8 希望無き逃亡
その頃、夜美は自室で待機していた。
言うまでもないが、夜美は、ここに来てはならない人物だ。表向き、家の都合で席を外せないということにしてあるので、亮夜たちに見つからないようにルートを組んでいる。
今日は、亮夜たちは自由研修。つまり、ホテル外ならば、見つかる可能性が0に近いわけではないので、自室で暇を潰していた。
ほぼ一日を、ホテル内に引きこもる必要があるので、退屈するのは避けられず、何をしようかと、のんびりと考えながら、携帯端末から魔法学を読んでいた。よく言えばまったり、悪く言えば非生産的であった。
そんな中、夜美が持っていた携帯端末が応答する。
嫌な予感がしつつも、夜美は携帯端末のスイッチを入れた。
「夜美、すまない、やられた!」
いつになく、亮夜の切羽詰まった声。間違いなく、とんでもなく嫌な予感がするのだが、夜美は無理に落ち着けて、亮夜に続きを促す。
「「司闇」に目をつけられた!!」
「何だって!?」
だが、身構えていながら、夜美の思考回路はパニックに陥りそうになった。
「どうして」
「理由はいい!それより、僕と合流してくれ!!」
無難なやりとりさえ、拒絶する亮夜。
夜美は確信した。
これが、前代未聞の危機であるということを。
「分かった」
先ほどまでの、少し気怠い雰囲気はどこにいったのか、夜美の声色と態度に、強い覇気が現れていた。
「それまで無事でいて!!」
まともに出る時間も惜しかった夜美は、持ち込んだ道具を背負い、バルコニーから飛び降りた。
ホテル近くの森に隠れていた亮夜は、通信を切って、どうすべきかを考えていた。
「司闇」の連中が、かつてないほど、総力をあげてここに来ている。
この状況をどうするにしても、夜美の力は必要不可欠。
だが、その後にどうすればいいかは全くの検討がつかない。
正面から戦うのは、自殺行為に等しいし、時間を稼ぐにしても、何時間、時間を稼げばいいか想定できない。逃げるにしたって、トウキョウ方面へは、安定した移動手段がない。ヒョウゴやシコク地方に逃げれば話は別だが、そうなったらそうなったで、別方面の問題が考えられる。
周囲への警戒を最大限に高めながら作戦を練っていると、横から強い気配を感じた。
亮夜がその気配に振り向くと、見慣れた制服を着た男性がしゃがみこんでいた。
「恭人さん・・・!」
「大変なことになっているようだな」
冷宮恭人が、なぜか周りから隠れているかのように現れた。
「安心しろ。お前を捕まえにきたわけではない。しかし、想像以上に厄介なことになっているようだ」
そう言いつつも、恭人の態度には焦りが見えない。あくまで、事務的に伝えているからなのか、己の立場を弁えているのか、それとも、この事態への対策は万全なのか。
一方の亮夜は、少しはほっとしたものの、気を抜いている素振りは全く見られなかった。むしろ、恭人の発言が引っかかって、かなり緊張しているのが、恭人にも分かるほどだった。
「連中の話している内容を盗聴してきたが、お前を本気で捕まえるみたいだ。しかも、先生や生徒を含めて、全員がな」
「・・・!」
ホテルを抜け出す前に、生徒の一人に発信機をつけておいたのだった。おそらくバレるのは時間の問題だが、重要な情報をとれたのは、恭人にとっても大きい。
「お前が犯罪者であるか否かはともかく、私は表向き、関与しない立場を貫かなくてはならない」
司闇は、今回の事件に関して、全てを亮夜になすりつけるつもりのようだ。恭人は、その危険に気づいて、人質にされる前に撤退したというわけだろう。
「だが、政府まで敵に回される事態になれば、確実に奴らが一番得をすることになる。どうにかするにしても、通信妨害までされている以上、一筋縄ではいかない」
