1 魔王、告白される。
――――それは、ちょっとした気まぐれだった。
俺は魔王。
世界を支配して頂点に立つ者。
・・・などと言ってはいる物の、ぶっちゃけ世界の支配とかどぉ~でもいい。
先代の魔王、つまり俺の父親が死ぬまで俺に言い聞かせてきた言葉をただ言っているだけに過ぎない。
周りの魔族達もその言葉を信じ切って俺に忠誠心を誓う者もいるが、正直気が滅入る。
俺の先祖は代々世界の支配を目指して人間と何百年もの間争い続けているが、あと一歩という所でどうしてもすべてを支配しきれないのだ。
人間達をあと一歩まで追い込んでいながらも最後には敗北してまた領土を取られる。
侵略しては取り返され、また侵略する。
歴史を学べば、この世界は同じことを永遠に繰り返していた。
それでは何故、歴代の魔王があと一歩の所まで侵略して尚、世界を支配しきれないのか。
それは魔王の宿敵とも呼ばれる人材が人間側に存在するからだ。
我らが魔王の宿敵、それを勇者と呼ぶ。
勇者とは神が気まぐれに人間に渡した聖剣に選ばれた者の事を言う。
地面に突き刺さった神々しい聖剣を引き抜けた物は神に与えられた力により絶大な能力に目覚める。
その力により歴代の魔王達は勇者の手によって敗北して歴史を繰り返す。
勿論、歴代魔王達が決して弱いわけではない。
世界を支配しようとするぐらいの発想があるのだからそれこそ同族にも恐れられるぐらいの強さを持っている。
だから勇者側も魔族をすべて倒しきれずに寿命を迎える。
そしてまた新たな勇者と魔王が現れる。
そんな繰り返される歴史を学んでいて思った。
歴代の魔王達は何故か勇者が誕生すると最初は部下に任せて倒そうとしているのだ。
誰もが皆、最初っから聖剣を引き抜いたばかりの成り立て勇者を倒しに行かない。
聖剣を引き抜いたばかりの人間など、生まれたばかりの赤ん坊のように力の制御が出来ないはずではないか?
だから俺は、部下に任されるわけでも、魔王の次に強いと言われる四天王に任せる訳でもなく、魔王である俺が、聖剣を引き抜いたばかりの勇者を倒しに行こうと考えた。
そうすれば、あとで面倒くさい宿敵に世界の支配を邪魔される事無く歴史を繰り返すことなく歴代魔王達の無念を晴らせるのではないだろうか。
俺は魔王城の玉座に【ちょっと出かけてくる!】と書置きを置いて、ここに来た。
今回の聖剣に選ばれた勇者の故郷に。
さぁ勇者よ。
魔王が来たぞ。
繰り返される歴史を終わらす為に、歴代魔王の念願を叶える為に、決着をつけようじゃないか!
・・・と、そんな思い付きの気まぐれがダメだった。
「好きです! 私の恋人になってくださいッ!!」
勇者と戦いに来たハズなのに、俺は今、何故か人間の女に求婚を迫れていた。