2 最後の希望
生存確率ゼロパーセント。
その言葉を聞いた時、夜美から全てが抜け落ちていくことを感じた。
「そんなこと...あってはならない...」
今、夜美を動かしているのは、亮夜と共にいた時の、過去の自分。
死に等しい事実を受け入れらない夜美は、現実を否定して、妄執に囚われていた。
「だが...それは事実だ...。とてもつらいことだが、受け入れなくてはならん」
「あなたたちも、司闇と同じ考えなの!?」
妄執はやがて、狂気的な思考に繋がった。
「いつもそうよ!どうして、あたしとお兄ちゃんは否定され続けなきゃいけないの!生きていて何が悪いと言うのよ!」
完全にキレてしまった夜美相手に、医者の二人は手がつけられない。
「あたしがお兄ちゃんのこと好きでいるの、そんなにおかしい!?だからあたしは、全てを捨てて、亮夜お兄ちゃんを選んだのよ!!」
「それなのに、まだあなたたちはあたしたちを奪うの!?あたしたちが何をしたと言うのよ!!」
「どうして、魔法が不得意になったということだけで、こんなにも爪弾きに遭わなくてはならないの!?実力だけの世界に残るものは何よ!!」
「もし、あたしもお兄ちゃんも始めから魔法が使えなければ、こんな苦労はしなかったのに!お兄ちゃんは理不尽な目に遭うこともなかったし、あたしの存在で、お兄ちゃんを苦しめることもなかった!!」
「いや、魔法を力にしか使わない魔法六公爵、そして司闇が悪いのよ!そんなくだらないいたちごっこが続くから、お兄ちゃんの犠牲者が生まれるのよ!!」
「プライドとか、見栄とか、大人は下らないことばかり!あたしを守るために、社会の闇に飛び込んだお兄ちゃんの気持ち考えたことある!?」
「誰も守ってくれない世界で、ただ一人、戦っていたのよ!!自分を、あたしを守るために!!」
「そんな理不尽が許されるはずがないわ!なのに、政府はそれを気にしなかった!司闇がそれを作り上げたのよ!!」
「こんな現実はもうたくさんよ!望みを持つことがそんなに悪い!?夢は叶えるもの!誰でも干渉し合うものじゃないわ!!」
「なのに...!!なのに...!!あなたたちのせいで、お兄ちゃんは...!!!」
今の夜美は、正真正銘の子供だった。
大切な物を失って、癇癪を起こすような、ただの子供だった。
だが、夜美はその事実に気づいていない。いや、気づいていたとしても、何の影響もなかっただろう。
夜美の瞳に浮かんでいたのは、怒りでもなく、憎しみでもなかった。
本当に浮かんでいたのは、とても深い悲しみだった。
涙でぐずりながら、流れ落ちるのも気にせずに、ただ必死に叫ぶ姿は、正に憐れな子供だった。
夜美の本音混じりの演説を前に、二人はただ聞いているだけだった。とんでもないワードが時々出ているのだが、それを突っ込む気にもなれなかった。
思いの丈を存分に語り、息切れを起こし始めた夜美。
一度暴走しきった意思が冷え切り、冷徹に、静かに新たな感情が沸き上がる。
「あなたたちが...お兄ちゃんを殺した...」
この人たちは、亮夜を見捨てた、愚かな人たちだ。
あの人に代わり、悪を、滅する。
流れなくなった涙の代わりに、強い殺意が宿ろうとしていた。
「い、いや、待て!あくまで「0」に等しいということだけじゃ!」
しかし、夜美が刃を研ぐ前に、男性から急に入ってきた言葉に、刃を引っ込めた。
「まだ生きてはおる!彼自身の精神が完治すれば、きっと無事だ!まだ希望を捨ててはならぬぞ!」
自分で言っておきながら、気休めでしかない事実を前に、男性は内心、諦めていた。
今の亮夜の状態から完治するなど、それこそ奇跡が起きないと無理な話だ。
ほぼ死に等しい状況から、まだ生きているという要素だけで、希望を持ち続けられるとしたら、よほどの楽観的な性格の持ち主か、相当な自信家、そして、藁にも縋りたい状況といったくらいだろう。
