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魔法解放少年  作者: 雅弥 華蓮
第1章 introduction
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4 カーストの恐怖

 教室に戻った亮夜は、「クラス委員長」を決めることになっていた。

 この学校では、魔法が極めて発達しており、多くの面において魔法や機械による自動化が適用されているのだが、意図的にやらせることを除外しても、人力で行わなければならない部分もある。例えば、魔法関連のニュース発行では、ある程度は仕分けできても、最終的に編集するのは人間の手である。今決めようとしているクラス委員長が深く関わるクラス規模の運営においても、人間の思考決定は必要不可欠だ。

 このように様々なことに関して、実行者を決めておくのは重要なことだ。だが、クラスのリーダー格である「クラス委員長」の決定は極めて進みにくい状況にあった。

 学校のシステム上、ある程度の実力主義が発生しており、高い実力にふさわしい立場を得ている者は自尊心を強く満たされる。言うならば、学校内でカースト制度が発生しているようなものだ。さらに、先生側は2重の意味で問題にしていないことがこの意識を強めていた。

 その中で、10組という最低ランクな立場を背負って、1組を筆頭とする上位層と接することに不安を隠せないのも無理はなかった。

 そのうち、クラス内で押し付け合いが始まる始末だった。多くの人は生贄みたいなものだと思っているのだろう。その醜い争いに入っていない亮夜はこの役割の実情を考えていた。

 この役割は学校自体で絡む際に、クラスの代表として必要なものだ。

 確かに上位層がどれだけプライドを振りかざすかは分からない。

 だが、代表者という対等な立場で接することのできる機会だ。

 幅広く魔法師を知ることは、自分の目標にとって大きな意味を持つに違いない。

 このチャンスを棒に降るわけにはいかない。

 たとえ、失った力を取り戻せなかったとしても。

 意味があることだ。

 そこまで思考した亮夜は大きく手を挙げて宣言した。


僕がやります、と。


その一声はクラスの人に大きな影響を与えた。

たちまち、亮夜に賛同する人が続出し、亮夜がクラス委員長に就任することになった。




亮夜がクラス委員長になったことで、10組のやるべき事は全て終わった。これにより、下校を許されることとなり、憂鬱な決め事を終わらせたことで、多くの生徒は喜んでいた。

