クロノ・セントフィールド
クロノが向かった先、それは・・・。
村から、少し離れた小高い丘の上、共同墓地。ここには現在、クロノの御祖父さんである「ランドル・セントフィールド」が眠っている。
毎日の日課になっている、御祖父さんへの献花を終え、手を合わせる。
「御祖父ちゃん、ダメでした・・・。花形の前衛職のスキル、発現しなかったです・・・。」
それ以上、言葉を紡ぐことができなかった。詰まってしまったのである。
御祖父さんは、ベテラン冒険者であり、前衛職である戦士。花形であった。
冒険者には、階級というものが存在し、その段階は7段階評価となっている。低いほうからF、E、D、C、B、A、そして、最高階級であるSという順番で、ランクの位置付けがされている。
クロノの御祖父さんであるランドルはB。ベテラン冒険者の中でも、頭一つ抜きんでた能力を持っていた。
そんな、尊敬する御祖父さんを見て育ったクロノは、憧れ、「いつか御祖父ちゃんのようになる」という目標の元、今日まで修行を積んできた。
目標である御祖父さんが亡くなったのは、6年前。
村に、魔王の配下と名乗る魔物が現れ、村の人々を蹂躙しだしたのだ。あるものは、足を折られ逃げられないようにされ、嬲られた。あるものは、両腕を引きちぎられ、滴り落ちる血を、一滴残らず飲み干された。
そんな魔物たちの前に躍り出たのが、ランドル・セントフィールドと、その仲間たちである。
魔獣を得意武器である戦斧で引き裂き、仲間の魔法で焼き払っていく。大体の魔獣を斃した、そう思い、油断した瞬間だった。ランドルの右肩は、肩口より齧り取られてしまった。魔王の配下と名乗った魔獣が、仲間である魔獣の死体の下に隠れ、機会を窺っていたのだ。
ランドルは、自身の奥義であるスキルを使い、魔獣を足止めし、仲間に自分ごと魔法を打つように促した。
結果、村には平和が戻った。「英雄」の命と引き換えに・・・。
ふっと、父親から聞いた、御祖父ちゃんの街を救った英雄譚を思い出し、涙を滲ませる。
「御祖父ちゃん、ごめんね。お爺ちゃんの墓石の前で誓った、仇を討つっていう約束、守れないかもしれない・・・。」
涙があふれて、止まらなかった。
そう、魔王の配下と名乗った魔獣、そいつは逃げてしまったのだ。相当な深手を負って。
御祖父さんが亡くなった日、墓石の前で打ち立てた誓い、仇討ち。それが、どうやら果たせそうにない、その焦燥感から涙が溢れてきたのだ。そして願う。手を、血が出るほど握りしめ、御祖父さんの墓石の前で。
「僕に、力が欲しい・・・。」
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