正直、この程度の説得で、彼女の暴走が収まるとは思わなかった。
「お兄ちゃんは...助かる?」
幸いなことに、男性の説得は、夜美に届いた。
「「0」と「1」は違うと言うじゃろう?ゼロパーセントでなければ、希望を捨てるには早い!」
夜美の感情は冷静に処理され、深い思慮に陥った。
「...そうだよね。ごめん、お兄ちゃん。どうかしていたよ...」
3分近くかけて、ようやく夜美は落ち着きを取り戻した。
いないはずの亮夜に謝ったのは、彼女の考え方を考慮すれば、当然というべきだろう。亮夜に遠く及ばなず、尊敬して、何よりも大事に想っている夜美が、まず亮夜を第一に考えるのが、彼女にとって、最優先であるからだった。
当の医者たちは、まだ混乱していると思ったが、先ほどの狂気に比べれば格段にマシなので、口には出さなかった。
「...ん?」
次にどう説明すべきか悩んでいると、男性の通信機から連絡が入った。
「わしじゃ。...そうか、ようやく分かったか」
通信機を切り、男性は夜美に再び顔を向けた。
「そういえば、お主の名、まだ聞いていなかったな」
夜美は知らないが、この男性たちは既に亮夜たちの名を知っている。それでも尋ねたのは、社交辞令、クールダウンという側面が強かった。
「舞式夜美。もう分かっていると思うけど、舞式亮夜お兄ちゃんの妹です」
「分かりました。舞式さん、こちらについてきてください。あなたのお兄さんについて、説明したいことがあります」
改めて名を名乗った夜美は、医者である男性と女性についていって、部屋から出た。
__やけに空気が重い。
通路を歩いている中、夜美はそう思った。
シリアスな状況であることを抜きにしても、ここはどうも、重力的に重く感じる。窓がどこにも存在しないことも、その感覚に影響を与えていた。
割とどうでもいい(と夜美は思っている)ことを考えつつ、夜美たちはとある大扉の前までたどり着いた。
自動ドアみたいな見た目をしながら、横にスライドさせて、ドアが開く。
その中にあったのは__。
「お兄ちゃん!?」
夜美の実の兄、舞式亮夜がいた。
夜美が寝込んでいた部屋よりも大きい部屋の中央に、大きめのカプセル。その中に、薬が混入していそうである赤紫色の液体が充満しており、その中に亮夜が目を閉ざしていた。最も、亮夜は顔しか見えず、それ以外は、カプセルで覆われて見えることはなかった。
一方、カプセルから離れた奥側は、大量のコンピューターがあった。おそらく、ここで色々チェックの類をしているのだろう。
まるで悪の組織の実験室を連想させるような配置と構造に、夜美の意識が再び爆ぜそうになったが、無理に落ち着かせた。
「一体...これは...?」
それでも、夜美が呆気にとられるのは避けられなかった。
カプセル内に入っている液体は、特殊な薬品だ。肌を通して、自動的に吸収できるように改良された水である。さらに、酸素も含まれており、二酸化炭素もこの液体を通じて排出することが可能なので、生命の維持自体には難儀しない。
ただし、肌を通す関係上、最低でも首から下までは浸す必要があり、安定を考慮するならば、結局、全身を浸からせる必要がある。また、同様の理由で、これを使用するならば、どうしても全裸にならなくてはならない。本来、カプセルの下半分のカバーは必要ないが、頭部以外が見えないのは...まあ、そういうことだろう。
「現在、専門の所に、データを送る準備をしておる」
「待ってください」
どうやらこの医者たちのリーダーであった男性が説明している所に、夜美が割り込んだ。
「お兄ちゃんのデータ?一体、何を調べて、何を送ろうとしたのですか?」
「...どうやら、こいつらが考えていた予想は、遠くなかったそうじゃな」
しかし、夜美が止めようとしたのを見て、男性はある事実を推測した。
