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ユースフル!  作者: サツマイモ
第二章
22/38

一乃’s 003 「私は、それに立ち向かう勇敢さに、惹かれたのです」

私に、そんなこと聞かれても。


答えられるはずもなく、ルール違反の『質問を質問で返す』を行ってしまうのでした。


「誰なのでしょうか?」

「……それは、答えられない問いなのです。答えを出してはいけない、問いなのです」


彼女は透き通った声で、そう答えました。


「あと、一つだけ。あなたの誤解を解いておきたいと思います」

「……え?」

「七守さんたちは、関係ありませんよ」

「……」


七守について、私は何か言ったでしょうか。

いえ、確か言っていないはずです。

なのに、どうして。

これが、彼女の頭脳。


「七守は、はぐれ者の集団だったそうじゃないですか。きっと、あなたが怖がらないように、そうしたのでしょうね。ご両親に愛されている証拠です。もしかすると、あなたにとっては気持ち悪かったり、気味が悪かったりするのでしょうけれど、それでもあなたは愛されていたはずですよ」


「……」


「王宮は、あなたを危険にさらしたくない。私達は、危険を冒してまで、抵抗したい。そういったものが、あるのです。それは、王宮も私達も答えは同じです」


はあ、と一息ついて、彼女はとうとう最後まで言ってしまうのでした。


「どうしてでしょう。あなたと話していると、全てを話さなければならないような、そんな感覚に襲われます」


私は、何も言わずに、耳を傾けます。


「王宮は、国民がいてこそ成り立ちます。なので、国民を大切にするのは当たり前の話。それが、例え悪い方向に傾いていると知っていても、国民を認めないわけにはいかない」

彼女は、台に手を置き、続けます。


「でも、それは間違っていると思います。国民と王宮は、常に対等であるべきだと、私は思います。だからこそ、お互いに傲慢さを押し付け合わないといけないと、私は考えています。どちらかの意見を、そのまま飲み込むのではなく、互いにぶつけ合った先にある答えを、探すべきだと。だから、私達は王宮に歯向かっている。抵抗している。反抗している」


「……何が、言いたいんですか」


私は、テーブルの方へ戻りつつ、彼女の後ろに座ります。

私が座って、彼女が立つ。

そんな態勢です。


「多分、誰かから聞いたかもしれないけれど、私達は自己中心(ヒーローまがい)なのです。誰かを救うわけでも、街を助けるわけでもないのです。でも、守りたいものがあるのです」


水道の蛇口を開けて、コップ一杯に水を入れて、飲み干す。

そして、彼女は高らかに宣言したのです。


「だから、もう敵対せずに、共に戦いましょうという、お願いをしに行っているのです。そうやって、国民に胡麻を摺るのは止めましょうと、そう言いに行っているのです」


彼女は、少し微笑んで、「すべて聞けて満足ですか?」と尋ねました。


「……一つだけ」

「何でしょうか」


コップを持っていない左の手の指先を、私に向けました。


「私達は、いったい何と戦っているのでしょうか」

「……」


少しだけ間が空いて、何かを考えるしぐさをして、彼女はそう答えました。

正確には、私にヒントを与えました。


それはひどく怖いもので、そして私の脳では抱えきれないほど大きそうな問題でした。


「国会ってわかるよね?」

「ええ。一応、形だけあるやつですよね?」

「まあ、政治のほとんどをそこでやっているから、王宮の方がお飾りみたいなものなんだけど、それは置いといて」

「それが、どうかしたんですか?」


「国民の意見を募って国を動かすのが国会議員だとしたら、国民の意見そのものを動かす―移動、誘導、先導するのは、いったいどこの誰なのでしょうか」


彼女は、コップを流しに置きながら、言いました。


「それが、私達と王宮が戦っているものの正体です」


その答えは、出したくても出せない物でした。

大きくて、それでいて実体のないもの。


「私は、王宮そのものに反抗したのではなく、王宮のスタンスに―姿勢に、反抗していたのですね」


そんな風に曲解して、私は心の安定を図りました。


「まあ、その時どう思っていたのか定かではないですけど、あなた次第ですし。でも、少なくとも、あなたがこちらに来てくれたおかげで、少しは動きやすくなったというものですよ」


彼女は、慰めにも似た言葉を投げかけます。

気づけば、外の雨はやみ、夜の月が街を照らしていました。

月を眺め、彼女は呟きました。


「私は、それに立ち向かう勇敢さに、惹かれたのです」


一乃さんの最後の言葉に、あえて私は反応しませんでした。


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