0 舞式の兄妹
司闇一族に正体がバレた亮夜と夜美。
二人は、司闇一族に駆け引きをしかけ、自分たちの狙い通りに動かす。
その結果、司闇の屋敷へ潜入することに成功した。
だが、父・呂絶の取引に激怒した亮夜は魔力暴走現象を引き起こし、大パニックに。
学校を破壊しつつも、何とか騒動を終えた亮夜と夜美は、舞式家の自宅に帰還したのだった。
午後になった少し後、亮夜と夜美は、家に到着した。
亮夜も夜美も多くの意味でクタクタであった。
亮夜の起こした魔力暴走現象による、多大な魔力の暴走。夜美が亮夜を止めるために放った、大量の魔力の制御。そして、溢れすぎた亮夜の魔力が暴走したことによる、大爆発。
これだけのことが起きて、まだ普通に生活出来ている点は、異常なのかもしれない。
それでも、一刻も早く、二人とも休みたかった。
破損した装備も含めて、簡易的な置き場に投げ捨てた後、リラックスした服装に着替える。
二人でテキパキ昼食を作り、さっさと食べる。
休息に適したソファに二人並んで腰かけて、亮夜と夜美は大きく息を吐いた。
「お疲れ様、夜美」
「お疲れ様、お兄ちゃん。ホント疲れたー」
「僕もすぐ寝たいけど、安易に生活リズム崩すわけにはいかないしね」
亮夜が本気で休みたがっているのを見て、夜美は違和感を覚えた。
「あれ、珍しく反省とかしないんだ?」
夜美の知っている亮夜なら、今回の件を纏めて、自分と相談をするはずだ。
「勿論、するけど、今は休息をとる方が先だ。まだ思考が不安定だから・・・」
「あ、そっか・・・」
理由としては納得のいくものだ。むしろ、ばたんきゅーとか起こしていないだけ、亮夜のタフさに感心していた。
「まさか、あんなことを言われるとはね。思ったより好感触だったのは驚いた」
「意外だったよね。あたしはともかく、お兄ちゃんは・・・」
「・・・そうだね。あの時が、夢のように感じる・・・」
6年前。
亮夜と夜美が司闇の屋敷にいた頃のことだった。
亮夜はことごとく見下され、一度は死んだことにされた。
それを、夜美が助けて、今の状況に至っている。
「違うよ。お兄ちゃんを選んだのは、まぎれもない現実。そして、今、こうして生きているのも現実だよ。そして、あの人たちがお兄ちゃんを見下しているのも現実・・・!」
「夜美・・・」
妹が、何を思っているのかは、亮夜には大体察しがついた。それが分かっているから、亮夜の制止もごく僅かであった。
「あ、ごめんね。心を落ち着けないと」
しかし、夜美には効いていたようだった。
もう一度、お互いに心を落ち着けて、リラックスした雰囲気が流れる。
「今なら、少しは思い出せるよ。6年前の、目を背けてはいけない現実を・・・」
亮夜が静かに呟く。
夜美は、6年前に、兄がどのような仕打ちを受けたかを知っている。
知っているから、亮夜を心配する。
「ありがとう、夜美。でも、もう逃げない。これが、僕たちに課せられた宿命だから」
亮夜はそう認識している。
その点は、夜美も同じであった。
二人の意識は、6年前に遡る__。