無邪気に喜んでいない一人、高本陸斗は亮夜に声をかけていた。

「舞式、クラス委員長に自ら立候補するとは驚きだったぜ。お前、見た目に反して積極的なんだな」

「見た目は余計だ。そういう高本君こそ、あんな争いに入らないとは意外だったよ」

「俺はああいう責任の押し付け合いのようなモンは嫌いだ。お前は立派な奴だぜ。ところでこれから学年会議が始まるけど、大丈夫なのか?」

 陸斗の言ったようにこれから学年会議があり、先ほど決めたクラス委員長の10人が顔合わせをすることになっている。

 だが、学校で発生しかかっているクラスカーストが何をもたらすかと、陸斗は不安を抱えていた。

「恐れていたってしょうがない。果たすべきことはやるだけだ。それに、違うクラスの実情を知ることも悪いことではないだろう?」

 肝心の亮夜は不安に思っておらず、それどころか、かなり前向きに取り組む意欲を見せていた。

「そいつは頼もしいな。じゃ、俺帰るわ。またなー」

 陸斗に手をふって、視界に入らなくなったのを確認した後、亮夜は会議室へ向かうことにした。




 1階にある会議室へ向かった亮夜だったが、一度足を止めた。

 中から悪意に満ちた気配を感じ取った。

 集合するべき時間まで1分しかないので、ほぼ全員が集まっていると見ていいだろう。

 つまり、大半がそういう性格に問題のある人物であるということだ。

 魔法を使って中を感知することも考えたが、こんなくだらないことで魔法の使用は憚れた。それに不必要なことをして、無駄に目をつけられて困るのは亮夜本人だ。

 最低限の心構えを持って、亮夜は扉を開けた。

 亮夜の予想した手荒い歓迎はなかった。

 だが、積極的に歓迎する雰囲気でもなかった。

 待っていた9人の生徒は、冷ややかな目線、驚いた目線、歓迎する目線、悪意のある目線と様々な態度であった。

 彼らは、円卓の大きなテーブルに席をつけており、亮夜は一人ずつ眺めた。

 そんな中、亮夜は1人の生徒に目が止まった。

 その1人は3組の、暴漢から助けた女子生徒の鏡月哀叉だった。

 本当はもう一人、目に止まったのだが、見ているだけで不愉快になると亮夜は知っていたので、無理やり意識をそらして別の生徒を見ることにしていた。

 9組は、服越しに見ても立派なスタイルを持つ藤原美里香。

 8組は、眼鏡をかけ、インテリな印象を与える伊藤洋太。

 7組は、ロングヘアでおしゃれな感じの一本理々子。

 6組は、気が強そうで、ショートヘアの本田愛華。

 5組は、だらしない態度が目立つ神谷将郎。

 4組は、態度からして威圧的な黄道礼二。

 3組は、大人しい印象を与えつつも、独特の雰囲気を保つ鏡月哀叉。

 2組は、ルックスは極めて優秀に見える池和林也。

 そして1組は、不良組織のボスみたいな印象を与える次下楼次。

 この9人と共に学年代表として盛り立てていくのかと亮夜は考えていた。__なお、10組を代表して来た亮夜は、生意気なように見える目と髪をしていながら、雰囲気は優しいという、評価のし難い印象を与えていた。

 しかし、近寄りがたい1組の楼次はともかく、9組の美里香は生理的に受け付けない特徴を持っていて、最初から皆と仲良くすることはできそうにないと早々に諦めかかっていた。

