第133.5話「落ち葉焚き」
「オソウジ?」
「そーです、お掃除です」
ヌシ、池の縁一杯いっぱいに近付いて来て、わたしを見ています。
「どうしました?」
「オソウジダケ?」
観光バスも行っちゃいましたよ。
神社の人も大分減りました。
おみくじコーナーの前から人はいなくなったんです。
「ねぇ、たまおちゃん、わたしはもういい?」
「お客さん減ったから……」
たまおちゃん、境内を見回して、
「まだレッドの前にはお客さんたくさんいるけど……ポンちゃんはいいか」
「わたしはなにをしたらいい?」
「じゃあ、お掃除、おねがい」
「はーい」
レッドやみどり、千代ちゃんはお父さんと一緒に頑張ってます。
そんなみんなを見ていると、わたしだけなにもしないのはちょっとね。
社務所を飛び出して、境内をほうきではわくんです。
さっきまでお客さんでいっぱいだったから、ごみがいっぱい……
ごみ……
ないですね……
落ち葉が多いですね!
ともかく落ち葉を集めるんです。
ほうきで「ザッザッ」って集めるの。
池のヌシも浮上してきました。
わたしをじっと見つめて、
「オソウジ?」
「そーです、お掃除です」
ヌシ、池の縁一杯いっぱいに近付いて来て、わたしを見ています。
「どうしました?」
「オソウジダケ?」
「はぁ?」
わたし、さっきから落ち葉を集めるのにテンション上がってて、それ以外思い付きません。
「そうですよ、葉っぱを集めてるんです」
「ドシテ?」
「どうしてもなにも……」
掃除しろと言われたからそれだけの事で……
「たまおちゃんはどうしてるんですか?」
「タマオ、オチバデヤキイモ」
「!」
なるほど、山のように落ち葉あります。
これで焼き芋、おいしそう。
「でも、お芋がないです」
って、わたしの言葉にヌシは目配せ。
池のほとりに小屋があります。
中を見れば……ありました、お芋。
アルミホイルもあります。
わたし、お芋を包んで袖に隠してヌシの所に戻ります。
『ねぇねぇ』
『ナンデスカ?』
『なんでわたしに教えてくれたの?』
『オスソワケ』
『ふふ、焼き芋ならわたしでもできます、おまかせですよ』
こころなしか、ヌシの目も微笑んでるみたい。
山のような落ち葉にお芋を埋めて着火。
あとは「いいニオイ」になるまで焼くだけなんです。
レッドとみどりがやって来ます。
ドラ焼きをヌシにあげながら、二人してなにか話していますね。
それからわたしの方を見て、やって来ました。
「ポン姉~」
「レッド、どうしました?」
「においます~」
「!」
みどりもクンクンしながら、
「ちょっとアンタ、感じないの!」
「え? なにが?」
わたし、目が泳ぎまくり。
そうでした、レッドとみどりはわたしと同類。
クンクンすれば嗅覚は獣級なんです。
レッドとみどり、クンクンして、落ち葉焚きをガン見。
「おいしそうなにおいしますー」
「そうね、美味しそうなニオイがするわね」
って、二人の視線がわたしに向けられるの。
わたし……目を逸らすんです。
って、二人はわたしの前に立って、じっと見つめるの。
なんだか責めるような目で。
「な、なんですかっ!」
「ポン姉、なにかかくしてるゆえ!」
「ちょっと、何を焼いているのよ!」
「葉っぱ」
「うそつきゆえー!」
「何を焼いているのよっ!」
「葉っぱ」
レッドとみどり、わたしを揺すりまくるの。
ああ、もう、せっかくの焼いも、食べる分減っちゃいました。
どうして子供って、こんな時のカン、鋭いんでしょうね。
今日はなぜだかポン吉のお隣なんです。
「ほら、寝ないでドリルをやる」
わたし、ウトウトしているポン吉に肘をお見舞い。
ポン吉はポワポワしたままわたしを見て、
「なにすんだ!」




