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魔法解放少年  作者: 雅弥 華蓮
第3章 birth
21/121

2 チケット争奪戦

「諸君!魔法の未来を見たいか!未来を目の前で見られるチケットが欲しいか!今、ここに20の選ばれし者を選抜する!己の、運と、力と、知恵を、駆使して、未来の切符をその手で掴み取れ!!」

 雷侍宮正の演説により、体育祭前哨戦ことチケット争奪戦が始まった。

 それは9月末、トウキョウ魔法学校における前代未聞の大会であった。

 何といっても、勝利商品はレア中のレア、魔法学会公表の参加チケットなのだ。しかも、今回は今までの常識を覆す大発表となる可能性が高い。

 それが景品となれば、欲しがるなという方が、無理のあるものだろう。

 参加総勢は500人を超えていた。

 ちなみに、参加しなかった5割が既にチケットを入手している。出場者の中にも、お遊びということで、既にチケットを入手している者も少なくなかった。

 1年10組で、数少ないチケット入手者の一人、亮夜はというと__。

 観客席で高みの見物であった。

 亮夜の知り合いと言える人物の中には、高本陸斗や黄道礼二、藤原美里香や本田愛華、池和林也なども参加していた。

「亮夜君、参加しないんだ。こういうのにすごく強そうだけど」

 隣で話しかけてきたのは、同じくチケット入手者である高美であった。

「チケットもあるし、不必要なもめ事は嫌いだからね」

 つまり、参加する必要はないということだった。

 それよりかは、ここでのんびり見物している方が建設的であると思った。

「では、最初の試練は運命の決断!選ばれし者たちによる試練を選べ!誤れば即失格!生き残ってみせよ!!」

「えー、○×クイズです。生徒会と非参加者による問題が出題されます。間違えたら即脱落。では、頑張ってください!」

 実況がやたらとのりのりであることを、亮夜は気にしないことにした。

 ちなみに実況席付近は生徒会メンバーで占められており、実況が宮正、解説が恭人と颯樹であるようだ。

「では、最初の問題!」

 一問目が始まるということで、参加者は身構える。

「魔法六公爵、風を扱う一族の名は、「いふう」である!〇か×か!」

「確か、尉は尉土のはずだ!だから×だ!」

「確か、炎、光、風のはずだ!だから〇だ!」

「どうせ×だ、そうに決まっている」

 そんな風に選ばれたのは、×が多かった。

「正解は、×!「将風」です!」

「ちくしょおお!!」

「そうだった、そういう名だった!」

 早くも数80人が脱落した。

「では、次の問題。雷侍宮正生徒会長には、姉がいる。〇か×か!」

「おおっと、×に集中している!実況の様子は!?」

「フフフ・・・」

 どうやら、宮正は違う世界に入り始めているようだ。

 亮夜はこれを×だと知っている__宮正にいるのは、兄と妹が一人ずつ__のだが、どうしてこんなことで盛り上がるのか、亮夜には少々理解し難いことだった。

 この問題は、〇を選んだ数名が脱落した。

次に出たのは、トウキョウ魔法学校のあるイベント問題が〇。ここで一気に150人近くが脱落した。

続く問題は脱落者が少数続きであった(ある事件を起こしたのは、RMGである、とか、学校の全生徒数は862名ではない、とか、10年前の魔法学会公表で発表されたのは、ユニゾン魔法である、とか)。