 最もそれ以上に諦め始めた理由は、亮夜が席についた時、上級組が待っていましたとばかりに亮夜をいじり始めたからだ。

「おい、10のヤツ、この1組の次下様に礼儀を示さないとは何だ!」

 まず、4組の礼二が亮夜に上級組の礼儀がなっていないと注意した。

 言葉どおり礼儀を示したところで、この後どうなるかは目に見えている。

 だが、形はどうあれ、挨拶をするのは基本だ。

 亮夜はわざわざ律儀に、このメンバーたちに挨拶をすることにした。

「初めまして。僕は10組の舞式亮夜です。よろしくお願いします」

 1組の楼次だけに向けたわけではない、9人に向けた丁寧なあいさつをし、6組以下の4人には好意的に迎えられた。

 しかし、5組以上の、哀叉と林也を除いた3人は容赦なくきつい目線を向ける。

 亮夜は予想通りではなかったとはいえ、特に気にせず席についた。

 最も、亮夜本人に非がないということは、亮夜以外は理解していなかった。

 このことは、学校の不文律で勝手に決められていることで、亮夜が逆らった所で、実質的な処罰はない。むしろ問題にすべきは、上級組への敬意を強制する礼二の方だ。

 一方で、上級組を相手に堂々と逆らう亮夜を見て、下級組は不安になっていた。特に9組の美里香は、見るからにあたふたしていた。

 1組は勝手にこのようなことを振りかざし、2組以下はそれを受け入れる。シンプルな階層支配となっているが、その支配を堂々と無視した亮夜は、言うまでもなく浮いていた。

「まあいい。早いところ終わらせたいのは全員が同じだろう。無駄話はこれくらいにしてそろそろ本題に入ろうか」

 不穏な空気を打ち破ったのは、その階層の頂点に立つ1組の楼次だった。

「そうですね。これから長い付き合いになるので、自己紹介といきましょうか。10組の舞式君はしなくていいですからね」

 楼次に賛同して舵をとったのは、2組の林也だ。彼はまず、話を円滑に進めるための準備をする必要があると思って、このような提案をした。

 先ほど最下層の亮夜が自己紹介をしたので、9組から順に行われた。5組辺りで滞った部分もあったが、2組の林也の影響もあってか、特に問題なく終わった。

「さて、今回行うべき議題は、クラス内の環境と、2週間後に行われる魔法師友好会についてだ。まず、各クラスの環境を主観でいいから話してもらおう」

 楼次が話題を持ってきて、全員が身を引き締める。

 ここでは、10組の亮夜から順に話すこととなった。

 10組は、魔法世界に慣れていないのか、ノーマナーな発言があると亮夜は話した。

 ところが、その発言の途中、礼二が席を急に立った。

「お前が言うことではないだろ!」

 先ほどの強制的な挨拶(と少数を除いてそう思っている)に満足いくような返答をしなかった(と少数がそう思っている)亮夜に対し、礼二が全力でツッコミに入る。

「先ほどのことなら、学校内で決められていることではないでしょう」

 それに対し、亮夜は常識的な反論を返す。

「俺は4だ!テメーは10だから敬意を払うのは当然だろ!!」

「数字はただの目安です」

「俺より強いと言いたいのか!?」

 礼二が再度反論し、さらに亮夜も引き下がらない。そして、実力行使に出ようとする礼二を見て、亮夜を除いた下級組は強い緊張に支配された。今にも始まりそうな乱闘に。

「そのようなことは言っていません。魔法力が優先されることはあっても、魔法知識や体術などなら、違うかもしれないと言っただけです」

 しかし、皆の予想に反して、亮夜は先ほどとは異なり、あっさりと引き下がった。

 ここで、亮夜の真意を見抜けたのは、誰もいなかった。この時、亮夜が恐れていたのは実力行使による魔法勝負ではなかった。彼が本当に恐れていたのは、自身が抱える重度のハンデの露呈だった。これを知られれば、付け入る輩が必ず出てくる。

 亮夜は純粋に魔法師として成長するためにここに来ているわけではない。自分を捨てたあの人物たちを見返すために、ここで確かな実績を手に入れるために利用すると亮夜は考えている。そのためには、多数の分野から様々なものを手に入れる必要がある。自分の本当の力を取り戻すのも重要だが、それ以上に重要なのが、あの一族に悟られずに動くことだった。「亮夜」という名前だけならともかく、真実を知るあの一族にこの情報が漏洩してしまえば、自分の正体を感づかれる可能性は無視できない。その可能性を排除することは亮夜にとって極めて重要だった。自分から喧嘩を買いに行く必要性を、亮夜は認めなかった。

 最も、挑戦から逃げているとも解釈できる亮夜の発言に、礼二は再び切り込んだ。

「何だ、俺に負けるのが怖いか?ああそうだな、テメーは10だからな、4に勝てるはずがないと思うのは当然だ、つまり弱虫で意気地なしのグズだな!あ~はっはっはっ!!」

 熱が入り始めたのか、露骨な挑発が目立っているのが亮夜以外にも見え見えだった。肝心の挑発されている亮夜は全く動じずに、ただ礼二の狂態を鋭い目で眺めていた。

「いい加減にしろ、黄道。今必要なのは、舞式をいじめることではないだろう」

「す、すみません、次元様。我を忘れてしまいました」

「分かればいい。後、「様」は余計だ」

 暴走する礼二を止めたのは、1組の楼次だ。

 亮夜は楼次により解放された形になったのだが、口にはできない不安を抱え始めていた。

 最初に大きなトラブル(礼二が勝手に問題にしただけだが)があったものの、それ以外の組は特に問題はなく終わった。強いていうなら、トップの意識が強い1組がピリピリしている環境だったということくらいだろう。

 次の話題は、2週間後にある魔法師友好会の段取りだ。

「計画はある程度先生たちがまとめている。我らが決めることは、どの遊戯に参加するかだ」

 こちらは話題を差し替えるような事態が発生せず、早い内に魔法なしの一般スポーツに決まった。__礼二はやや不満そうにしていたが。

「以上を持って今回の議題を終了とする。帰りたいものは帰ってかまわぬぞ」

 楼次が宣言したことにより、今回の会議は終わりだ。

 既に時間は午後5時を回ろうとしている。亮夜はできる限り夜美を待たせたくなかったので、さっさと帰ることにした。

 残ったメンバー__特に礼二と楼次__に注意を向けられたが、全てを無視して会議室から出た。

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