父の優しさ、母の優しさ
家に帰って来たクロノは、父モレルと母レンシアに役場でのスキル発現のことを話した。
「そうか・・・。だがな、クロノ。お前の頑張りは、決して無駄ではないんだ。ほら、見てみろ。」
そう、父が言うと、クロノに対してすぐ脇に立てかけてあった木刀に手をかけ、振り上げる。
クロノは咄嗟に魔法を展開した。
自身が使える防御魔法、プロテクションである。
「な?そういうことだ。お前が努力したものは、ちゃんとお前の力になっている。成りたい職になれなかったからなんだ。」
そう、父がクロノの瞳をまっすぐ見て、問いかけてくる。しかし、クロノはまだ納得がいってなく、口ごもりながら、父に細やかな抵抗を見せる。
「でも・・・。こんなスキルじゃ・・・魔物とまともに戦えないよ。」
これは、ただの駄々だ。その言葉には何の意味も無い。
そこで、モレルはクロノの肩に手を置き、優しい面持ちでクロノの目を見て言った。
「ならば、お前が初めての人になればいい。やってはいけない事なんてないんだ。戦えるサポーターが居てもいいじゃないか。魔法を使えるサポーターが居ても良いじゃないか。良いか、クロノ。お前は自由なんだ、1つのことに、囚われてはいけないよ?」
クロノの心に、ストンと、今の言葉が落ちていった。今まで、つっかえていたモノと一緒に。
「話は終わった?さぁお昼にしましょう。クロノ、今日はあなたが好きなホロ豆と山豚のシチューよ。」
母レンシアが、タイミングを見計らって、二人の話に入ってきた。どうやらご飯のようだ。その顔は、とてもにこやかにクロノを見ていた。
「うん。ありがとう、母さん。それに、父さん。」
クロノは、恥ずかしくなり、少し俯きながら食卓の席へと着いた。
クロノはそこで、ふっと先ほどの御祖父ちゃんの墓石でのことを、父、母に伝えるか逡巡した。
結果、クロノはそのことを伝えることなく、また、父、母の声、温もりは、この時をもって、永遠に届かないものとなってしまったのであった。
温かい食事を食べ終え、クロノは支度をする。そうこれもいつもの日課となっている冒険者ギルドへ行き、サポーターのお仕事をする為である。
サポーターにも2種類あって、まずはフリーのサポーター。これは、クロノのように、毎日違う冒険者に付いて行き、その日のお金を稼ぐサポーター。安定的ではないうえに、競争率も高い。
次が、専属サポーター。これは、冒険者ギルドに登録されているパーティから指名が入り、交渉の結果、そのパーティ専属でサポートすることになっているサポーターのことである。このサポーターは、毎月の指名料に加え、パーティでのお宝の分配法も、ギルドが噛んでいるので、しっかり貰える。
フリーのサポーターは、その辺も曖昧なので、他のパーティの者との多少の差異なら御の字で、酷い時は相場の5分の1という時もある。
ギルドの待合室で、コップについできた水(5ギル)を飲みながら、クロノは良いパーティはないか、見定めていると、
「おお!君、そこの、浅黄色のローブの君!」
と、声がかかる。如何やら、クロノの事らしい。
声をかけてきたのは、金髪を短く刈り揃え、如何にも前衛職です、といった出で立ちの、人好きのしそうな顔立ちの青年であった。
読んで下さってありがとうございます。短く区切ってしまってすみません。もし見難かったら、ご意見ください。あと、タイトル変えました!まだ、ごく一部の人しか見てないから、良いよね?タイトル少しいじっても・・・