表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユースフル!  作者: サツマイモ
第二章
30/38

一乃’s 006 「では、そこに爆撃を仕掛けよう」

――――

気づけば、俺は、街のど真ん中の噴水の前に佇んでいた。


「……?」


周りを見渡す仕草で、俺は記憶を取り戻していった。


舘町一人(たちまちかずひと)。短髪はどうも嫌で、髪の毛は伸ばしっぱなしだった。荷物は何も持たず、せいぜい服を着ていたくらいだった。


取り戻す記憶のはじっこで、神の声が聞こえた。


『平等を、追求しなさい。才能を、撃滅しなさい』


どうしてそれを真に受けたのか、それは自分自身でも分からない。ただ、俺はその先にある幸せを妄想し、想像して、暴走した。腹ペコな体に鞭を打って、どうしたらみんなを先導できるか―扇動できるか、ひたすら考えた。


「ねえ、どうしたのかず君」


後ろから、声が聞こえた。


「君は?」

「……ふふっ。なにそれ。小さいころからずっと一緒だったでしょうが」


麦わら帽子に、白いワンピース。


少女は、夏のさわやかさを身にまとったかのような姿をしていた。

その姿はまさに、夏の擬人化とも言えた。


「そう……なのか」

「そうですよーだ」


彼女の見せる笑顔は、太陽そのものだった。


「なあ、」


それからというもの、俺は彼女と共に普遍的な生活を送っていた。勿論、使命を忘れてなどいない。しかし、それに彼女を巻き込むのは少々憚られる。


「何?」


喫茶店の窓際席に向かい合って座る二人の間に、少しだけそよ風が吹いた。


「もう、俺とは関わらないで欲しい」


俺は、一人で戦場へ赴かなければならない。

そう、固く決めていた。

自由なんて要らない。使命のままに、平等を手にするんだ。


「……なんで?」


笑顔を絶やさぬ彼女に、俺は少し怖くなった。


「それは、君を」


たじろぐ俺の手をつかんで、彼女は俺を見つめる。

その行為に、紅潮する。


「私は、ついていくよ?」


彼女の視線は熱くて、鋭かった。


「どうして」

「もちろん、君の親友だもの。でも、一つだけ約束」


彼女は見つめたまま続ける。


「無理はしないこと。彼らを弾圧しないこと。たとえ、あなたが正解だとしても、社会っていうのは正解だけじゃ成立しないから、否定しないこと。総合して、戦わないこと」


彼女は、俺にくぎを刺し終わると、手を離して、「私がブレーキになったげる。それが、私の使命だわ」とまたもやニコッと笑った。

太陽もうらやむ笑顔に、俺は決意した。


「分かったよ。絶対に君を傷つけたりはしない。そして、俺も傷つかない。皆が幸せになるように、頑張るよ」


それから、俺は一生懸命努力した。人を傷つけず、片っ端から搾りかすみたいな信頼をかき集めて、そしてついに、王様の隣までたどり着いた。


決して俺は王様を倒したいわけではなかった。

そのはずなのに。


「いいか、お前たち! 絶対に戦うなよ!」

数百人の喚声が、重なり合った。


「もちろん!」

「俺たちは、非暴力主義だぜ!」

「話し合ってやろうぜ!」


頭の良しあしはともかく、とにかくこれだけ集まってくれて良かった。


感極まる俺の肩を、彼女は「何泣いてんのよ」と泣きながら叩いた。


その姿に、笑みがこぼれた。

ようやく俺たちは世界を変える。

平等が、自由が。


そんなものはどうでもいいという人がいるかもしれない。

それは、才能を手にしたものだけが言えることだ。

才能は誰もが持つものだという幻想が、本当に辛かった。

0もまた存在するという数学的な考え方が、俺たちを苦しめた。


しかし、それももう最後だ。


劣等感に縛られなくてもいい。王様が、公式に認めてくれれば、それで。


「じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」


俺は、駆け足で石の階段を昇った。


「……分かった、そうしよう」


長い、長い、会議が幕を閉じた。

俺たちは、認めてくれるだけで十分だった。

しかし。


「でも、認めるだけでは示しがつかんだろう。あのように、暴徒化する状況も免れん。わしらも地位が危ぶまれる。そうだ、西の地域は確か、才能の宝庫じゃったよな」


王様は、窓を眺めながらそう呟いた。


「ええ、確かそうだったはずですけれど」


「では、そこに爆撃を仕掛けよう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