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エピローグ

「……さん。聞こえますか」

遠くから、声が聞こえてくる。

俺は、その呼びかけにゆっくりと目を開く。


「水野さん」

目を覚ました先には、ピンク色の服を着た女性が俺を見下ろしていた。


「うわぁああああ」

「大丈夫ですか? 水野さん。ここは病院ですよ。落ち着いて下さい」

「えっ、病院……」

俺は、廃病院のことを思い出し気が動転していた。

「す、すいません……」

「いえ、大丈夫ですよ」

慣れているのか、ナースは俺の腕に刺さる点滴のバッグを交換する。

「どのぐらい寝ていましたか」

「約三日ほどですか。かなり衰弱していて結構危なかったんですよ」

「そうですか……。ちなみに俺はどうやってここに……」

その後、ナース服の女性が経緯を話してくれた。

俺の家族が、夜に外を出て帰りを心配して警察に連絡。

その後、捜索を開始して一か月俺たちは行方不明になっていたこと。

捜索打ち切りの間際、学校でメモ書きが見つかり、俺の名前の他に、岬、佐久間先輩、須賀先輩、の三名の名前がありそこには廃病院の名前が書かれていたこと。

そこに向かうと、俺と岬が病院の前に倒れていてこの病院に運ばれた。

「佐久間先輩……」

俺は、佐久間先輩に感謝した。

もし、何かあった時に多分メモを残していたのだ。

それがなかったら、今頃俺達もと思いハッとする。

「そういえば、岬は!!」

俺は、ナースの女性に詰め寄る。

「落ち着いて下さい。水野さん。大丈夫ですよ。今、別の病室で先に目を覚ましています。岬さんのご家族も駆けつけて岬さんの面会に来ています」

「そうですか。よかった……」

俺は、安堵する。

「しかし……」

ナースは重い口を開く。

「どうやら、記憶の混濁があるようです。そのため当分は検査入院が必要になります」

「そうですか……」

ナースに相槌を打つと、


『ガラガラガラ』


病室の扉が開く。

扉の先には、スーツ姿の年配の小太りの男と隣に若い男が並んで病室へと入ってくる。

「目が覚めましたか? 水野隼人さん」

「ちょっと、水野さんは今目覚めたばかりなんですよ」

ナースの女性が俺の前に立ち、男たちの進行を制止する。

「誰ですか? あなた方は」

俺は、男たちに問いかける。

「私たちは、こういうものです」

若いスーツ姿の男が、胸ポケットから黒い桜の紋章のついた手帳を俺の前にかざす。

「警察……」

「水野さんが目覚めたばかりでは分かります。しかし私たちも現在捜査が止まってしており水野さんの協力が必要なんです」

年配の小太りの男性が俺に話しかける。

「しかし!! 水野さんは……」

ナースの女性が警察の二人との会話を遮り、

「わかりました」

俺は、警察の言葉に承諾する。

「水野さん……」

ナースの女性は、警察に頭を下げ病室を後にする。

「さて、それでは水野隼人さん。色々とお話を聞かせていただきますよ」

「はい……」


俺は、病院に言った経緯(いきさつ)

先行していた取材カメラマンの遭遇。

病院内で行われていた実験の数々。

そしてその病院がら脱出したこと。

俺は、身に起こった事を残さず警察に話しす。


「不死の実験ですか……。信じられるような話ではないですね」

「しかし、話せる事は話ました。信じるも信じないもあなた達の勝手ですが……」

「いや。あなたの話で興味深い話はあります。それは須賀美里さんの事です」

「須賀先輩? 」

「あなたの仰る通り、あの病院は須賀一族の持ち物で父親、母親はすでに行方不明になっており須賀美里さんは一人暮らしをしていたそうなのです」

中年の男が、須賀先輩の事を話始める。

「しかし、一人暮らしをしている先に私たちが訪問したところそこには建物なんてなかったんですよ」

「えっ」

俺は、あっけにとられる。

「さらに言うと、その取材人たちも建物の立ち入りのために、須賀美里さんに接触されていることも確認されております」

「つまり、今回の事件は須賀先輩が主導で行っていて取材人も俺たちも巻き込まれたと……」

「あなたの話には、信じられない事もあるのですが全てを疑うわけではなく部分部分で私たちの捜査につながっている」

「つまり、警察は須賀先輩を疑って捜査していた。しかし、現在須賀先輩は行方不明」

「あくまで、一つもの可能性です。私たちはあなた方の事も疑ってはいます」

「俺たち……、岬も事も」

「まだ、見つかっていない佐久間さん、カメラマンの加藤さん私たちの捜査は始まったばかりですから」

「警部、それ以上は……」

若いスーツ姿の刑事が言葉を遮る。

「おっと、いけない。話過ぎたか」

刑事はそう話すと背中を向け、病室の扉に向かう。

「ちょっと待って。行方不明って……。あの病院の中心ある閉鎖病棟を調べれば……」

「水野隼人さん。あなたは何を言っているのですか?

