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ユースフル!  作者: サツマイモ
第二章
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一乃’s 002 「では、本当に悪いのは誰なのでしょう?」

「そうですか」


少しの引っ掛かりと、ちょっとしたイラつきを覚えつつ、私はこの論戦に幕を下ろしました。

「ならまあ、良いのですが」


少しだけ残ったお茶を一気に喉へ流し込んで、私は立ち上がります。

立ち上がると言っても、別に政治運動をするとか、そういうことではありませんけれど。


「じゃあ、せめて今のこの状況だけでも教えてください」

「この状況って?」


聞きたい?と言わんばかりのにやけ顔を浮かべる一乃さん。


小学生ですか、あなたは。

頭脳明晰な人にやられると、イラつくよりも呆れるの方が勝ります。


「いい加減答えてくれないと、私だって怒りますからね?」


わざとらしく口を膨らませても、彼女は折れてくれませんでした。


「教えるわけにはいかないのですよ。特にあなたには」

「何でですか⁈」

「それは、それですよ。あなたが一番わかっているはずです」


私が一番わかっている?

何のことなのでしょうか。私が、いったい何をしたというのでしょうか。


思考。愚考。熟考。考想。


「私に、関わることですか?」

「……ノーコメントです。それでは、私は仕事に戻りますので」


声色がころころ変わる彼女から、その真意を突くのははなはだ不可能です。

おっとりしているかと思いきや、急に冷静沈着な声になり、かと思えば明るくなったり、幼児退行まで。


「何なんですか、いったい」

つい呟いた私の本音に、私自身が驚きました。


「……」


こうなっているのは―つまり、私が軽い軟禁状態に陥っているのは、誰のせいなのでしょうか。実行犯は一乃さん、十音さん、百菜さんだとして、主犯格はリーダーと修だとして、だとしたら、どうして私をとどめておく必要があるのでしょうか。


もしかして、七守が関係しているのでしょうか。

七守。

王宮の特別護衛チーム。主に、私の監視監禁が仕事。計7人いて、そのすべてがスペシャリストという体。


「でも、その人たちって、結局そんなに強くないんですよね」


修が昔、「彼ら彼女らは、はじかれた人だから」と言っていたのを強く印象に残っています。確かに、言われてみればすぐに死んでいきましたし、私と戦っても実は大差ないんじゃないかとも思うのですが、さてどうなのでしょう。


今まで、青春結社の方が強いと思ってきましたけれど、もしかして七守の方が弱いのでしょうか。


だとすると、すぐに逃げ出せたのもわかります。


「じゃあ、なぜそんな弱いチームが、私の護衛になっていたのでしょうか」


洗い物をしながら、私は思考を始めます。


「それくらいで、私なんかは十分だった……?」


最悪の結果が、開口一番に出てくるとは、我ながら情けないです。

さらに、それを反論できないということが、情けなさを加速させます。



「ちょ、ちょっと?」

気づけば、一乃さんが目の前に立っていました。


シンクを挟んで向こう側に立つ一乃さんは、やはり人間の言葉では語りつくせないほど美しく、綺麗です。女性が憧れる長身女子という感じで、本当に憧れます。


強いてあげるなら、髪の毛がぼさぼさだというところくらいでしょうか。

それすらもファッションと謳ってもおかしくない秀麗さが、そこにはありました。


「水の出しっぱなしはやめてください。いくら雨が降り続いていると言っても、うちの水はいつ止められてもおかしくないのですから」


流れるように蛇口に手を伸ばし、きゅっと閉めました。


「だとしたら、むしろ水をとっていた方が良いのではないでしょうか?」

「違うのです」


ビシッと指を立て、それからかけていないはずの眼鏡をくいっとあげ、まるで先生のように私に教えてくれました。


「これは、周りの人たちの信頼で成り立っているのです。一応、私達は若者たちの何でも屋的な側面を持っていますから、なんとか周りの方々の協力を得てここに住まわせてもらっている状態なのです。あの辺の通信機器もすべて、譲ってもらったものなのです」


私にもわかりやすいスピードで、彼女はわかりやすく伝えてくれています。


「まあ、この辺の人たちも、私達の活動目的を知ったうえで、少なからず賛同してくれている方々なので」


くるっと指を回転させ、それから続けます。


「ですので、ここで水を使いすぎる、という周りの方々の迷惑になるような行為をすると、すぐさま王宮の方に通報されてしまうのですよ。そうしたら、どうなりますか?」


学校の授業でよくある、『生徒参加型の授業』みたいな、もっとありていに言えば『アクティブラーニング』みたいなことを取り入れてくるあたり、さすが頭脳明晰だなと、感心せざるを得ません。


「敵認定を受けて、攻撃を仕掛けられてしまいます」

「正解。それは、お互いしたくないのです。そのはずです」

彼女は、それから少しだけ呟きました。


「王宮も、私達も、本当は同じ考え方のはずなのです」

そして、笑顔で私に問いかけます。


「では、本当に悪いのは誰なのでしょう?」


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