第131.5話「ポップコーン」
「ポンちゃーん!」
ミコちゃんの声です、なんだかうれしそう。
なにかな?
「どうかしましたか?」
「うふふ~」
「ポンちゃーん!」
ミコちゃんの声です、なんだかうれしそう。
なにかな?
「どうかしましたか?」
「うふふ~」
ミコちゃんニコニコ顔で、アルミホイルで包まれた「なにか」を見せるの。
「コレこれ!」
「なんですか?」
「見てみて!」
「うん?」
ミコちゃんが差し出すソレ。
わたし受け取って……「ポップコーン」だそうです。
「これがポップコーン?」
「そうなのよ、見てみて」
説明書を見れば、これを火にかけてポップコーンが出来るそうです。
「フライパンで作らないんですね……」
「でもでも、フライパンに似てるでしょ」
「言われれば……形はフライパンですね、アルミホイルだけど」
「ポンちゃんはポップコーン、作った事ないかしら?」
「うん、食べるの専門」
「あれって作る時、ポンポン弾けるのよ~」
「ポンポン弾ける……そうなんだ……」
「ポンポン」って辺りがちょっと気になります。
この間「ポン菓子」が来たばっかりですからね。
「ねぇねぇ、ポンちゃん、これ、レッドちゃんと一緒に作ってよ」
「え? わたし? ミコちゃん一緒すればいいのに」
「うーん、そうなんだけど」
「ミコちゃんレッド好きでしょ~」
「でもでも、わたし、柱の陰からこっそり見てる方が……」
「なに、それ」
「あんまり近くでレッドちゃんの喜んでるのを見たら、萌え死んじゃうかも」
本当にミコちゃんはレッド好きーですね。
まぁ、ここはわたしも言う事を聞いておきましょう。
でも……
「むう」
「どうしたの、ポンちゃん?」
「ちょっと初めてだから、コワイかも」
「え? ポンちゃんにもコワイものがあるの?」
「ミコちゃんも言うね、怒りますよ」
「うふふ……それなら一緒してくれる人を付けるわ」
「?」
一緒してくれる人って、誰でしょうね?
で、台所です。
レッドはポップコーンのパッケージにもう獣耳状態。
「はやく! はやく!」
「はいはい」
「ポン姉、はやく! はやく!」
「はいはい……で……」
わたし、嫌な目で配達人を見ます。
一緒してくれるの、配達人。
「あの……」
「何? ポンちゃん?」
「なんで配達人さんなんです? わたし、店長さんがよかった」
「俺もミコちゃんに確認したけど、俺の方が適任なんだって」
「えー、そっかなー」
「まぁ、コレ、おすすめしたの、俺なんだけど」
「そうなんだ……で、どうやって作るんです?」
「火にかけるだけだよ」
説明書を見て……火にかけます。
レッドを踏み台の上に立たせて、バトンタッチ。
「ほら、レッド、揺すってゆすって」
「おお! ゆらしまする~!」
「しっかり揺すらないと、失敗しますよ」
「おお! ゆらしまする~!」
って、アルミホイルが膨れ始めました。
「ポンポン」言い出しましたよ。
「きゃー! なになにー!」
もう、レッド、目がランラン、しっぽフリフリ。
「よかった……この間のポン菓子よりも音が小さい」
配達人、微笑みながら、
「あはは、ポンちゃん、ポップコーン作った事ないの?」
「ええ、わたし、食べるの専門」
「まぁ、俺も普段は袋に入ったのを買ってるから、作った事はないかな」
「これくらいなら『かわいい』ですみます」
レッド、揺すりまくり。
アルミホイル、ポンポン言いまくり。
「わたしもだんだんワクワクしてきた」
「ふふ、ポンちゃんも子供~」
「設定だと中学生なんですー、多感なお年頃なんですー」
「はいはい」
配達人もニコニコ見守ってくれてますよ。
でも、いきなり神妙な顔になって、
「ポップコーンって、ポンちゃんに似てない?」
「は?」
「ほら、すぐにポンポン怒るところとか」
「はぁ! なんだかわたしがいつも怒ってるみたいじゃないですか?」
「今、怒ってるよね?」
「配達人が余計な事を言うからでしょー!」
って、配達人、包丁を取り出して、膨らんだアルミホイルにちょっとだけ切り込みを入れるの。
すると弾けたポップコーンが飛び出してくるの。
「そろそろ完成かな」
「やったー!」
「ホクホクなのは美味しいよ~」
「やったー!」
配達人とレッドは、アルミホイルを火からおろします。
「冷めるまで待ってから……手を洗って来る!」
「はーい!」
レッド、行っちゃいました。
さて、二人きりになりましたよ。
「ねぇ、配達人さん、さっき余計な事、言いましたよね」
「え? 何?」
「『すぐにポンポン怒る』とかなんとか」
配達人の顔が青くなるの。
「今、怒ってるよね」
「覚悟はいいですか?」
「で、でも、本当に似ているし」
「どこがわたしとポップコーン似てるんですかっ!」
「ほら」
「?」
「ポンちゃん怒ると頭からポンポン『怒りマーク』飛び出す」
「!」
「ポンポン出るの、ポップコーンと一緒」
「もう怒った! 叩く! 叩きまくり!」
「こ・わーい!」
ポカポカ!
わたし、配達人を叩きまくり。
配達人はニコニコしてるの。
そこにレッドが戻ってきました。
「て、あらったゆえ~」
って、レッド、わたしの方をじっと見て、
「おお、ポン姉からぽっぷこーん!」
わたしから弾け出る「怒りマーク」を「ハシッ」と捕まえます。
「おお、ポン姉からこんなものがでます!」
レッド、「怒りマーク」を見てニコニコしてるの。
わたし、唇を震わせて、配達人を叩くんです。
「この馬鹿バカばかBAKA~っ!」
わたし、いつも怒ってないモン!
配達人が悪いんです。
でもでも、配達人もレッドもニコニコしてますよ。
むー!
なんだかくやしいーっ!
「ああ、どうしよう、どうしよう」
ミコちゃんが頭をかかえているの。
どうしたのかな?
「ミコちゃん、大丈夫ですか?」
「ポンちゃん……どうしよう」




