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ユースフル!  作者: サツマイモ
第二章
35/38

Pre-Final’s 003 「お疲れさまでした、本当に」

一通りの挨拶を終えたところで、私は彼女に尋ねます。


「あ、あの」

「何でしょうか?」

「本当に、良いのでしょうか?」

「何がですの?」

「いや、あの完ちゃん―完哲さんのこと」


彼女は、きょとんとした声を私にぶつけます。


「私がどうこうするものでもありませんし。え、もしかして許可がいるとか思ったんですか?」

「え、ええと、まあ」

「は。面白いことを。大丈夫ですよ。あなたが亡くなった後のケアを、私がしますので」

「めっちゃ不謹慎だな、おい」

「それは冗談として」

「冗談と出来ないんですけど」

「当たり前ですよ、大丈夫に決まってます。あなたが幸せかどうかどうでもいいですけど、彼が幸せなら、私は構いません」


時折鳴らす優しい声色に、やはりお姉さんであり、心優しい人であることが窺えます。


冗談かどうかはともかくとしても、やっぱり彼女とは話すといつも劣等感を感じます。


それは才能の差とか、そういうことではなく。

人として。


「あ、あの」

「今度は何ですか? とうとう思考回路まで途切れ始めましたか?」

「ち、違います。あの、本当にごめんなさい」

「何がですか?」

「妹さんを、助けられなかったこと」

「今度その話をしたら、腕力・聴力その他すべてを壊しますよ」


私が、こうなった理由。

格好つけて言うなら、私の実力不足。

具体的に言うなら、交通事故。


「あの日に起きたあれこれはすべて、危険運転をしたあの人が悪いわけですから、あなたが謝ることではありません。それとも、馬鹿にしているということでよろしいですか?」

「いえ、そんな」


法定速度の倍近くで走ってきた車。私と完ちゃんと子歌さんの妹たちで渡ろうとした青信号。少し飛び出した妹さんを庇おうとした私でしたが、こんな私では助けることはできませんでした。


そして、バックしてくる車。私の記憶は、そこで途絶えました。


生きているということは、そこまで轢かれたわけでもないのでしょう。きっと、完ちゃんが。


「そう言えば、その犯人ですが、精神病院に入るそうですよ。無罪放免ってことですね。本当に憎くてたまりませんが、しょうがないでしょう。それが、この国の法律ってものです」


そう……なん、ですね……。急な頭痛に耐え切れず、私は意識を、失い。

――――


――――

「完ちゃんは、全っ然分かってない!」

「だから、俺達まだ学生だろ?」

「そ、そういうんじゃない!」

「じゃあ、どういうことなんだよ」

「だって、そうでもしなきゃ、私」

「何だよ」

「私のこと、何にも知らないくせに」

「俺は、千陽の為に、」

「そうじゃないんだよ、そうじゃなくって」

「何なんだよ、分かんねえよ千陽の言ってることが」

「私は、完ちゃんと」

「俺と?」

「もういいもん!」

「あ、おいどこ行くんだよ!」

「友達んち!」

――――


目を覚ますと、一乃さんが目の前にいました。そして、気づけば周りに皆がいました。


「よかった、本当に良かった」


涙を流しながら、彼女は私を抱き寄せました。彼女の涙を、頬に感じます。


「死んじゃうんじゃないかって、思った」

「皆、どうして?」

「いやあ、びっくりしたよー」


十音さんは、うつぶせに寝そべりながら、答えてくれました。


「まさか、あんな大所帯が忽然と姿を消すなんてね」

「そう、だったんですか」

「ええ。てっきり一乃さんの仕業かと思いましたけど」

「百菜ちゃん、さすがの私でもそんなことはできないよ。できるのはこれくらいだ」


そして、一乃さんは百菜さんのスカートをめくります。


「ひゃう!」


百菜さんの能力は、急なものに弱いそうです。


「よし、起きたことだし」


リーダーは、修をたきつけるように腰を叩きました。


「そうですね。ちーさん、帰りましょう」

「え?」

「お疲れさまでした、本当に」


何が、終わったのでしょうか。


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