「えっ」

刑事は振り返り、俺に投げ捨てるように伝える。


『あの病院に、あなたの言う建物なんてないですよ』


※※※


時間が過ぎて、退院し日常に戻っていた。

警察の取り調べ後、俺はすぐに病院出ることができた。

俺は、その足で廃病院に向かった。

退院してすぐに向かうことに少し罪悪感を持ちながら俺は現地に到着する。

俺は、刑事の話が信じられなかったからだ。


『あの病院に、あなたの言う建物なんてないですよ』


俺は、信じられなかった。確認せずには居られなかった。

そして、俺は確認して愕然とする。

「嘘だろ……」

その場所には、すっぽりとその建物はない。上を眺める。

四階の通路の個所を確認する。しかし確認するが、この病院は3階建てである。


そこには通路など無く、俺はぞっとしていた。

「俺は、あの夜、どこを歩いていたんだ」

一回り確認したが、俺はそこにあったはずの建物を探し出す事が出来ず廃病院を後にした。


※※※


その数週間後、岬が退院になった。

記憶の混濁があるとなり、俺よりも長く入院していた。

俺は、病院の入り口で岬の到着を待っていた。

数十分待つと、母親に連れられた岬が入口に向かって歩いてくる。

「岬……」

俺は、自動ドアの開いてすぐ声をかける。

「隼人……」

「大丈夫か? 岬」

「うん、大丈夫だよ。隼人……。ただいま」

「おかえり。岬」

俺は、岬ににっこりと笑いかけた。

「水野君。ごめんなさい。まだ本調子じゃないようで……」

岬のお母さんが俺に声をかける。

「すいません」

「それじゃ、いくよ。岬」

「うん……」

俺は、二人で歩く岬と岬のお母さんを見送りながらその場を後にした。

その足で俺は、約束を果たしに行くことにする。


※※※


「ここか」


俺は、住宅街の中にあるアパートの前に立っていた。

そこには、表札がある。


『加藤』


そう、ここは加藤さんのアパートの前だ。

「おにいちゃん。お家に何か用?」

俺は、下を振り向く。小学生ぐらいでどうやら加藤さんの子供らしい。

「ごめんね。お母さん今仕事でお父さん今遠いところに行ってるから私しかいなくて……」

少女は、さみしそうな顔をする。

「そうなんだ。ごめんね。突然訪問しちゃったからまた今度くるね」

「うん」

「あ、そうだ。そうしたらお願いがあるんだけど」

「おねがい? 」

「この手紙を君のお母さんに渡してもらえるかな?」

簡素な封筒を少女に渡す。

「これを渡せばいいの?」

「あぁ、お願いできるかな?」

「わかった。渡しておくね」

「ありがとう。それじゃあお邪魔したね」

「ううん。また来てね」

「あぁ……」

俺は、その場を後にする。今後もう二度と来ないであろうアパートを。

「約束……。果たしましたよ。加藤さん」

その場を足早に後にした。


※※※


俺は学校に登校した。

学校では、噂で持ちきりだった。

オカルト研究部、佐久間先輩と須賀先輩の失踪。

俺も部員の為、話を聞かれたが、

「知らない」

と何回も伝える。

学校側から口止めされていた。

岬も、後に続いて学校に登校するようになる

「知らない」

他の女子に囲まれていた。

多分俺と同じ話をされているようだった。

人の噂も七十五日という言葉があるように、そんな質問は最初だけで他の生徒も興味がなくなったように質問されることも少なくなる。

いつの間にか、俺と岬はいつもの日常に戻っていた。

オカルト研究部は、あの事件をきっかけに廃部になった。

二人の行方不明者を出したのだ。

仕方ないだろう。

俺は、自宅に集めていたオカルトの本、グッズも処分した。

あの事を思い出すためだ。

そして、月日は流れ俺たちは高校を卒業した。

卒業式が終わった後、俺と岬はある場所に赴いた。

そこは、廃病院の前だった。

俺は花束、岬は佐久間先輩の好きだった飲み物を持ち廃病院の前に供える。

俺は、しゃがみその場で手を合わせる。

岬は俺の後ろに立ち、手を合わせているようだ。

「佐久間先輩。俺たち卒業できました。ありがとうございます」

「ありがとうございます……」

俺と岬は感謝を言葉にする。

俺は立ち上がると、その場を後にする。

「行こうか。岬」

「うん」

俺はその場を後にしようとした時、あの日の脱出の事を思い出していた。

あの時、須賀先輩が最後に話していた言葉だ。

「なあ、岬」

「何? 隼人」

「あの時、須賀先輩なんでお前に幸せになんて言ったんだろうな」

「何? 急に」

「だって、須賀先輩はあの場にとどまってほしかったんだろ。あんな言葉言うことが何か不自然だなと思って」

「好きだったんじゃない?」

「誰が?」

「須賀先輩が」

「そう」

「何でそう思うの?」

「女の勘」

「何だそれ」

俺は、そんな会話をして歩いていた。

そして、俺は岬との分かれ道に差し掛かる。

「それじゃ。岬。また今度」

「じゃあね。隼人……ん」

俺と岬はその場を後にしようとする岬の方へ振り返る。

それに気づいたのか、俺の方へと向き直す。

「どうしたの? 隼人?」

「いや……。何でもない」


夕日に照らされる岬は少し笑っているように見えた。

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