「司闇なのか、明鏡なのか、それとも...それだけのことだと理解してもらって構わないか?」
この推測は大体合っていたので、夜美は頷いた。
亮夜のデータを調べていた間、あまりに滅茶苦茶であったため、研究グループにおいて、様々な予想がされた。
__エレメンタルズの成れの果て__。
__司闇の実験台__。
__前代未聞のイレギュラー__。
等、仮に事実だとしたら、大問題になりかねないほどのデータだった。
魔法界は、日々、多種多様な発展が続いている。
その中には、遺伝子調査も含まれていた。
特定の遺伝子によって、ある程度の魔法の優劣は公開されているが、実態はそんな生易しいものではなかった。
遺伝子の組み換えや調整などが行われたのが、魔法六公爵とエレメンタルズなのだが、彼らが誕生した影には、数々の失敗作が生まれていた。しかし、それだけの調査の甲斐あって、魔法才能と遺伝子の法則は、常識的な範疇ならば、大した影響がないということが判明している。残念ながら、この事実は魔法六公爵でさえ、知り得ない事実だが。
なぜなら、遺伝子改造が横行すれば、魔法によるパワーバランスが崩れてしまうからだ。事実、「司闇」がそれの一部を持ち出している時点で、半ば崩壊しかかっているのに、さらに崩壊の種を増やせば、世界大戦どころか世界滅亡にすらつながりかねない。
それに対し、亮夜の身体からもたらされたデータは、これまでの研究を覆す結果だった。
遺伝子データが異常なことになっていることに加えて、そもそもの基本構成要素が普通の人間と異なる。実の妹である夜美と比較しても、血がつながっていると明確に示す根拠とならなかったほどに。
その亮夜が使用した魔法もまた、既存のデータを覆す魔法だった。現在の理論では、どうやっても説明不可能な魔法を、亮夜が使用したのだ。
一つだけ、現在の理論に合わせるならば、神祖魔法と言えるかもしれないということだけだった。
亮夜のどの要素に関しても、一歩間違えれば、世界を揺るがしかねない。
「...それで、亮夜君の精神に改善は見られたか?」
「いえ、変わらず精神汚染が進行しています」
「...むう」
芳しくない状況に、医者たちのリーダーである原川伯井は、うなり声をあげた。
「精神汚染...それが、精神の暴走ということだね」
夜美の推測に、伯井を含めて頷く。
「一口に精神暴走といっても、様々な種類がある。亮夜君の場合、疑似人格が現れておる」
「疑似人格?」
「二重人格に近いものじゃ。それくらいなら、分かるだろう?」
夜美が頷いたのを確認して、伯井は続ける。
「しかし、その疑似人格が、大量に現れておる。それぞれが極めて強い気質を持ち、本人の本来の精神を壊す...だけならまだいい方じゃ」
更なる嫌な予感に、夜美は身震いするものの、目をそらさなかった。
「この中に、極めて強い邪心が現れておる。もし、この邪心が本質的に目覚めてしまえば、最悪の犯罪者になりかねない。この事実が分かった時点で、亮夜君を殺すか否か、酷く争ってな...」
夜美の瞳に、ショックは現れなかった。
代わりに宿っていたのは、強い怒り。
夜美の威圧感に怯みつつも、説明するべきことを続けた。
「...ひとまず、殺すことは問題あるということで、強制的な睡眠をとらせたのだが、今度は魔法が暴走を始めてな...仕方なく、新開発した特殊カプセルで、生命レベルを最低限まで落として、ようやく落ち着かせたところじゃ。しかし...」
暴走を起こした原因は、夜美は既に知っていた。
問題は、この調子だと、亮夜は__。
「結局、どうするかは、今でも議論中。精神暴走を抑える方法も不明。この状態も、いつまでもつかは分からん。限りなく手詰まりに近いというわけじゃ」
想定は出来ていたので、声を荒げることはしなかった。
現在、夜美の思考は、亮夜を救う可能性に囚われていた。
