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第138.5話「イケメンのパン屋さん」

 なぜかイケメンさんがパン職人姿でいるんですよ。

「あのー、なんでイケメンさんがいるんですか?」

「えっと、店長さんに言われて来たんだけど」

「それって店長さんが普段着ているのですよ」

「うん、知ってる」


 わたしとコンちゃんがラーメン屋さんで働いていると、店長さんがやってきました。

「あ、店長さん!」

「ポンちゃん達が働いているからって……売上に協力に来たよ」

「うふふ、ラーメン屋さん、大繁盛です」

「うん……すごいね」

 店長さん来たのに、コンちゃんは見向きもしないでラーメン配りまくり。

 こーゆー時は真っ先に店長さんに歩み寄って泣きごとを言いそうなもんですが……

 どーゆー風の吹きまわしなんでしょうね?

「ポンちゃん、コンちゃんどうかしたの? 真面目に働いているけど?」

「さぁ……なんででしょうね?」

 ふむ、こんな時はテレパシーです、えいっ!

『コンちゃん、どうして真面目なんですか!』

『忙しいからじゃ』

『なにかありますよね』

 む、なかなか返事がないです。

 でも……

『今は店長とは関われんのじゃ』

『?』

『わらわがツケを2万溜めていたのが話題にあがるやも……』

 あげちゃいましょ!

「店長さん、コンちゃんが2万もツケを溜めたから働かされてるんですよ」

 わたしの背後でコンちゃんが怒ってます。

 見ないでもわかっちゃうんだから。

 お店に暗黒オーラが漂いだすの。

「ポ~ン~、ちくりおったな~」

「面白そうだし」

 って、店長さん乾いた笑みで、

「まぁ、そんな事だろうと思ったよ」

 でも、店長さん、席に着いてもお店を見てなにか考えてるみたい。

 どうしたんでしょうね?


 店長さんの考え、今になって発覚です。

 平日のパン屋さん。

 なぜかイケメンさんがパン職人姿でいるんですよ。

「あのー、なんでイケメンさんがいるんですか?」

「えっと、店長さんに言われて来たんだけど」

「それって店長さんが普段着ているのですよ」

「うん、知ってる」

 コンちゃん、ムスっとした顔で、

「これ、イケメンよ、おぬし、パン屋をなめておらぬか?」

「えっと……えっと……」

「パン屋はラーメン屋のように簡単ではないのじゃ、おぬしには勤まらんのじゃ」

「えっと……あの……その……」

 コンちゃん、嫌な先輩風吹かせまくり。

 イケメンさんおろおろしてますね。

 パン屋さんは大変かもしれませんが……

 コンちゃんが語るところじゃないでしょう。

 だってコンちゃんいつも「ぽやん」としてるだけだし。

 観光バスが来たら逃げる事だってあるもんね。

 そんな事を話していると、奥から店長さんとミコちゃん登場です。

「店長さん店長さん、イケメンさんはどうしてですか?」

「そうじゃ! そうじゃ!」

 店長さんはニコニコ。

 ミコちゃんが小さく頷きながら、

「ラーメン屋さん!」

「は、はいっ!」

 続いて店長さんが、

「この間はよくもパン屋の看板娘を二人とも連れて行きましたね!」

「え?」

 あれってレッドを人質にして……

 本当はツケの代わりなんだけど……

 ともかくイケメンさん、さらにおろおろしてますよ。

 店長さん腕組み&ニコニコ顔で、

「よくもうちの看板娘をー!」

 台詞棒読みです。

 ミコちゃん言い放つの。

「落とし前で、今週はパン屋で働いてもらうぜー!」

 ミコちゃんも棒読みですよ。

 あ、でもでも、イケメンさん、なんだかすごくうれしそう。

 わたし、つっこまずにおれません。

「ねぇねぇ、イケメンさんは怒るところでは?」

「パン屋さん楽しそうだから、やってみたかったんですー」

 そんなわけで、イケメンさん、パン屋さんを職場体験ですよ。1週間。


 なんとなく始まったイケメンさんのパン屋さん……

 今週は観光バスの予定もなかったんです……

 それなのにそれなのに……

 わたしと店長さん、もう、心が折れてます、壊れてます……

 今、パン工房でぐったりしてるところですよ。

「て、店長さん、どうしてイケメンさんをパン屋さんに?」

「い、いや、売上伸びるかなって」

「感想は?」

「うちは……そんな体力ないって知った」

 足音、パン工房のドアが開いてコンちゃんが登場。

 髪がうねってるけど……お疲れ感ひしひし。

「店長~、ポン~、早くパンを焼くのじゃ~」

「「は~い」」

 わたしと店長さんはもります。

 コンちゃん、ちらっとお店の方を見ながら、

「今週は観光バスも来んから、ゆっくりできると思っておったのに」

「なんであんなにお客さん来るんですかね?」

「あのイケメンのせいじゃ、イケメンがいかんのじゃ」

 わたしとコンちゃん、店長さんをにらむます。

 店長さんはわたし達に背を向けて、一人黙々とパンを窯から出しているの。

 でも、わたし達の視線には気付いてるみたい。

 汗だくなのがわかるもん。

 耐えられなくなったのか、店長さん振り向くと、

「いや、だって、まさかこんなにお客が来るなんて思わなかったし」

 イケメンパワーおそるべし。

 お店はイケメン目当ての女客ばっかり。

 店長さんげんなりした顔で、

「ラーメン屋の時より客多いよね」

「あ、そういわれるとそうですね」

 コンちゃんため息をつきながら、

「あのラーメン屋におしゃれな女は入りにくのじゃ」

「!」

「パン屋はおしゃれな女でも入りやすいのじゃ」

「あー!」

 イケメンさんが来て、はじめて「日常」の良さがわかりました。

 パン屋さんはお客さんがぼちぼちなのがいいんです。

 ああ、またドアのカウベルがカラカラ鳴ってるの。

 お客さん、まだまだ来そうです。

 大忙し!


 イケメンさん、トレイとトングを手にパンを見て回ってます。

 ああ、またしても「ネコパン」ですよ。

 かわいいし、おいしいけど……男が食べるパンじゃないですよ、ねぇ。

「好きですねぇ、ネコパン」

 なんでしょう、ムカつきます。


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