「さあ、脱落者が少なくなってきました!それでは最後の問題!!」

「人気ジュニアアイドル、愛姫ステラは魔法師である。〇か×か!」

 その問題が出てきた時、亮夜は思わず不自然な動きを出してしまった。

 この問題を用意したのは亮夜ではない。

 つまり、ステラの素性を知っている人がいるということだった。

 考えられるのは、エレメンタルズの二人か、直接会ったことのある鏡月哀叉の三人だった。

 最も、これを今、考えた所で意味はない。

 そう思って行く末を眺め直した。

 ここで×を選んだ約200名が脱落した。




「さあ、残された280人の選手。彼らは知恵で残ったのか、運で残ったのか、果たしてどうなる!さあ、次の試練は強運の試練!9の領域を選べ!運命を共に背負うな!!」

「9個のブロックのどれかに入ってもらいます。生徒会が指定したブロックと同じのを選んでいたらアウトです」

 つまり、9分の8の運任せということだ。

 今、亮夜の知り合いで残っているのは、陸斗の他、美里香や林也、賀川などがいた。

 そして、運任せの戦いが始まった。

 残った約280人が、およそ9分の1のペースで脱落していく。

 20人、20人、12人、5人、21人、14人__。

 8回終わった時に残ったのは、約140人であった。

 生徒会としては、最後のためにもう少し人数は__せめて100人に__減らしたかった。

「運命は変わった!これより、選ばれし者たちが100を切るまで、サドンデスだ!!」

「予定を変更して、生き残りが100人になるまで、延々と繰り返します!」

「!!」

 残っていた人たちは戦々恐々して、より強いプレッシャーを覚えた。

 その後も、順調に人数が減っていく。

 ルールもヒートアップして、2か所のどちらかに入ったらアウトと、さらに難易度が悪化した。

 延長戦が5回を迎えた時、ついに100人を切ったことにより、運任せ戦は終了した。

「さあ、最後の試練!最後は解放の場で始まる!数々の試練を全て乗り越えて、選ばれし20の宝を掴み取れ!!」

「最後は外に出て、障害物競争です。全ての障害物を乗り越えて、先着20位に商品が授与されます」




 外に出た陸斗は、いよいよだと己を鼓舞していた。

 なんだかんだ、運よくここまで来ていたが、最後は身体能力の勝負だというなら、自分の有利な場だと思っていた。

 上の学年、上級組になればなるほど生き残りは多いのだが、1年10組は1人であった。1年8組や2年10組などに至っては全滅していた。ちなみに、事実上のトップチームである3年1組は6人残っていた。

 それにしても、この障害物競争、中学生時代にあったものとは格が違いすぎると、陸斗は思っていた。

 距離は目測で1キロ程度。道中の仕掛けは20個近くある。

 もはや軍事訓練の類ではないかと本気でそう思っていた。

 だが、これを突破して、チケットを手に入れなくてはならない。

 人並に向上心の高い陸斗にとって、このシチュエーションは実に燃えるものであった。

 そして、約100人による、一斉レースが始まった。

 さすがに100人も同時に走れば、凄まじい押し合い、弾き合いが目立つ。

 先頭を走れなければ地獄だ。

 陸斗からは見えないが、弾かれた一部の選手が、密集地帯から外れて倒れていた(コースアウトになったら、障害物前後のチェックポイントからやり直しである)。

 陸斗は、この地獄団子を前へ、前へと押し進めていた。

 最初に待っていたのは、土のハードル。

 団子の最前列に出た__それでも先頭に30人近くいるが__陸斗は、これを軽々と超えていた。

 次に、狭い道かグネグネ長い道かを選べる障害物を、陸斗は狭い道を突破した。

 その後も平均台、長い坂道、急斜面、飴玉キャッチ、足場渡りを、次々と突破していく。

 折り返し地点に到達した時には、陸斗は7位にまで上がっていた(ちなみに、最下位は、まだ3つ目の仕掛けであった)。

 さすがに距離も長く、集中力も多大に使うので、疲れをはっきりと自覚していた。

 その後も、ロープ上り、ベルトコンベア、幅跳び、スラロームなど、集中力と体力をどんどんそぎ落とすような仕掛けが待っていた。

 極めつけは、18個目の仕掛け__。

 綱渡りであった。

 道は3つあるからカオスな押し合いにはなりにくいのだが、狭すぎて非常に落ちやすいので、上位陣が密集を起こし始めていた。

 陸斗も既に3回は落ちていて、その時には40人近くがここで止まっていた。__この時点で、既にゴールしていたのは4人であった。

 大半の人が下手に奪い合えば、乗りこめてもすぐに足を滑らすと学習したので、意外なことに、綺麗な行列ができていた。

 中には手と体を綱にちゃんと包めて落ちないようにした人もいるが、狭すぎる足場はそれでも容易に通してくれず、わずかなバランスの崩れで宙づりになって落下したのも少なくなかった。

 綱に乗る前は意外と平和なのだが、乗り込んでからは修羅場だ。押して落としたら、自分も落ちたり、しがみついた相手を踏みつけて落としたりと、もはや何でもあり(ただし魔法は禁止)の乱闘紛いになっていた。

 ここで陸斗が披露したのは、全くの別物な作戦であった。

 陸斗の番が来た時、陸斗は綱そのものを揺らした。

 上に乗っていた10人近くが落ちたのを確認して、陸斗は前へ躍り出た。

 しっかりとしがみついて、バランスを整えて一気に前進する。

 後ろの人物が陸斗の真似をして、綱を揺らして落とそうとしている。

 だが、陸斗はあえてしがみつかずに、下半身と腕だけを使ってバランスをとった。

 上半身が安定しているので、問題なく進めることが出来た。

 そして陸斗は、14位で綱渡りを突破した。

 19個目の仕掛けは、目隠し迷路。

 それなりに時間はかかるものの、綱渡りに比べれば、遥かにましだった。

 最後の仕掛けは、あたり箱を当てるという、最後の最後で運任せといえる仕掛けだった(チケット不必要者の場合、ここにたどり着いた時点でゴールとなる)。

 用意された箱は200個もある。

 先についていた6人が、はずれを引いては次の箱を開けるという苦行を繰り返していた。

 陸斗はあえて奥側から選んだ。

 多くの選手が真ん中手前から選んでいて、まだ残っているということは、はずれ、もしくはスカ(既に当たりを引いていた)ばかりであると思ったからだ。

 はずれ、はずれ、はずれ__。

 何度もはずれを引いて、その間にも別の選手が当たりを引いて、陸斗が焦っている中で、9個目に開けた箱の中に__。

 当たりが入っていた。

「よっしゃあああ!!!」

 陸斗は、20分44秒という記録で、16位で争奪戦に勝利した。




 余談だが、運営は綱渡りの難易度を上げすぎたので、本採用した時には、もう少し難易度を落とそうと、反省する姿が見られたという。

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