:正常

________


変化したのはHPとMPの数値だ。

現在、《ステータス閲覧》以外の魔法やスキルを使ってないことから、ステータスを長時間表示するのはMPを消費するのだろう。今度からは必要以上に表示しないようにしよう。

「技や補助系以外のスキルはMP消費がないのがゲームの定番なのに、この異世界はなかなかシビアだな〜」

やれやれ、とため息をついて、水筒からさっき出した残りの麦茶を飲む。


「もしかしてこのHPって・・・疲労もカウントされるのか?」

起きた時に確認しとけばよかった、と少し後悔しながら、もう見ることもないとステータスを閉じた。


「今は歩くしかない。

・・・このセリフ何度目だよ、クソ野郎。」








かなり歩いて、汗も出てきた。天気はいい。昨日よりも雲は少なく、雨の気配もない。

「次の雨ではぬれたくないけど・・・傘もないしな。」


一旦休憩して、休もう。その場に座って、『ウォーター』で麦茶を出して飲む。

一度この剣を試してみようか。暇だし、スライムくらいなら簡単に倒せそうだ。

いや、まだ見ていないだけでスライム以外もいるかもしれない。

さっきから遠くにチラチラと見かけるスライムも、もうなんだか当たり前みたいになってきたけど、、

あれも一応魔物だろう。

いつまでもレベル1じゃ心許ない。


あれから結構歩いた。

もう一度ステータスを見てみよう。


「《ステータス》・・・・・・あ、やっぱ減ってる」


________

アズマケイ

Lv.1

HP 80/100

MP 25/50

種族:ヒューマ

職業:無職

称号:放浪者

状態:疲労(中)

________


HPとMPがそこそこ減っている。攻撃は受けてないのでやっぱり疲労での減少があるらしい。

気になっていた状態の欄は疲労になっている。ぶっちゃけ、昨日と今日、歩き通しで足がパンパンだ。かなりしんどい。


「これで疲労(中)か・・・。大でもいいだろこの疲れは・・・

 にしても、水筒の量の麦茶の消費MPは1回5程度か。量によっても変わるのかな。」


そこはまた追々試すとしよう。

今はただ、休みたい。

時刻はもう夕暮れで、空は赤くなっている。

太陽の動きが昨日より早くなっているのは、もう知らんふりした。



雨の音で目が覚めると、全身ずぶ濡れで少しうんざりした。

すぐに上がった雨のあとは相変わらずの青空だ。太陽は昨日目覚めた時と同じ位置にあった。


硬めのパンを少しちぎって、麦茶と一緒に口の中でふやかしながら食べた。

咀嚼できないわけじゃないが、なんとなくだ。

麦茶の香ばしさがパンの甘さをさらに引き立てていて素晴らしい。


あの土砂降りの中でも鞄の中身は一切濡れてなかったのは今更だが神に感謝したい。

言うなれば、地球の時もカバンにそんな機能が欲しかった。

脱いだTシャツとジーパンを広げて乾かしてる間、パーカーを着た。どちらも濡れているが、誰もいないからって裸になるのは抵抗がある。

カバンを枕に、起きたばっかだけど2、3時間ほど休憩した。

空を眺めて少しうたた寝もした。夜には見かけないが、昼のうちは結構スライムがいる。

スライムが怖くてあまり寝れなかったが、どうやら大丈夫だったようだ。

乾いた服を着ると気分は少し晴れ、

体力が回復すると、HPも回復していくのがわかった。HPが完全に回復すると、MPも少しずつだが回復するのもステータスで確認した。



「このスキルの《ブレンド茶》ってなんだ?」

歩きながら疑問を頭に浮かべた。

「スキル欄にあるってことはスキルなんだよな?

試してみるか。」


腕を前に出して《ブレンド茶》と呟くと、手元からまるでポットから注ぐようにチョロチョロと茶色の液体が流れた。

慌てて水筒を取り出して、中に注ぐ。

もういいかな、と魔力を意図的に抑えると、液体の流れは止まった。

ステータスを見ると、水筒を満たした時よりMPは減っていなかった。

「次から飲み物は《ブレンド茶》で出そう。」


ケイは少し得をした気分だった。



誤字、違和感などありましたらお教えください。

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