再会
俺たちは、扉を開くとそこは一階、二階と見慣れた医療用具が散乱したフロアが一面に広がっている。
「どうやら、もうそろそろ本番かな」
「うん」
俺と岬は息をのむ。
『キーン、コーン、カーン、コーン』
聞きなれたアナウンスが鳴り響く。
『流石ですね。隼人さん。岬さん。まさか、ここまで来られるなんて思いませんでした。あのまま、間違えてイッショウイレバヨカッタノニ。本当にコリナイデスネ』
「そんな事より、こんなこといつまでもやらせる気だ」
俺は、アナウンスにまた怒鳴りつける。
『そうですね。一生このまま解き続けて貰うのも悪くありませんがフェアーじゃないので次でサイゴニシマショウ』
「最後だって」
俺は、アナウンスの言葉に相槌を打つ。
『ええ。ここのフロアをクリア出来ればアナタタチノ勝ちです。それで晴れて四階に進めます。クリアデキレバネデスガ』
「どういう事だ」
『さぁ、先にススメバワカリマスヨ。ソウ先にススメバ。アハハハハハハハハハハハハハハハ』
「ブツン」
また、アナウンスは唐突に途切れる。
「くそ。何が目的なんだ」
俺は、舌打ちをつく。
「行こうか……隼人。早く佐久間先輩を探そう」
「そうだな」
俺達は、扉をくぐり新しいフロアへ足を踏み出す。
「ドン」
扉は、自動的に締まりノブを回すがやはり前と同じで開くことがなかった。
「まぁ、そうなるな」
「ねえ、隼人。あれ……」
俺は正面を見る。
すると、部屋の前には2つの扉と、扉との間には立て看板が置かれていた。
俺は、立て看板をを眺める。
そこにはこう書かれていた。
『ここは、二択の間になります。問いに応じて扉を開け、入室ください。間違った解答の扉に入室された場合、その扉の部屋から出られなくなります。お気をつけ下さい』
「問いに応じて? これかな。隼人」
俺は、説明文の後に書かれた問いに目を向ける。
『三角形の面積を求める公式は?』
『A :底辺×高さ』
『B :底辺×高さ÷2』
「何だ。これ?」
「ねえ、2つの扉を見て」
俺は、扉を確認する。片方にはA、もう一方にはBと書かれている。
「答えの扉に入れって事だな」
「答えはBだけど」
「……だな。どうせこのまま手をこまねいていても仕方ないし、入ろう。」
「そうだね。行こう」
俺たちは、Bの扉のノブを手にとり回す。
「ガチャ」
扉を開けると、そこには広いフロアが広がり、中心部には円形のガラステーブルが設置され、奥には扉が確認できた。
俺たちは、ガラステーブルに歩み寄ると紙が置かれこう書かれている。
『正解です。先にお進み下さい』
「……なんか、拍子抜けだね」
「あぁ、今までの事を考えると……」
俺たちは、一抹の不安を感じながら先の扉に向かう。
扉のノブを回すと、そこにはA、Bの扉があり同じように立て看板が設置されている。
「また、何か書かれているよ。隼人」
「あぁ」
俺は、立て看板を確認する。
『貴方は、男ですか。女ですか』
『A :男』
『B :女』
「これって……」
「別々に入れって事……かな?隼人」
「ここで別れるのは、危ない気がするが……」
「けど、間違ったらそのまま出られなくなるんだよね」
「……ルールではそうなるな」
「隼人、別々に入ろう」
「!! けど、岬」
「不安はあるよ。けど、何かあったら隼人、助けてくれるよね」
俺に、岬はニコッと微笑みかける。
「あぁ、勿論だ」
俺はAの扉、岬はBの扉のノブに手をかける。
「じゃあ、しばしの別れだね」
「ほんの少しだけな」
俺たちは、ノブを回し別々の部屋に入る。
扉に入ると、同じように中心部にガラステーブルが置かれ、先には扉がある。
俺は、ガラステーブルを確認する。
『正解です。先にお進み下さい』
俺は、確認すると先の扉に向かい扉をノブを回し扉を開ける。
扉の先は、また同じく設問のある部屋が現れた。が、一つだけ違うことがあった。人影がある。久しぶりに会う姿に俺は声をかける。
「佐久間先輩!!」
「!! 隼人くんか」
俺は、丸眼鏡をかけた先輩に歩み寄る。
「無事だったんだね。良かったよ。隼人くん」
「……僕も心配しましたよ。佐久間先輩」
「それで、岬くんや美里くんは」
「岬は隣の部屋に……」
俺が、伝えようとするときだった。
「ガチャ」
俺の入ってきた扉とは別の扉が開く。
「隼人……」
「良かった。無事で」
「美里くん、無事だったか」
「!! 佐久間先輩」
「どうした? 美里くん。雰囲気が違うような……」
「あっ、ごめんなさい……私、姫野です…」
「!! 美里くんなのに、岬くんに? どうなってるんだ」
「俺たちにも、分からないんです。先輩……。けど、本当だと思います」
「色々と、ごめんなさい。先輩……」
「んんん……」
丸眼鏡を手にかけながら唸るが、
「分かった。岬くんでいいんだね」
「はい、佐久間先輩」
「なら、後は美里くんをだね。隼人くん」
「……そうですね。先輩」
先輩を含めた俺たち三人は、扉の前にある立て看板を確認する。
『貴方は、この閉鎖病棟から抜け出しますか』
『A :閉鎖病棟から抜け出す』
『B :閉鎖病棟で一生を過ごす』
立て看板は、無情な二択を示していた。




