ゲーム②
「さて、戻るか。岬」
「そうだね……隼人」
俺と岬は、扉から部屋へ戻った。
部屋に戻ると、部屋に備え付けられている机に向かう。
「机にあるものって、写真立てと何冊かの本、卓上本立てぐらいだな」
俺は本のタイトルを確認する。
『水明館 ~8人目の訪問者~』
『消防署の苦悩 火災からの救出5』
『あぁ、懐かしき木霊の声』
『海賊紀行 隠された金銀財宝』
『月光花 美しき一人の女』
『不動産のすすめ 土圧編②』
『非日常の学校生活 ~学園七不思議編~』
本には一貫性がなく、内容もバラバラだった。
「机の引き出しは、鍵が掛かってて開かない……」
岬は、取っ手に手をかけ引くがガチャガチャと音をたて開く様子はない。
取っ手の横には鍵穴が設置されている。
「回りをもう一度、探してみよう」
「わかった」
俺たちは手分けして部屋の回りを探す。
「何もないな……」
「そうだね。けど、ここにいた人は本当に几帳面だったんだね」
「そうだな。タイトルの名前順に並べて……」
俺は、その言葉に反応する。
「何か解かったの? 隼人」
「もしかしたら……」
俺は、机に向かい無造作に置かれた本を机にある卓上本立てに並べる。
『あぁ、懐かしき木霊の声』
『海賊紀行 隠された金銀財宝』
『月光花 美しき一人の女』
『消防署の苦悩 火災からの救出5』
『水明館 ~8人目の訪問者~』
『非日常の学校生活 ~学園七不思議編~』
『不動産のすすめ 土圧編②』
「バコン」
本棚に納められた本の一部が飛び出す。
「やっぱり」
「どうして解かったの? 隼人」
「ここに並べられた本棚を見て気づいた。ここの本棚の本は全て五十音順に並んでいた。もしかしてって思って」
「すごいね。隼人」
「それじゃあ、本が飛び出した場所に行ってみよう」
「うん」
俺たちは、飛び出した本の棚を確認する。
すると、そこには電子番号を打ち込む金庫が置いてある。
金庫のデジタル表示の上には赤字でこう書かれている。
『初めの証を捨て、数字を打て』
「また、謎だね」
「あぁ、そうだな。けど、数字って今までなかったよな」
「そうだね。他に調べても何もないと思うけど……」
「くそっ」
俺は、舌打ちを打つ。
「……」
岬は、金庫のデジタル表示に書かれた赤文字を眺めていた。
「どうした? 岬」
「間違ってるかも知れないけど、これってタヌキみたいなことかなって思って……」
「タヌキ?」
「そう。よく暗号とかでタヌキの絵が書かれてて、『た』を抜いたら文字が現れるのあるでしょ。もしかしたらそれかなって」
「けど、ここには絵なんて書いてないぞ」
「『証を捨て』ってところ。もしかして『あ』と『か』と『し』を省けってことじゃないかな」
「そうか!! ありがとう、岬」
「分かったの? 隼人」
「あぁ、机に戻るぞ」
俺と岬は、机に戻り並べた本を確認する。
『あぁ、懐かしき木霊の声』
『海賊紀行 隠された金銀財宝』
『月光花 美しき一人の女』
『消防署の苦悩 火災からの救出5』
『水明館 ~8人目の訪問者~』
『非日常の学校生活 ~学園七不思議編~』
『不動産のすすめ 土圧編②』
「この本のタイトルの初めの文字を取り出すと『あ』『か』『げ』『し』『す』『ひ』『ふ』になる。そして、ここからさっきの『あかし』を省くと『げ』『す』『ひ』『ふ』になる。そしてその本を並べるとこうなる」
『月光花 美しき一人の女』
『水明館 ~8人目の訪問者~』
『非日常の学校生活 ~学園七不思議編~』
『不動産のすすめ 土圧編②』
「そして、本のタイトルの中に含まれている数字を取り出すと……」
「あっ、1872の数字が出てくる」
「そう、つまり……」
