表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユースフル!  作者: サツマイモ
第一章
15/38

子歌’s 003 「妹が、この世界にいるんじゃないかって」

「これは私のデータなんだが」


指をさすところを見ると、そこには私にも読める字が書かれていました。しかし、その事実を信じられず、私は思ってもみない声を挙げました。


鋭い目つきの子歌さんに怯えつつ、私は尋ねます。


「……妹、ですか?」


「ああ。そうらしい。もっとも、私にそんな記憶はないし、感覚すら残っていない」


腕を組みなおし、彼女は続けます。


「でも、このデータはこの前から、全て当たっているんだよ。君がここに来ることから、そのすべてが」


全てが当たっている。まるで、それは未来予知のようなものでしょうか。


「未来予知、あるいは、循環(ループ)


彼女は、下を向いて少し考え、そして前を向いた。


「それが、私の結論で、私の能力」


時間旅行(タイムトリップ)

てっきり私は、過去や未来に行くような、そんな大きな旅行を考えていましたが、実はそういう類のものではなく、ある一定期間に何度も飛べるということ。


「なんだか、時間旅行という名前が紛らわしいんだけどね。それは、私も考えてる。だから、もしかするとこの仮説も間違っているのかもしれない」


そう淡々と述べる彼女は、優しい笑顔を見せています。


「ただ、想い出巡りの旅だとしたら、意外と間違いじゃないかもって。そして、その後悔を、やり直したいことをやり直すってことをしたいのかもしれない。それが、私が願った能力なのかもしれない」


想い出巡りの旅。

妹がいた、最期の時を、永遠に繰り返す。


それが終われば、また次の分岐点へと足を踏み出すのでしょうか。


「さっきからずっと調べていたんだけど、やっぱり私の妹については何も書いてなんかなくってね。でも、君の話を―君の夢の話を聞いて、なんとなく思ったんだよね」


鼻をすすり、窓を見ます。

いつの間にか、雨はやんでいました。


「妹が、この世界にいるんじゃないかって」


避難所巡り。

唐突に、私はそれを思い出しました。

ただ、それだけのことだったのですね。


「子歌さん」


気づけば、私はそれを口走っていました。

彼女の表情を見て、私は言いました。


それが良いことなのか悪いことなのか、きっとこれが終わった後でも分からないでしょうけれど、でもやってみないことにはわかりません。


「探しに行きましょう」


たった一言。されど一言。

彼女の心には、どう響いたのでしょうか。


「あのな、簡単に言うけど、毎回のように状況が違うんだぞ? ありていに言えば、繰り返せば繰り返すだけ、別のシナリオが描かれているんだぞ? 今回だって、妹の存在を知らなかった。妹だって、きっと私の存在なんか知らない。そもそも、妹がいるのかどうかすら分からないのに」


「そういうことじゃないですよ」


絶対に見つける。

そして、再会する。

そしたら、全てを思い出す。


そんな夢物語を語っているのではありません。私は、なんとなく嫌な予感がしているだけなのです。本当だったら、一人で先に確認したい所でしたが、そうもいかないでしょう。


「一人で堂々巡りを繰り返すんだったら、いっそのこと私の所為にしませんかってことです」


永遠に回り続ける旅行ならば、それを斬る方法は一つ。

現実を受け入れて、前に進むこと。


「何があっても、私はあなたの味方ですと、そう申し上げているのです」


だったら、一歩を踏み出さなければなりません。


辛いこともあるでしょう。悔しいでしょう、苦しいでしょう。

そのすべてを、私にぶつけてください。


「だから、お願いします。もう、泣かないでください」


愛する方の涙など、見たくないのです。


「……分かった」


私には、もう一つ、懸案事項がありました。

『夢が本当なのかどうか』

それが本当だとすれば。

確かめるためにも、私達は一歩先へ進まなければなりません。


晴れ渡る空に誓いを立て、私達は握手を交わしたのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