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第139.5話「ミコちゃん暗殺依頼」

『これ、ポン!』

『どうしたんです? また変な事、考えてないですよね?』

『あの用務員はヒットマンじゃったのう』

『昔の仕事ですよ、今は用務員』

『殺しの依頼をするのじゃ!』


「こんにちは~」

「いらっしゃいませ……どうしたんです、こんな時間に」

 お昼ちょっと過ぎ。

 イケメンさんが来店です。

「ラーメン屋さんはいいんですか?」

「お客さんいなくなって、お昼も終わったから店終いしました」

「早くないですか?」

「でも、仕込みの麺もなくなったから」

「ふーん、繁盛してるんですね」

「おかげさまです」

 イケメンさん、トレイとトングを手にパンを見て回ってます。

 ああ、またしても「ネコパン」ですよ。

 かわいいし、おいしいけど……男が食べるパンじゃないですよ、ねぇ。

「好きですねぇ、ネコパン」

「かわいいし」

 微笑むイケメンさん。

 なんでしょう、ムカつきます。

 この男はイケメンですが、どこか「女々しい」んです。

「紅茶をお願いします、ミルクティ」

 男は黙ってコーヒー、ブラックじゃないですか?

 まぁ、お客さんですから、ミルクティ出しますけどね。

 って、ネコパンのトレイを持ってコンちゃんのテーブルに行っちゃいます。

 コンちゃん、イケメンさんのトレイを見てムスッとして、

「これ、イケメンよ、お店はどうしたのじゃ」

「仕込みがなくなったので、おしまいしました」

「わらわ、後で行こうと思っておったがの」

「残念でした」

 って、美味しそうにネコパンを食べ始めるイケメンさん。

 コンちゃんの髪がうねってます。

 他のお客さんはいないからいいけど……空気悪いから、コンちゃんにもミルクティ持って行って落ち着いてもらいましょう。

 コンちゃん、ティーカップを一口。

 髪のうねりも収まりました。

『この男は、何かムカつくのう』

『コンちゃん、怒ったらダメですよ』

『小指を立ててパンを食っておる、ムカつくのう』

『まぁ、確かにそうなんですけどね』

 コンちゃんが怒ってくれたおかげで、わたしはなんだか冷静になれました。

 そうです、このイケメンさんは「女」と思えばいいんですよ。

 そう思えばムカつきません。

『暗殺されてしまえばよかったのにのう』

『物騒な事言いますね』

『どうせ山の中なのじゃ、一人二人いなくなってもわからんのじゃ』

 って、苦々しい顔のコンちゃん。

 そんなコンちゃんの顔が瞬時に明るくなるの。

 頭の上に裸電球も「ピカー」って光ってます。

『これ、ポン!』

『どうしたんです? また変な事、考えてないですよね?』

『あの用務員はヒットマンじゃったのう』

『昔の仕事ですよ、今は用務員』

『殺しの依頼をするのじゃ!』

 もう、こんな時のコンちゃんは素早いです。

 指をパチンと鳴らすと、空いている席がキラキラ輝き出します。

 召喚の術で、帽子男が登場するの。

 湯呑を手に、お茶をすすっている最中だったみたい。

「おお、なんだ!」

「わらわが召喚したのじゃ!」

「召喚って、まるでゲームかよ!」

「わらわは神ゆえ、何でもありなのじゃ!」

 帽子男さん、唇をゆがめていましたが……

 ちらっとイケメンさんの食べているネコパンを見て手が動くの。

 パンを横取りして口に放り込みます。

「あーっ!」

「ネコパンうまいなぁ、見た目だけじゃないんだな」

「僕のネコパン……」

「また取ってくればいいじゃねぇか」

 帽子男さん、指を舐めてから、今度はコンちゃんのミルクティを奪って、

「で、俺を何で召喚したんだよ、用事あんだろ?」

 コンちゃん「怒りマーク」を浮かべて肩を震わせながら、

「殺しを依頼するのじゃ!」

「!」

「ほれ、500円なのじゃ!」

「わ、ワンコインかよ」

「依頼を引き受けぬのか~」

 って、コンちゃんの髪がうねります。

 闇黒オーラも渦巻きはじめました。

 イケメンさんが青冷めてるの。

 帽子男さんはため息一つついてから、

「で、誰を殺るんだよ?」

「ミコ!」

「は?」

「ミコを殺すのじゃ、ミコを!」

 って、難しい顔の帽子男さん。

 コンちゃんはあいかわらず髪がヘビみたいにうねりまくり。

「しょうがねぇなぁ……銃はある」

 って、帽子男さん、上着を開いて銃を見せます。

「あとはミコちゃんと……そうだな、ロープかな」

「ふむ、お任せなのじゃ」

 こんな時のコンちゃんは素早いです。

 観光バスが来た時も逃げないで、これくらい働いてくれたらいいのに。

 パチンと指を弾くと……ミコちゃんが召喚されます。

 洗濯物を畳んでいる最中だったみたい。

 帽子男さんの手にはロープ。

 そんなロープを何度か引っ張って確かめると、帽子男さん、ミコちゃんを縛っちゃうの。

 ミコちゃんはただ、されるがまま。

 大人しく縛られています。

「ねぇねぇ、帽子男さん!」

「うん、なんだ、ポンちゃん?」

「なんでミコちゃん縛っちゃうんです?」

「そりゃ、ミコちゃん神さまで強いからだよ」

「そうなんだ……」

 でもでも、ロープで縛ったくらいじゃ、ミコちゃんは変わらないような……

 ミコちゃんニコニコ顔で、

「キャー、動けないー」

 なんだか棒読みなんですよね。

 で、帽子男さん、銃を抜いてミコちゃんに向けると、

「ここで引き金を引けば、ミコちゃんは死ぬ」

 銃口向ける帽子男さん。

 でもでも向けられたミコちゃんはニコニコ。

 わたしとイケメンさんはおろおろ。

 コンちゃんは喜々としてますね。

 でもでも、帽子男さん、引き金を引かずに、

「ミコちゃん死んだら、今夜のゴハンは誰が作るんだ?」

「!」

「ゴハンなかったら、コンちゃんもポンちゃんも死なないか?」

「!!」

 わたしとコンちゃん、真っ青。

 ゴハンがないなんで嫌です、死んじゃいます!

 でも、コンちゃん、頭上に裸電球光らせて、

「ミコが死んだら、帽子男やイケメンにゴハンを作らせればよいのじゃ!」

 途端に店内に暗黒オーラは充満するの。

 ミコちゃんの闇黒オーラが!

「もう怒った、コンちゃんもポンちゃんもいいわねっ!」

 え! わたしも!

 殺しの依頼をしたのはコンちゃんなのに!


 そうそう、子供プールは出しっぱなしでした。

 みんな楽しそうに遊んでいましたよ。

 小さいプールで泳げもしないのに……なんで楽しいんでしょう。

 むう、わたしも「体験」してみましょうか。

 早速スク水に着替えて……


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