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地上へ出たトニーと父
どこへ行けばいいのかわからない父
「家へ帰ろう」
頷くトニー
トニーは家へ帰りたかった
まだ母が亡くなったことに自覚がないトニー
母が温かいオニオンスープを作って
待っているかも知れないと思っていた
さて 家までは遠いので
列車に乗らなくてはいけない
父はポケットに入れてあった
小銭を確認した
「なんとか 二人分はあるな」
しかし駅へ向かう途中
脱走者を探し追いかけて来た警備隊を見つけた父
「おい 行くぞトニー」
バレない様に逃げるが
作業服を着ていたので見つかってしまう
「ん、あそこの奴ら…作業服着てるぞ!」
「奴らだ 捕まえろ!」
「走るぞ トニー!」
しかし
徐々に追いつかれてしまう
すると父が
「おい トニー! トニーは先に駅に行け」
「えっ?父さんは?」
「父さんは追いかけて来てる
奴らを撒いてから駅に向かうよ
だから駅で待っててくれ」
「大丈夫なの?」
「ああ 大丈夫だよ」
そういうと父は叫んで警備隊を引きつけると
違う方向へ走っていった
「おい!こっちだ!」
「待たんか!」
うまく引きつけた
一人になったトニーは駅に着くと
父から預かったお金で切符を買い
駅で父を待っていた
しかし時間が経てど父は来なかった
それでもトニーは父が来るのをじっと待っていた
しかし
脱走者を探しにまた警備隊が駅に来た
トニーは作業着姿だった為
またすぐに見つかると思った
隠れたが警備隊は徐々に
近づいてくる
その時 運よく 列車が来た
列車に乗り込むトニー
バレずに済んだトニーだったが
父が来るのを待たずに列車に乗ってしまった
「どうしよう」
悩むトニーだったが
とにかく家へ帰る事にした
家で待っていれば
父が駅に来てトニーがいなくても
先に行ったと思い
家に来ると思ったからだ
列車の椅子に座るトニー
汚い作業着姿のトニーを見て
他の乗客は脱走した者と
すぐに気付いていた
座っているトニーの前に
一人のおばあさんが座った
「ねぇ 坊や」
「は、はい?」
「どこから来たの?」
聞かれて戸惑うトニー
「お、王宮近くで仕事してきたんだ」
誤魔化すトニー
グゥ〜
お腹が鳴る
するとおばあさんが
「お腹 空いているのかい?」
「う、うん」
するとおばあさんは紙袋からパン出し
くれた
「食べな」
「いいの?」
パンをほおばるトニー
地下のパンとは違い
とても美味しかった
「美味しい 美味しいよ」
涙が出た
「こら 男の子がすぐに泣くな!」
おばあさんは凄い剣幕でトニーを叱った
急におばあさんが怖くなったトニー
〜駅 〜駅
目的駅に着いたトニー
おばあさんにお礼を言い
列車を降りようとするトニー
すると
「待ちなさい! 忘れ物!」
と言いおばあさんは紙袋をトニーに半ば無理やり渡した
「えっ?こ、これ」
驚くトニー
「ほら 早くしないと列車が発車するよ!」
怒った剣幕で
強い口調でそう言うおばあさん
列車を降りたトニー
おばあさんがくれた紙袋の中を見ると
食べ物がたくさんはいっていた
プシューッ
列車の扉が閉まる
振り向くトニー
すると
さっきまで怒ってたおばあさんは
笑顔で手を振っていたのだった