「どうするつもりですか?」
「帥炎殿に直談判しに行く。魔法六公爵が説得に応じれば、お前の立場は一応、守られるからな」
一応、というのが、どの程度なのか、亮夜には理解できた。
「恭人さん、すみません。僕のせいで・・・」
「お前のせいじゃない。お互い、運が悪かっただけだ」
雑ではあるが、慰めてくれているのだろう。人の感情に鈍い__ただし、悪意を除く__亮夜でも、少しは理解できた。
僅かに感動を覚えていると、また違う人物が、亮夜の意識に引っかかった。今度は、はっきりと分かる、多大なる幸運が。
その人物に振り向いて、亮夜が笑みを見せると、恭人も合わせてそちらに振り向いた。
こちらに気づいた人物は、サングラスをつけたまま、亮夜たちの元に音もなく飛び込んできた。
「夜美、無事でよかった」
「お兄ちゃんも無事で何よりだよ。で、どうして恭人さんがいるの?」
「やはり夜美だったか。お前達に言いたいことはあるが、今は見なかったことにしてやる」
亮夜の妹である夜美がここにいる点については、恭人も色々言いたいことはあったが、それを問い詰めても、結果的に時間の無駄になると、理解してくれていた。問い詰めなかった恭人に、亮夜たちは頷くことで感謝を示した。
「私はもう行こう。亮夜、夜美、死ぬなよ」
「恭人さんこそ。お互い、無事を祈ろう」
「ああ」
亮夜たちと問答を終えた恭人は、森を駆けた。その姿は、あっという間に見えなくなった。
「さて、まずは武装しなくては」
今の亮夜たちにとって何より重要なのは、戦闘用の装備を揃えることだ。
まずは、安全を確保できる場所を、密かに探すことからだった。
「さて、ついに動き出したか」
司闇一族の次期当主である闇理は、司闇本家にて、部下と実行部隊からの情報を集めていた。
「これで、奴をようやく処刑できる」
今回の計画について、全てをコントロールしていたのが闇理だった。
きっかけは、亮夜が修学旅行という舞台に現れたこと。
元々、司闇一族は、この修学旅行を利用して、優秀な魔法師の誘拐を度々行ってきた。しかし、ロクに成果をあげられなかったことや、作戦段階で中止になったこともあった。
今回は、徹底的に痛めつけてから、実行にかかることにした。
亮夜を捕らえるには、孤立させるのが最も確実。
そのために、あちこちで火種をばらまき、気力を奪った。
さらに、ホテル内に工作を仕掛けて、亮夜を犯罪者に仕立て上げる為、冤罪をなすりつけて追い詰める。幸運なことに、亮夜が墓穴を掘ってくれたので、無駄な労力を割く必要もなかった。
ここまでは、順調だ。
後は、逃げる亮夜を捕獲するついでに、使えそうな魔法師を何人か誘拐する。
「どうやら、問題は起きていないようだな」
「はい、華宵様たちも含め、現状、大きな問題は発生しておりません」
「では、小さな問題は発生しているということだろうな?」
部下に確認をとらせたが、僅かに不安のあるセリフを聞いて、すかさず追及した。
「それは・・・深夜様の担当している部分で問題が発生しているようで・・・」
「俺と直接つなげろ」
チャンネルを切り替えることで、闇理の目の前にあるモニターは、深夜の所持していた通信機とつながった。
「闇理兄さん!」
モニターに映ったのは、少し焦りの見られる深夜の顔。
「深夜、何が起きた」
「冷宮恭人が、どこを探しても見つからないの!」
「冷宮恭人が?」
司闇一族にとって、現状、最も警戒していたのが、冷宮恭人だった。
今回の修学旅行メンバーの中で、ダントツの魔法力を持ち、頭も相当きれる。決断力にも優れ、思わぬ行動に出ることもある。
とはいえ、あくまで一番厄介というだけであって、単純な厄介度で言うならば、少し警戒すれば十分なだけだ。
(・・・いや、前回はそれで足元を掬われたな)
