第140.5話「子供プール・イン・ポンちゃん」
「だれか……来ないかな~」
その時です、木々がざわめき、カラスがバタバタと飛び出すんです。
「な、なにかが来るっ!」
だれかに来てほしい……思っていたけど、今は違います。
な、なにか、とんでもない「モノ」が急速接近中なのを感じるんだから。
さてさて、夕方になりました。
レッド・スキーさん達や、デザイン学校の生徒さん達は今夜は老人ホームにお泊りなんだって。
ついさっきまで騒いでいたけど、今はみんなで温泉に行っちゃいました。
わたしは一人でお店の片付け。
それも終わって……
「これ、片付けないと」
そうそう、子供プールは出しっぱなしでした。
みんな楽しそうに遊んでいましたよ。
小さいプールで泳げもしないのに……なんで楽しいんでしょう。
むう、わたしも「体験」してみましょうか。
早速スク水に着替えて……
浸かるだけです……
本当に……
浸かるだけ……
冷たくて気持ちいいけど……
一人ぼっちのプールは……
なんだか「秋」の気分ですね……
うん……
さみしいですね~
みんなでワイワイやってるから、こんな水たまりなプールでも楽しいんですよ。
水を掛け合ったりするのがいいんです、きっと。
「なんだか……つまんないかな~」
わたしもあの時一緒にはじけていればよかったかな~
一人プールは本当にさみしいです。
ボッチなんですええ。
「だれか……来ないかな~」
コンちゃんが帰ってくれば……
「おお、ポン、一人で何をしておるのじゃ」
「みんなが入っていたから、わたしも入ってみたんですよ!」
「ふふ、さっきは大人のふりをして……所詮おぬしも子供よのう」
「ふん、設定じゃ中学生くらいって事になってるんです、楽しみたいお歳頃なんですー!」
「ふふ、子供、こども~」
「いいんですよーだ」
……みたいな感じで、いつもみたいに言い合いになったりしそうです。
わたし、頭にきたら水をかけて、コンちゃんもきっと反撃するんだから。
そんな事を考えたら、やっぱり一人ぼっちはさみしいかな~
「だれか……来ないかな~」
その時です、木々がざわめき、カラスがバタバタと飛び出すんです。
「な、なにかが来るっ!」
だれかに来てほしい……思っていたけど、今は違います。
な、なにか、とんでもない「モノ」が急速接近中なのを感じるんだから。
ああ、足音が、地響きにも似た足音が迫って来ます。
「!」
来ました!
赤い袴のたまおちゃんです。
土煙を上げてこっちに向かってるの。
「ポンちゃんっ!」
「は、はいっ!」
「ポンちゃんっ!」
「た、たまおちゃん、どうしたの?」
じっとわたしを見るたまおちゃん。
その目はどことなーく怒ってる感じ?
「なんでコンお姉さまはいないのっ!」
「はぁ?」
「神社で暇だったからネット見ていたら、また水着ファッションショー!」
「やってましたね」
「気付いたのが遅くて……ダッシュで帰って来たのにっ!」
「ファッションショーは大分前だったと思うよ」
「なんでファッションショー終わってるの!」
「だから、大分前だってば」
って、たまおちゃん、大泣きです。
「ファッションショー、ネットで見たんですよね」
「だから! 急いで! 来たのに!」
「見たならいいじゃないですか」
「その後遊んでいたでしょ」
「うん、そうだね」
「わたしもコンお姉さまとイチャラブしたかったっ!」
コンちゃん、レッドやお客さんと水掛け合ってただけで……
イチャラブとかそんなラブコメっぽい空気はさっぱりだったんだけど……
わたしの頭上に裸電球光ります。
いい考えが浮かびました!
「ねぇねぇ、たまおちゃん、わたしが遊んであげようか?」
「……」
「ねぇねぇ」
「なんだか萎えた……ふう」
むかっ!
たまおちゃん、本当にうんざりなオーラを背負ってます。
頭に来ましたよ、せっかくわたしが遊んであげようって言ってるのに!
行こうとするたまおちゃんの肩を「がしっ!」
そのまま引っ張って、子供プールに叩き落とすの。
「バシャーン」なんていって、盛大に水しぶき。
たまおちゃん、びっくりして目をパチクリしてるの。
「わたしが遊んであげるって言ってるでしょ~」
「ポンちゃん……やったわねっ!」
「無視するたまおちゃんがいけないんです! ほらほら! わたし、スク水ですよ~」
「残念」
「なんですってーっ!」
えいえいっ! 水を掛けちゃうんです!
たまおちゃんは……
本気で怒って反撃ですよ。
ふふ、たまおちゃんが本気顔だと、こっちはなんだか楽しい~
「わたしはコンお姉さまの方がよかったのにーっ!」
でも、なんだか、だんだん頭に来ましたよ。
えいえいっ! 水を掛けちゃうんだから!
「ポン姉っ!」
「どうしたんですか、走って来るなんて」
「オレ、勉強も手につかなくて!」
「いつも勉強、手についてないですよね」
「上げ足取るなよ~」




