百菜’s 007 「「ようやく見つけたよ、お嬢ちゃん」
王宮内では、最高齢の、クソ爺です。
「相変わらず、私に対しては厳しいようですなぁ」
一本も残らない頭。代わりに、限界まで伸び切った白いひげ。よぼよぼの肌から想像もつかないほどの、叡智。
「だ、誰ですか?」
椅子を蹴るように立ち上がった百菜さんは、咎めるように、突き放すように尋ねました。
「まさか、あなたが親玉ってことですか?」
重ねて問う彼女を、片手で「ああ、いやいや違う。こりゃ、参ったねぇ」といさめて、それから私を見つめて言いました。
言ってはいけない、その台詞を。
「その子はね、」
私に指をさし、ニヤッと笑う。
その笑顔に、どれだけ嫌気がさしたか。
「二平御舟さん。外で少し、お話ししましょうか」
その瞬間、修が二平御舟の目の前に立ち、にらみを利かせて、圧倒しました。
机から出入り口までそれなりに距離があったのに、何という速さ。
これが、修の能力なのでしょうか。
未だ分からぬ彼の正体。私は、この状況を静かに眺めることしかできませんでした。
「さもないと」
「さもないと、どうするっつうんじゃ?」
「自分の爆弾で、あんたの首が飛ぶっつってんだよ」
見たことのない彼の重く鈍い表情。
彼の眼は、間違いなく殺意に満ちていました。
「あ、あの」
ここで、店主が間に挟まりました。
「よかったら、おまかせ食べていきませんか?」
この状況に手を差し伸べる彼の表情は、笑顔で、その覚悟と勇気に、私と百菜さんはただただ感心するだけでした。
「いただこうかな」
彼の殺意に満ちた眼を適当に払い、彼は近くの椅子に腰かけました。
「食事くらい、とっても良いじゃろう?」
悪戯に笑う彼の笑顔は、本当に嫌で嫌でたまりません。
彼は、その表情で人を裏切った。騙し、欺き、寝返った。嘘を吐いて、人を殺した。
どうして彼を雇うのかというと、それは敵にしたくないからだと思います。
それくらいに、凶暴で、狂暴。存在自体が、凶器で、狂気。
「だ、誰なんですか?」
私達は、当然おまかせに手を出せるわけもなく、店主に「あとで食べる」とだけ言って、一度外に出ました。
「あいつは、爆弾魔だ」
百菜さんの問いに、修はあっさりと答えました。
「よぼよぼの爺であることはとっくに自覚している。だから、彼は爆弾を使うことで、敵と戦い始めました。2年前、このあたりが巨大爆弾によって空爆を受けたことがあるのを、ご存知ですか?」
「……はい」
百菜さんは、重く深く、頷きました。
「ちょうど、私が青春結社に入って1週間後でしたから」
避難所。
時に、子歌さん。艶美で、壮麗な紫色の髪の毛をなびかせていた彼女は、私達が来た翌日から会っていませんが、何をしているのでしょうか。
「その首謀者と言って間違いではない」
彼は淡々と、端的にそう言ました。
「……そうなんですか」
私は、その事実に驚愕しましたが、彼ならやりかねないという気持ちが驚きの感情を抑え込みました。
「どうすれば、いいんですか?」
百菜さんは、握りこぶしを作って訊きました。
「殴れば一発だろうけど、それはできない。それほどに、頭が良い」
「……」
二平御舟の凄いところは、頭脳明晰さにあるそうです。
彼なら、200手先まで読めるとか。
そういわれるほどに。
だから、開始2秒で戦いを放棄することもままあるそうです。
「でも、君の運命操作を使えば、なんとかなるとは思います」
「……そう、ですか」
下を向いて、すぐに顔をあげて、それから宣言するのは、まさしく彼女の決意そのものでした。
「分かりました」
空は、青く広がっていました。