しかし、イレギュラーな事態が起きたりすれば、まるまるひっくり返される恐れもある。闇理はそう判断して、対策をうつことにした。
「亮夜捜索のついでに、冷宮恭人を追え。奴の相手は、お前がやるか、逆妬か華宵にやらせろ」
「分かったわ」
「吉報を期待している」
妹からの返事に微かな不満を覚えつつも、闇理は通信を切った。
キョウト内では、次々と事件が発生していたが、新幹線ハッキングを除いて、ニュースとして公表されることはなかった。
通信網も交通網も「司闇」に破壊され、知ることも、伝えることも出来なくなっていた。
恭人から直接、情報を受け取っていた「帥炎」だけは、現在の事態を大体把握していたものの、やはり他の魔法六公爵や政府に伝えることは出来なかった。
「くっ、いつの間にか通信が繋がらなくなっている!」
「ダメです、電話も通じません」
「メールもダメか・・・」
魔法協会キョウト支部には、当主の帥炎豪太良の他、息子の帥炎勝太と、その他「帥炎」が自由に動かせる戦力の大半が集結していた。
「ここまでの内容を考えれば、「司闇」が動いているのは確実だな」
豪太良はそう纏めて、勝太も、部下たちも重々しく頷いた。
「しかし、ここまでしてくるのは想定外だった。すまん、俺のせいだ」
「親父のせいじゃない」
豪太良が頭を下げるのに対し、息子の勝太は反論した。
勝太は、オオサカ魔法学校の3年生として過ごしている。今日は父親から緊急出頭を命じられ、学校を欠席して魔法支部にやってきていた。
18歳にして、身長が2メートルに届くかどうかという長身に、それに相応しい体つき。見る人が見れば、「出来る」というのが、紅色の服からも見て分かる。
「俺たちも全員が想定外だと思っている。親父一人の責任じゃない」
確認はとっていないが、ここに揃っているメンバーどころか、別の用事でここにいないメンバーも、想定外と言うに違いないだろう。事実、ここにいるメンバーは全員、無言でうなずいていた。
「・・・いずれにせよ、我々が動かねばならん」
豪太良も、頭を下げるようなことが気に入らなかっただろう。息子たちの慰めを聞いて、すぐさま気持ちを切り替えた。
「現場で「司闇」の足止めと、トウキョウに伝令を送る」
「どのように分けるんだ?」
豪太良が示した目的に、勝太は詳細を聞き出す。彼はせっかちな部分があり、少し待てば聞けるであろう内容も、積極的に質問するタイプである。
「分かっているとは思うが、我々だけでは荷が重い。だが、今、倒すわけではない」
豪太良の作戦方針に、部下たちは内心、不満を覚えた。「火」を得意とする故なのか、攻撃的な気質が、血族も部下も多いのである。無論、豪太良も勝太も例外ではなかった。
「俺が現場で、「司闇」の足止めを行う。勝太は、トウキョウに急げ。そして、ここで和道門司に指揮をとってもらう。では、まず勝太には__」
手短に行動方針を説明して、指揮の説明を終えた後、勝太たちの部隊は出撃した。
その後、全ての説明を終えた豪太良たちの部隊も出撃した。
指揮官として残った和道門司は、当主たちの無事を祈りつつ、魔法支部の守りを固めることにした。
裏路地から、明らかに異質な二人組が現れた。
頭を隠せるほどの大きなフード。その下は、普通の服に見えて、特殊な素材で構成されている。さらにその下には、アーマーの他にも、様々な道具が隠されていた。一方で、背中には大きい膨らみが目立ち、流浪の旅人とでもいうべき姿をしていた。
もちろん、亮夜と夜美が変装して、武装した姿である。
二人は影で準備した後、都合よくあったフードに身を包んで、素性を隠せるようにしたのだった。あまりに異質な服装のため、むしろ目立っているような気もするが、フードというコーディネート自体は、決してマイナーではないので、露骨に目立つほどではない。精々、チラ見される程度だ。