俺は、金庫のもとへ戻り、『1872』数字を打ち込む。
「ガチャ」
金庫が開く音がする。
俺は、金庫を開く鍵が一つ入っていた。
「隼人。これって、多分引き出しの鍵だよね」
「あぁ、開けてみよう」
俺たちは、再び机に戻り開かなかった引き出しの鍵穴に鍵を差し込む。
「ガチャ」
引き出しは音がし、取っ手に手をかけ引くとそこには一枚の紙と一冊の本が入っていた。
紙にはこう書かれている。
『土から日は昇り、日は土に戻る。それを何度も繰り返す』
本のタイトルを確認する。
『地を統べる神の降臨⑥』
「また、謎……だね。隼人」
「くそ、まだあるのか」
俺は、新たに追加された紙と本を眺め考え込む。
「土から日は昇り? 東からはよく言うけど……」
岬は首を傾げる。
「そうだよな。本来ならそう。けど、何かしら意味があると思うんだ」
「そうだね。それと新しく引き出しから出てきた本。卓上本立てにはもう入らないね」
「後から使うんだろうけど」
「それじゃあ、まずは紙に書かれている事を考えよう。隼人」
「そうだな」
俺たちは、紙に書かれた文字を俯瞰する。
「解らないね……」
「……」
俺も解からず、答えることができなかった。
「少し、休もうか……隼人」
「……そうだな」
俺と、岬は床に腰を下ろし机に背中をもたれ掛かる。
「そういえば……隼人。もうそろそろ誕生日だね」
「何だよ、急に……」
「ごめん。ここから出られたら……お祝いできるかなって……。蝋燭立てたケーキを隼人の家族と一緒に食べるの……そして私は隼人のためにプレゼントを用意して……」
「……」
俺は、岬が涙ぐんでいる様子に言葉をかけることができなかった。
「何で、こんな事になっちゃったんだろうね……私、怖い……」
「……ごめんな。付き合いで来ただけなのにこんな事に巻き込んで……」
「!! そんなことないよ。私が来たかったから来ただけだから。ごめん……こっちこそ。そんなつもりはなかったの……」
「……」
「……」
沈黙が部屋を支配する。
「所でさ……」
俺は、沈黙に耐えきれず岬に話しかける。
「よく、俺の誕生日のこと覚えてたな」
「えっ? だってずっと一緒だし。それに覚えやすいから」
「覚えやすい」
「隼人の誕生日が今月の第4日曜日でしょ……。私は来月の同じ第4日曜日だから。毎年、曜日は違うけど……同じ週なんだよ」
「そっか。日にちで覚えていたから気付かなかった……」
俺は、言葉を止める。
「どうしたの……隼人?」
「……そうか」
俺は、卓上本棚を確認する。
「やっぱり」
「何か分かったの?」
「あぁ、ありがとう。岬」
俺は、岬にお礼を言うと、卓上本立てを並べ直す。
『非日常の学校生活 ~学園七不思議編~』
『月光花 美しき一人の女』
『消防署の苦悩 火災からの救出5』
『水明館 ~8人目の訪問者~』
『あぁ、懐かしき木霊の声』
『海賊紀行 隠された金銀財宝』
『不動産のすすめ 土圧編②』
「バコン」
別の本棚から本が飛び出す。
「また、本棚から本が。どうして? 隼人」
「ヒントになったのは岬の話していたことだよ」
「話していたこと?」
「ヒントはカレンダー。そしてこの紙に書かれたメッセージ。まず、この紙に書かれている『土から日は昇り、日は土に戻る。それを何度も繰り返す』は曜日を表しているんだよ」
「!! 土から日は昇りは、土曜日から日曜日になるってことで、その後は月曜日から金曜日を経て土曜日になる。日は土に戻るってことね」
「そう。そしてこれが曜日を表しているとしたら、卓上本棚の本を確認したらこうなる」
『非 (日) 常の学校生活 ~学園七不思議編~』
『(月) 光花 美しき一人の女』
