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第二話 時は来た!雄々しき勇姿、その名は救星機神!!

「かおるさん、放してください!僕は帰ってDVDを鑑賞しないといけないんです!!」


 少年・並川譲は叫ぶ!


「並川さん、DVDのパッケージを鑑賞するのはいつでもできます!」


 そう、彼は新しい刺繍入り体操服の製作の為にDVDの新巻のパッケージをじっくりねっとり鑑賞しないといけないのだ!決して映像を鑑賞するのではないのだ!!


「分かっているなら、僕の使命だと分かっているのなら!」


 その手を放してくれ!と、熱い気持ちをぶつける彼だが、かおるさんが退くことはなかった。


「貴方の使命はそんな小さなことではありません!」


「ち、小さくなんてないやいっ!」


 駄々っ子のように暴れる譲をコブラツイスト状態で運んでいくかおるさん。器用である。


「今日という日の為に私はずっと貴方を見てきました。そして、貴方にならできると確信しました。」


「くそぉっ!放せっ!意味のわからないことを言い放つなんて、やっぱりかおるさんはチョクチョー帝国の……」


「さあ、着きましたよ!」


譲がグダグダ言っている間に、かおるさんは秘密の隠し通路を通り、秘密のエレベーターに乗り、秘密の地下の扉を開き、秘密の基地へとたどり着いていた。






      ――救星機神 鉄神王――



  第二話 時は来た!雄々しき勇姿、その名は救星機神!!







「ぬおおおおっ!たとえかおるさんがチョクチョー帝国の手先でも僕は決して屈したりし何これすごぉい!?」


 彼の目の前にはとてつもなく巨大な球体が鎮座していた。そして、かおるさんがそれを指さして叫んだ!


「さあ、並川さん!あれに乗りこんでこの星を救うのです!!」


 しかし、球体である。もう一度言おう、何度見ても球体なのである!


「い、意味が分かんないですよ!僕に人間ボウリング球になれって言うんですか!?」


 そうだとすればあまりにも鬼畜ッ!彼に吐瀉物まみれで死ぬことを強要するというのか!?


「並川さん、ここだけの話ですが……この球、ロボットに変形します。」


「えー!うそー!マジでー!ラッキー!乗る乗る!僕乗る……いやいやいやいや、僕には『最初に乗るロボットはオナラー1』という誓いがッ!」


 世に巨大ロボットというか、そもそもようやく人間サイズのロボットが辛うじてダンスが踊れるくらいになった位の世界でよくもそんな誓いを持てるものだ。


「並川さん、もし乗ってくださるのならこの子を紹介しましょう……」


 そう言ってパツパツYシャツの胸ポケットから取り出された一枚の写真。そこには譲と同じ年くらいの可憐な少女の姿があった。


「この子はとある星の王女様です。」


「乗るぅー!今すぐ乗りますぅー!」


 即答である。ただ彼の場合は『オナラーズのヒロインも異星人の王女様』ということからの即答であり、決して容姿がどストライクだというわけではないだろう。


「実はそのとある星で悪い人たちが謀反を企て……」


「早く!早く乗せて!その子に会わせて!」


 あ、違う、これ一目惚れの瞳だ。


「命からがらこの球体を持ってこの星に逃げて……」


「うおおおお!早くしろおおお!」


「まずは大人しく私の話を聞いてください!」


「聞いてますから!その子もこの星もその星も救いますから早く乗せてえええぇぅうわあああああああああ!!!」


 ついに涙と鼻水を流して懇願し始めた彼を誰も止めることはできない。早く乗せてやってくれ、見苦しいから。


「分かりました。並川さん、球体に触れてください。それで乗り込めます!」


「うおおおおおおおお!MGユナイトォッ!」


 オナラーズ合体の掛け声とともに球体に飲み込まれていく譲。メタンガスユナイト!なんて恥ずかしい掛け声なんだ!!


 所変わって球体の中。


「う、ここは……コクピット?」


 真っ暗な空間の中に座っている譲。あまりにも暗すぎて中の状況が全く分からないではないか!


「並川さん、球体とのリンク完了しました。後は貴方が念じれば起動し、思い描いた姿へと変形します!」


 まあ、なんて便利なものなんでしょう。もしそれが真実ならば、訓練とか諸々面倒くさい事をすっ飛ばせるではないか!


「了解しました。きっと……必ずやって見せます!」


 譲の瞳に熱血の炎と下心が燃え上がる!


「……妄想が今、僕の力になる!救星機神・鉄神王!目!覚!め!よおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!!」


 譲の邪な叫びが地面を引き裂く!


「並川さん、グラウンドに秘密裏に作っておいた秘密の発進ゲートを開きました。さあ、その勇姿を見せつけるのです!」


「了解!うおおおおおおおおおっ!」


 咆哮に呼応するかのようにその巨体が誰に見せつけるのか知らないが空へと舞い上がって行く!そして陽光に照らし出されたその姿は……その……姿は……?あれ……?


「……は?……え?……おう?」


 コクピットのモニターにも表示されたその姿は、なんと言うか、うん、太く逞しいと思われる四肢を持った、あの、あれ、うわぁ……


「並川さん、その姿は……」


 はっきりと言おう!その姿、どう見ても真っ黒な棒人間!!


「なんじゃこりゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


 その太く逞しい腕!逞しい脚!逞しいボディ!真ん丸な頭!まさしく立体棒人間!これが、これが救星機神・鉄神王だというのか!?


「何ですかこれ?何なんですかこれぇ?僕が何か悪いことしたって言うんですか!?」


 とりあえず日々の素行は悪いと言える。


「並川さん、落ち込むのは後です。ひとまずはその……鉄神王?ですか、それで……」


「救星機神・鉄神王です!うわあああああああああああああ!」


 フルネームで呼んでほしいらしい。ほんの数瞬でそこまでこだわって創り上げた設定がこの姿では報われない!なんて哀れな譲!


「貴方の心の力が足りなかったのです。帰ってきたら訓練しましょうね。」


「ううっ……グスッ……はい……」


あ、結局訓練するんだ。


「さあ、今はその力で敵を倒すのです!」


 敵、それはまさしく異星人の乗る戦闘機!それが群れをなして宇宙から迫って来たのだ!!さあ戦え、譲!蹴散らすのだ、鉄神王!!


「うわああああああああああくらええええええええええええ!!!!」


 こんなはずでなかった。彼のそんな心の叫びが聞こえるようだった。


「ぬわあああああああああああ!」


 悲しみに染まるパンチ!


「あああああああああああああああああああああああああ!!」


 絶望に打ちひしがれるキック!


「ふんぬあああああああああああああああああああああ!!」


 諦めの境地から繰り出されるヘッドバット!


「ッ!!!!!!!!!」


 物言わぬ投げっ放しジャーマン!!


「こんなはずじゃなかったあああああああああああああああああ!!!」


 ただの絶叫!


「せめて、せめてこれだけでも!」


 譲の懇願に応えるかのように胸部装甲らしき物が開き、そこに光が集まっていく!


「うおおおおおおおおおお!救ぅ星ぃビィィィィィィィィィィィィィィィィィィムッ!!!」


 おお、救星の光が敵を撃ち落としていく!全滅だ!これこそスーパーロボットいった感じの必殺ビームであった。良かったな譲!一つだけ願いが叶ったな!!


「……………」


 しかし、彼の顔に喜びの表情はなく、ただ俯いて涙を流すだけであった。


「……違うんだ……こんな姿のはずじゃ……ないのに……」


「お疲れ様です並川さん、ひとまず帰還してください。……さすがにその姿をこれ以上人目にさらしたくないでしょう?」


 何とも言えない空気の中帰還する鉄神王。元あった場所に落ち着くと球体に戻り、譲もよろめきながら出てきた。


「並川さん、思うことは色々あるでしょうが、よくやってくれました。初めての操縦であそこまで操れたのはとてもすごい事なのですよ?もっと胸を張ってください!思い描いた真の姿は心の力を鍛えていけば必ず生み出せます!」


 譲の肩に手を乗せねぎらいと励ましの言葉をかけるかおるさん。その瞳は大海の如き慈愛で満ち溢れていた。


「……僕、こんなに悔しいのは初めてです。でも、ここで諦めたりしません!そう、全ては写真のあの娘の為に!」


 写真を一度見ただけで心の支えにするとは恐ろしい男だ。これは将来が不安である。


「並川さん……その、言いにくいのですが……」


 言いにくそうにもごもごしながらかおるさんが写真を奇麗に切り取りロケットに収め、譲の首に掛けた。何故このタイミングで切り取って収めたのかは永遠の謎である。


「うひょおっ!くれるんですか!?やった!これで強く生きれる!!」


「……実はこの写真の娘……」


「ああ、帰ったら劣化しないようにフィルム貼らなきゃ!あとスキャン取って複製して・・・・・・」


「これ、私なんです……」


「寝る前には毎晩……はぁ?」


『私』とはこの場合かおるさんである。この美少女が、このおっさんだと言うのである。譲は信じたくなかったし、もちろん誰もが信じたくなかった。


「私なんです。」


 かおるさんはもう一度言った。それはもう否定させまいとする強い意志がこもっていた。


「あの鉄球を持って遥か彼方の惑星メティエからこの星に来た私は身を隠すため、自身の持つ全ての技術をもって『オルカ=ルカ・メティエ』から『武田 かおる』となったのです。」


 譲は燃え尽きた。真っ白に、灰のように。そう、彼はついさっき出来た心の支えをたった今失ったのだ。あまりにも早い別れである。


「……どうして……何でこんなことに……」


 悲しみの譲。涙に咽ぶ彼のつぶやきに応える者は、この場所には誰もいなかった。かつてのかおるさんの写真だけが優しく微笑んでいた……。










次回予告!




 絶望に沈む譲。


「僕の、僕の心の支え……」


 しかし、侵略者達は待ってはくれない!


「草の根分けても捜し出し連れ帰らせてもらう!」


 譲は行く!絶望を超えて!


「僕の話を聞いてください!」


 そして急に現れる巨悪の親玉。


「私が支配してあげます。」






次回、救星機神・鉄神王



第三話 立て、並川譲!悪を許さぬその心、正義の炎!!




「それだけはやめろおおおおおおおっ!!!!」




救星の使命に、熱血の爆風が迸るッ!


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