とはいっても、さすがに亮夜と夜美ならば、ただ歩くだけでも違いは現れている。注意をしなければ、存在は全く目立たない上、それなりの速さで動いていたので、「司闇」でも、そう簡単に発見できるものではなかった。
無論、亮夜も夜美もこの状況に楽観視はしていなかった。
キョウトの市街を出ようとしたところで、司闇一族の部隊の一つを発見した。
夜美が表に出ようとしたところを、亮夜は制止して、事情を話す。
ここは諦めて、遠回りしようかと思った時__。
「よう、誰が危険だって?」
後ろから、司闇の男が現れた。
「しまった・・・!」
ここまで、周囲はかなり警戒してきたはずだ。通れる道はもちろんのこと、ビルや空も警戒していた。さらに、監視カメラに顔が映らないように、サングラスをつけた上で、不用意に顔を上げなかった。
どうやって見つけたのか、気になるのだが、そんなことを気にしていたら、捕まってしまうのがオチだ。
やむを得ず、一人だった男を掌底一つで怯ませた所を、亮夜は夜美を引っ張って走り出した。
「いたぞ!」
「捕まえろ!」
しかし、戦力の差、いや、追いかけてくる戦力は、亮夜の予想を遥かに超えていた。
屋上、道路の奥、さらにはマンホールからも、続々と手下どもが現れた。
(どうする・・・!)
「お兄ちゃん、迎撃は!?」
「積極的にはしなくていい!逃げることを優先するんだ!」
「了解!」
夜美の質問に急いで答えつつ、亮夜は次々と飛んでくる魔法を回避して、先を急いだ。その間に、亮夜に引っ張られていた夜美が、魔法によって的確に相手を穿つ。
1分も満たない間に、次の追手が目の前に現れた。
道を塞がれた亮夜たちは、側にあった木の上にジャンプで飛び乗る。
枝が折れる瞬間に、亮夜は再びジャンプして、壁キックすることで、相手の頭上に移動した。
足元を、夜美の魔法で確保して、再び亮夜は走り出した。
その後も、追ってくる敵を、夜美が撃退しながら、亮夜は走った。
そんな中、レンタルの乗り物屋があったので、お金を出して、強引にレンタル。明らかに問題のある行動だが、亮夜も夜美も付き合う余裕はなかった。
魔力を動力とするホバーボードで、亮夜たちは空へ飛んだ。
地上から次々と魔法による狙撃が飛んでくるが、亮夜のドライビングテクニックには、追いつけなかった。
ホバーボードは、魔法道具を組み込んだものとなっており、最低限の魔法を使うことが出来れば、誰でも操作することが出来る。亮夜の能力では、自由に高速で飛ぶことは出来ないが、専用に調整されているだけあって、本人の精神にはあまり負担がかからずに済む。
しかし、相手もどこからか、ホバーボードを持ち出し、亮夜たちに直接攻撃を加えようとした。
亮夜にしがみつく夜美に、次々と攻撃が襲い掛かる。
そんな中、衝撃弾__爆発はなく、単に吹き飛ばす程度の威力を持つ弾薬__が、亮夜のホバークラフトに直撃した。
亮夜の魔法は崩れ、亮夜も夜美もホバークラフトから落下しそうになるも、亮夜の手で、どうにかホバークラフトの淵と夜美の腕を掴んだ。
しかし、制御を失ったホバークラフトは、ただ重力に従って落ちるのみ。
「夜美、あのビルまで飛ばせるか!?」
「任せて!」
幸い、夜美の魔力ならば、この状態でも動かすことはできる。
振り落とされないので精一杯な中、スピードも攻撃も激しすぎて、亮夜にはかなりの負荷がかかったが、気にしている余裕はない。
「ダメ、とてもじゃないけど、着陸できそうにないよ!」
しかし、この状況については、嫌でも気にしなくてはならない。