「...もし、亮夜お兄ちゃんの心を救うことが出来れば...」
「助かるかもしれん」
夜美の出まかせのアイデアに対し、伯井はそう口にした。
「だが、そんな都合のいい魔法は」
「ある」
しかし、そんな方法は、現在の医学には存在しない。
諦めを口にしようとした時、夜美が否定した。
「お兄ちゃんが作った魔法「ソウル・ダイブ」。あの魔法があれば、お兄ちゃんの精神に入り込むことも出来るはず」
4月末の「嗣閃」が起こした事件の後、亮夜が手に入れた「ソウル・オーバー」の魔法を改造したのが、「ソウル・ダイブ」だ。
魔力で心を操るという点を応用して、心に直接入り込めるように変更したのだが、オリジナルがオリジナルだったので、理論上は可能というレベル、つまり、テスト待ちの状態までしか完成していなかった。
夜美が簡単にこの魔法について説明すると、伯井たちは目を見開いた。
「...確かに、その魔法が使えるとするならば、不可能ではないかもしれないが...」
亮夜を救う現実的な可能性であるというのは、誰もが認めた。
だが、それはあくまで、0%ではないということだけ。
テストもしていない、全くの未知の魔法を、ぶっつけ本番、しかも、命がかかっている状態なのだ。
この問題点を、夜美を除いた全員が共有していた。
一方、夜美はこの点を問題にしていたわけではなかった。
正確に言えば、この魔法が入っているデータをとってくることに関して問題があった。
「...でも、その魔法は家にあるの。今から取りに行けるのかな...?」
「その点は問題ない」
夜美が根本的な問題点を指摘すると、伯井がそれに対する解決案を出した。
「上の階にいる俊道早美は、補助装置ありとはいえ、完全な「テレポート」の使い手。行って戻ることも十分に可能じゃ。話をつけてくるから、ついてきなさい」
「テレポート」は、「司闇」でも使われている技術の一つ。簡単に言えば、瞬間的に移動する魔法だ。ただし、無条件で使えるのは、未だに闇理くらいで、その闇理でさえ、使用する場面は少ない。亮夜たちは知らないが、専用のデバイスを使って、拠点を行き来するような使い方になっている。政府も、どうやら「司闇」と同じ発想に至ったようだった。
伯井に連れられて、階段を上った夜美は、新しい部屋に入り込んだ。
その部屋には、白衣を着た、高身長でスタイルのいい、髪の短い女性が何やら準備をしていた。
その人物こそが、俊道早美。
24という若さにして、この病院の看護長の一人を務めている。しかも、1年前は魔法政府直属の一介の隊長であった。
しかし、成果こそあげられたが、ある事件によって失脚させられた後、オオサカ大病院に所属するようになったという、エリートなのか、よくわからない人生を送っていた。
「早美君。実は__」
伯井は、早美に現在の事情を大雑把に説明した。
「そう...舞式さん、そこに立って、目を閉じながらあなたの行きたい場所を強くイメージして」
もし、亮夜がこの場にいたら、「司闇」のやり方と同じだと思っただろう。
最も、亮夜の時は外に行くことしか考慮されていなかったのに対し、今回は、対象者の望む場所に移動することが出来るので、上位互換と言える。
無論、今の夜美にとって、何の影響もないが。
眼を閉じた夜美は自分の家の地下をイメージした。
身体が飛んだような感覚を味わった。
眼を開けると、いつも見ている地下室に夜美は立っていた。
ようやく戻って来れた家に、少し感動を覚えたが、浸っている余裕はない。
亮夜がよく使っていたデスクの前に座って、端末を起動。
以前、教えてもらったパスワードを入力して、準備完了だ。
パスワードを使うことから考えても、基本的にみられることを想定していないはずだが、亮夜のまとめてあるデータはかなり分かりやすかった。
(もしかして、あたし一人で動かすことを想定して...)