『消防署の苦悩 (火) 災からの救出5』
『(水) 明館 ~8人目の訪問者~』
『あぁ、懐かしき (木) 霊の声』
『海賊紀行 隠された (金) 銀財宝』
『不動産のすすめ (土) 圧編②』
「本の中に曜日が隠れてる」
岬は本棚を見て、目を丸くする。
「そう、つまり曜日順に並べろって事だったんだ」
「じゃあ、本が出たところには……」
「また、金庫かな?」
俺は、先ほど本が崩れた場所に岬と向かう。
すると、そこには金庫はなく、赤い字でこう書かれていた。
『何千年も変わらず、母なる大地を作り出した奇跡の並びを示し、その数字を打ち込め。そこ道は現れる』
「これって……」
「多分次で入り口のパスワードが分かるみたいだな」
「けど、何千年も変わらないもの。それに奇跡の並びって一体なんだろう」
「この本を使うってことだろうな」
俺は手に持っていた本を眺める。
『地を統べる神の降臨⑥』
「じゃあ、あの卓上本棚に……けど、この本を入れる場所はもうないよ」
「そうだな。そうならあの本の中から一つ取り省くってことだな」
「取り省く? けど、どの本を……」
「何千年もかわらない……。奇跡の並び……」
俺は、思考を巡らせる。
「そうか。そういうことか」
「もう解ったの?」
「あぁ。合っているかは解らないが……」
俺は、卓上本棚に戻り、一冊を取り省く。
『月光花 美しき一人の女』
「そして、この本を加えてこう並び替える」
『非日常の学校生活 ~学園七不思議編~』
『水明館 ~8人目の訪問者~』
『海賊紀行 隠された金銀財宝』
『地を統べる神の降臨⑥』
『消防署の苦悩 火災からの救出5』
『あぁ、懐かしき木霊の声』
『不動産のすすめ 土圧編②』
「この並びってもしかして」
「気づいたか。これは太陽系の並びだよ」
『非 (日) 常の学校生活 ~学園七不思議編~』
『(水) 明館 ~8人目の訪問者~』
『海賊紀行 隠された (金) 銀財宝』
『(地) を統べる神の降臨⑥』
『消防署の苦悩 (火) 災からの救出5』
『あぁ、懐かしき (木) 霊の声』
『不動産のすすめ (土) 圧編②』
「やっぱり。だから『月光花 美しき一人の女』の本を取り省いたんだね」
「そう。月は衛星だからね」
「そして、日は太陽ってことだね。隼人」
「その通り。そしてここから隠れている数字を順番に読み上げると「7」「8」「6」「5」「2」ってなる」
「それじゃあ、行こう。岬」
「行こう。隼人」
俺たちは、鍵のかかった扉に到着する。
そして、タブレットの警告をみる。
『一度入力し失敗した場合、二度と開くことができなくなります』
俺は、パスワードを入力する。
『78652』
入力後、俺はタブレットの決定キーを押すことを戸惑う。
「もし、間違っていたら……」
俺が、迷っているとそっと俺の手に別の手が重なる。
「岬……」
「大丈夫だよ。私もそう思う。もしも間違っていたら私も一緒にここにいるから安心して」
ニコッと岬は、俺に微笑みかける。
「分かった。一緒に押そう」
「うん。隼人」
俺と岬は、決定キーのボタンを押す。
「ガチャ」
扉から、音が鳴りタブレットにはこう表記されていた。
『SUCCESS』
「よかった」
俺は、安堵のため息をつく。
「お疲れ様。隼人」
「あぁ、こちらこそ助けて貰ってありがとう。岬」
「ううん。そんな事ないよ。隼人、こちらこそありがとう」
お互い、笑い合いながら鍵の開いた扉を正面にみる。
「佐久間先輩。この先にいるかな?」
「わからないけど、俺たちよりも先にいるはずだ。探しだそう」
「うん」
俺と岬は、声を掛け合いながら、先に続く扉のノブを手で回し扉を開いた。