現在、夜美の魔法リソースは、全てホバークラフトの制御に費やしている。それでも、魔法を細かく制御する余裕がないのか、スピードが尋常じゃないほど上がっている。飛行機ほどではないが、時速150キロに達しようとしていた。
それだけでも亮夜(と夜美)の負担が重すぎるというのに、攻撃は全く止まない。正直、いつ当たってもおかしくない状況だ。
次に攻撃が直撃すれば、クラフトごと爆破されるというおまけつきで、地面に叩きつけられるだろう。そうなれば、もちろん、亮夜たちの敗北は確定する。
おまけに、クラフトの制御は全くできていないので、いつ放り出されるか分からない。下手をすれば、ビルの壁に激突するか、墜落するだろう。
時間も空間も、何もかもが追い詰められている中、亮夜はクラフトを捨てて、着地するというプランを選択した。
「ビルの目の前に来たら、魔法制御は止めて!」
具体的に説明する余裕もなく、亮夜に言われるがままに、夜美の魔法で、ビルの目の前まで接近した。
魔法を解除した直後、亮夜は身体を捻って、上に大きく上がった。
それと同時に、クラフトを斜め下に振り落とした。
反動で、亮夜と夜美の身体が上へ吹き飛ぶ。
ビルの屋上に落下しようとする亮夜は、夜美を庇いつつ、足から着地した。
「お兄ちゃん・・・はぁ・・・はぁ・・・大丈夫?」
ようやく腕から解放された夜美は、息が上がっている。緊張が激しすぎて、精神的に消耗しているのが目に見えた。上へ飛んだ反動で、サングラスも落としてしまっていて、フードも頭の部分が取れていた。
「くっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
しかし、亮夜はそれ以上に疲弊していた。夜美と同等以上の緊張に加え、クラフトを片手でしがみ続けた上、夜美を片手で抱き続けていた。その上で、無理やり宙に飛び、夜美を庇うために、足から着地したのだ。誰がどう見ても、疲労しているのが一目瞭然だ。
勿論、夜美も心配したが、亮夜はそれを制止して、ビル内部に侵入した。
「何、見失っただと!」
その頃、司闇本家で司令官を務めていた闇理は、部下からの報告に苛立ちを募らせていた。
「使える監視カメラには映っておらず、追跡部隊の一部も撃沈されました!」
「まったく、使えぬ連中どもめ!」
今回、亮夜捕縛のために、司闇が動員できる兵力のほとんどが注ぎ込まれている。華宵たち3人についている部下たちを除いては、基本的に人海戦術で捜索兼捕獲役としていた。
しかし、練度には差があり、亮夜たちを目の前で追いかけていたチームは、まだ利用し始めて日が浅いメンバーだったということだろう。
「とはいえ、全方位はカバーしてある。我らの手から逃れる術はないだろうな」
今回のために、キョウトに張り巡らされていたシステムのほとんどを、司闇がハッキングしていた。いつもならば、流れてくる情報の一部を盗み見る程度だが、こちらにも工作戦力を大量投入したため、事実上、キョウトを制圧したような状態となっていた。とはいっても、一般家庭のオフラインはさすがにハッキングしていないが。
この状況ならば、監視カメラのデータを流すことはもちろん、警報システムなども思いのままだ。とはいっても、亮夜の捕縛自体は、司闇にとって秘密裏に行われるべきものであった。表向き、犯罪者である舞式亮夜の逮捕ということにしてあるので、一般市民や魔法警察を動かすことも不可能ではないのだが、戦力そのものを広げすぎると、感づかれる危険もあるので、極一部を除いて、沈黙させるだけに留めていた。
「ところで、冷宮恭人はまだ見つからないのか?」
「それが、まだ」
「いや、見つけたよ」
突如、割り込んだ3人目の声。
「逆妬」
「兄さん、僕に任せて。冷宮恭人は、僕がとる」
その声は、闇理たちきょうだいの末っ子、司闇逆妬だった。