そこまで考えて、夜美は違うと思った。
亮夜は怠惰な一面がほぼなく、こういった所でも、乱雑にせず、使いやすさを重視している。
おそらく、整理整頓が染みついているから見やすくしてあると夜美は思い直した。
兄の気質のよさに密かに感謝しながら、「開発中の魔法」のフォルダを選択して、「ソウル・ダイブ」のデータを開く。
中には、大量の文字で構成された魔法式が格納されていた。
その文字を、大急ぎで速読する。
文字だけで判断するのは、夜美はおろか、亮夜でも無理だろうが、所々の文字が、以前確認した、「ソウル・オーバー」の魔法式を連想させる。
それはさておき、端末にデータディスクを投入して、コピーする。
少し古いタイプなので、最新設備は使えないが、これを通すしかない。
無事にコピーをし終えた後、「テレポート」の指定時間まで後5分。
今回の「テレポート」は往復を行うことを前提としていて、発動者の魔法データを保存することで、超長距離だとしても、「テレポート」をかけ直すことが可能だ。
ただし、事情が事情なので__亮夜も夜美も、個人で持っている端末はほぼ機能しない__、離れた後に連絡をとることができない。また、再発動するまで、魔法を維持し続ける必要もあるので、予め時間を設定しておく必要があった。
何かを持ち込みたい気持ちはやまやまだが、変に勇み足をするわけにはいかない。
その後、夜美は「ソウル・ダイブ」のデータを持って、オオサカ大病院に「テレポート」で戻された。
本来、新魔法を使うならテストなどが必要だが、残念ながら試す時間はない。出来ることと言うと、最低限のチェックをするくらいだ。
この病院にも、魔法式を扱うプロはいたので、そちらに最低限の解読を任せられながら、夜美は様々な支度を行った。
亮夜をあからさまな集中医療室から離して、個人で使うような、かなり小さい医療室に移動させた。最新のカプセルは、取り外しや移動も難しくないので、特に手間取ることはなかった。
その部屋で、夜美は身につけているものをすべて脱ぎ、亮夜のいるカプセルの前に立っていた。
「__こちらがとれることは以上じゃ。もう一度警告するが、オヌシの命は保障できん。それでもよいな?」
「大丈夫です」
この部屋は、集中医療室とシステム的に繋がっているだけで、設備はほとんど差異がない。それでも移動させたのは、夜美が全裸になる必要があるからだった。
この部屋にも、監視カメラがあるだろうが、女性スタッフが目を光らせているらしいので、それほど心配はない。口止めしたとはいえ、夜美はさほど信用していないのだが、直接見られることとはわけが違うので、精神的には少し楽だった。
最も、亮夜を救うという、背に腹を代えられない状況の今、夜美にとって全裸を見られるなど、どうでもいいことなのだが。
「それより、あちらの件は大丈夫ですよね?」
「話すと長くなるが、問題はないはずだ」
「そうですか」
ここに来る前、夜美はある懸念を伯井たちに伝えてある。
驚くほどあっさり対応してくれたことに、訝しく思ったが、事情が事情なので、さっさと対応してくれたことはありがたかった。
「始めてください」
一転して、夜美の声色に強い気迫が宿る。
「では、カプセルを開く。中に入ってくれ」
斜めにされたカプセルの上部分が開く。
その中には、亮夜の顔が剥き出しとなっていた。
夜美は迷いなく、カプセルの中に入り込む。
「では、頭部を格納する。意識を出来る限り抑えるのじゃ」
カプセルが閉じ、睡眠ガスが充満してきた。
夜美は亮夜に身体を預けて、意識を虚無へ送りこむ。
(待ってて...お兄ちゃん。必ず助けてみせる...)
カプセル内に再び充満された特殊液体から通されるデータにおいて、夜美の精神は全く反応しなかった。
「「ソウル・ダイブ」発動」




