三階と指定医のアナウンス
「痛っ」
俺は、傷ついた足を引きずりながら階段を昇る。
「大丈夫? 隼人……」
「ごめん。心配かけて」
「ううん。けど、本当に出れるのかな。ここから」
岬は、不安な声を漏らす。
「行って見なきゃわからないな。少なくとも一階、二階はないから上階に昇ってみないと」
「そうだね。先輩たちも探さないと……」
「あぁ」
俺は、岬と話ながら三階に到着した。
到着した三階は一階、二階とは違い、通路も清掃され清潔感のあるフロアになっていた。
「綺麗だね。三階」
岬は、感想を漏らす。
俺は、逆に怖くなっていた。
廃病院であるはずのこの病院で綺麗な事に。
誰が、何のためにこのフロアを使用しているのか。
疑問は深まるばかりだ。
「一先ず、このフロアを調べながら四階に続く階段を確認しよう」
「そうだね」
俺と、岬は一緒に三階を歩き始める。
俺は、見取り図を確認する。
ここのフロアは一階、二階と同じ造りになっているが一点だけ違うところがあった。
それは、通路に2ヶ所の扉が存在する。
扉は丁度通路が半分ずつになるように左右対称に設置されていた。
俺たちは、そのひとつの扉の前まで到着する。
「ここの扉を越えれば、階段だな」
扉を確認すると、扉の横には日本語が刻まれたダイアルがある。
ダイアルを確認する。
『こなごがてんにくるはつこ』
「何だろう。これ?」
岬は、俺に話しかけてくる。
「わからない」
俺は、扉を手をかける。
「ガチャ」
扉が開く。
どうやら鍵はかかってないようだ。
「先に進んでみよう」
俺は扉をくぐり、前に進む。
この先にある階段の場所に向かうが見取り図の場所に到着すると俺は驚く。
「ない……」
「どうしたの?」
岬が心配そうに尋ねてくる。
「階段がない……」
俺は、見取り図を見比べ間違いがないか確認する。
しかし、確認しても間違いは無さそうだ。
「どうする?隼人……」
「一先ず、先に行ってみよう」
「うん……」
俺たちは先に向かい、もうひとつの扉に到着する。
もうひとつの扉にも同じように、日本語の刻まれたダイアルが扉の横に設置されている。
『こなごがてんにくるはつこ』
俺は、扉を回す。
やはり、鍵はかかってないようだ。
「先に進もう」
「うん……」
どのくらい歩いただろう。
配置図通りに歩いているが階段にたどり着かない。
「ねぇ、さっきからくるくる廻ってるだけじゃない?」
「……」
俺たちは、回りを確認する。
白い壁で白い扉の部屋が並んでいるので区別がつかない。
「それじゃ……」
俺は、包帯から染みだす血を指に付け壁に擦り付ける。
「もう一度、歩いてみよう」
「うん。わかった」
俺たちはもう一度階段に向かい歩き始める。
やはり、数分歩いた頃だろうか先ほど壁に擦り付けた赤い印が同じ場所に現れる。
「やっぱり、同じところを回っているだけ……」
「あぁ、そうだな」
俺は、岬の言葉を肯定する。
「それに誰にも会わないし、少し怖い」
「あぁ……」
ナースだったり白衣の医者だったり会わないことに越したことはないと俺は思ったが、これだけ会わないのも不気味に感じた。
そう思っているときだった。
『キーン、コーン、カーン、コーン』
静かな通路に、学校のチャイムのような音が鳴り響く。
「何だ!!」
「……」
俺は、チャイムの音に驚き、岬は俺の袖を掴む。
『あー、あー、マイクテスト、マイクテスト』
女性の声が通路内に響く。
『大丈夫ね。それじゃあ……』
少し間が空き 、話が始まる。
『はじめまして。水野隼人くん。姫野岬さん。私はここで指定医をしている者です。どうぞ宜しく』
「指定医って……」
岬は尋ねてくる。
「確か、精神患者の保護室や隔離室に送る指示や判断をする人だと思う」
俺は、岬の問いに答える。
『さて、貴方達は私の判断で隔離する事にしました。貴方達はこのままこの通路をさまよって頂きます』
「おい、どういうことだ」
俺は、アナウンスに叫ぶように言葉を放つ。
『そのままの意味です。私は、貴方たちを重篤患者として認識しています。ここから出ようとオコガマシイこと考えるようなので。そのため貴方達はここで永遠にさまよって頂き、出ようなんて事を考えさせないようにシテサシアゲマスネ』
放送の女性の声色が少し変わる。
『そのまま私も眺めているだけでもヨイノデスガ、少しでも貴方たちの希望があるように出られるチャンスを差し上げましょう。貴方たちがこのフロアの謎を解ければここから解放してあげましょう』
「解放? チャンス? 何でそんな事をする」
俺は、アナウンスの女性に問いかける。
『決まってるじゃないですか……』
アナウンスの女性は、また間を空け答える。
『キボウガ、ゼツボウニカワルスガタガ、ダイスキダカラデスヨ。ソウ。アナタタチトイッショニキタ、オトコノヨウニ。アハハハハハハハハハハハハハハハ』
ブツンと放送が途切れる。
「……」
俺は、言葉を失う。
「ねぇ、隼人……私たち」
「大丈夫。まだ、諦めない」
「けど……」
「指定医は言っていた。ゲームだって。なら、そのゲームに乗ってやろう。どうせこのままじゃ何も変わらない。それにあの男ようにって言っていた。あれって……」
「佐久間先輩のこと!!」
「多分。先輩がここにいる。探して、合流しよう」
「うん」
俺たちは、佐久間先輩の救出とゲームに参加する事になった。




