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魔法解放少年  作者: 雅弥 華蓮
第9章 tour
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5 preparation of Ryoya

 次の日。非常に眠そうにしながら、亮夜はバスに乗っていた。

 丸一日夜更かししただけあって、メンタルは滅茶苦茶だ。

 少しでも気を抜けば、幻覚が見えそうになるし、倒れそうにもなる。情緒が不安定になり、夜美のことで頭の大半が埋まってしまっている。ただでさえ目立つ隈は、さらに濃くなり、目つきを除外視すれば、そういうオシャレだと勘違いされてしまいそうなほどだ。

 とはいっても、周囲からは心配されはしても、少し身体が重そうに思えるだけで、行動自体には大きな影響を与えていない。精神的にはともかく。

 現在、亮夜たちのチームと、恭人たちのチームは、わずかな時間差で、同じ目的地に向かっている。

 本日、向かう場所は、魔法協会キョウト支部。

 ありがたい歴史の話や、キョウトを拠点にしている「帥炎」の演説などがあるのだが、亮夜にとっては、色々な意味で憂鬱な内容であった。

 それを紛らわせるため、窓から外を眺めている。隣に座っている陸斗も、気を遣って声をかけていない。

 外の風景は、自然と人工が共存しているようなものだった。




 本日、亮夜たちトウキョウ魔法学校の修学旅行生が泊まる予定のホテルでは、司闇一族のいくつかが入っていた。

「今の内に、今日の計画を話しておくわ」

 ここにいるのは、深夜と逆妬、そして、彼女たちの部下。

「事業員には、本格的に暗示をかけておく。厨房に用意したアレを混入させておくのよ」

「はっ」

「今日は積極的な行動は避けて。洗脳部隊が大体やってくれるから、アンタたちは裏で様子を見てくれるだけで十分よ」

「了解しました、深夜様」

 深夜は、部下たちに命令を下した。

 そんな中、部下の一人が、深夜に不可解な目を向けた。

「・・・何よ」

「いえ、確か、今回のメンバーの中には、あの男が入っているという噂が・・・」

「亮夜兄さんのこと?」

「はい。ですが、既に死んでいるはずですのに、そんなことはありえないのですが・・・」

 部下の疑問を聞いて、深夜はため息を吐いた。

 司闇亮夜が実は生きていて、舞式亮夜と名を変えているという事実を知る者は、司闇の血族を除けば、闇理直属の部下、その他エリート格くらいで、深夜と逆妬の部下とされる程度の人物は、この事実を知らない。

 この事実を隠す程度の事情があるのは、深夜も逆妬も、いや、事実を知る者全員が、理解していた。

 深夜は、さらに個人的な事情もあって、この話題には触れられたくなかった。ため息を吐いたのも、知らない部下に呆れたのもあるが、気持ちの整理をつけるためにわざとしたという部分も大きかった。

「私と逆妬相手だからいいとしても、闇理兄さんの前で言ったら、一発で首が飛ぶわよ。それより、今日の仕事に集中しなさい」

「はっ・・・」

 部下は少し不満そうにしていたが、これ以上追及したところで、深夜の機嫌を損ねるだけなので、疑問を口に出すことはしなかった。

「じゃあ、後は任せたわよ」

 深夜が立ち上がり、逆妬も立ち上がる。

 ホテルに残っていたのは、司闇のとるに足らない部下たちだけだった。




「よく来た、お前達」

 魔法協会キョウト支部についた亮夜たちを待っていたのは、「帥炎」の現当主、帥炎豪太良だった。

38歳という、衰えが否定できなくなる年齢とは思えない程の筋肉。濃い色をした、男らしさが目立つ肌。それでいて、立派な髭をもち、角刈りをされた頭もあって、いかにもな熱血漢な印象を与えている。

「今日は、お前達に俺自らが、魔法について教育してやろう」

 脳筋な見た目に反して__服装は、スーツではなかったが、かなり暑苦しそうな服装だった__指導者としては超一流でもある。

 実際、ここで聞くことのできた内容については、ほとんどの魔法科生徒にとって、極めて重要なことだと思っていた。おそらく、この上ないほどの経験となっただろう。__ただし、亮夜は、「聡明」でも聞いたこともあって、睡眠不足だったとはいえ、あんまり為にならなかった。

 その後、一同が動こうとする中、豪太良は呼び止めた。

「冷宮恭人、お前に話がある」

「私にですか?」

 彼が話をしようとしたのは、恭人だった。

 とりあえず、移動などの都合もあるので、そんな余裕はないと、引率の先生たちは発言するのだが、豪太良が「俺が送る」と言うので、結局は従うことになった。

 豪太良に連れていかれて、恭人が向かったのは、協会支部の端にある部屋だった。

 中は、簡素な部屋となっており、少人数の会議に適した感じになっている。

 まず、豪太良が先に座り、彼が席を勧めると、恭人も腰を下ろした。

「お前には、少し忠告しておきたいことがある」

 その言葉を聞いて、恭人はわずかに眉を顰める。

「ああ、勘違いするな、別にお前達の行動を非難しようと言っているわけじゃない。ただ、今回の修学旅行についてだ」

 恭人の実家である「冷宮」は、エレメンタルズの中でも、孤立的に動く傾向にある。そのため、いくつかのエレメンタルズからは、身勝手な奴ら、愛国心0などと、嫌われていた。

 だが、恭人は、一族内ではやや変わっており、積極的とまでいかずとも、連携自体は問題なく行ってきた。それ以外にも、ボランティア活動をはじめ、精力的な行動が目立った。

 最も、それは恭人個人としてのものであり、実際には、「冷宮」という括りで見られる傾向にある。一人悪い奴がいれば、それが悪目立ちしてしまうのは、ほとんどの世界でも変わらないものだ。

「実はな、ほんの少し前に、司闇一族の連中がこのあたりで目撃されているという話がある」

「司闇が・・・!」

 「司闇」の話題が出て、恭人の顔はさらにシリアスなものとなった。「司闇」という悪名は、魔法界の頂点に近いほど、恐れられている。

「確証はない。というか、あったところで、何らかの罠に決まっている。だが、おそらく今年は、司闇の当たり年だろう」

「私もそう思います」

 数年に1回くらいの頻度で、修学旅行中の魔法科生徒が行方不明になる事件が発生している。

 明確に解決したことはないのだが、手口などから察するに、「司闇」の連中がやったことは、ほぼ確定的だった。

 一方で、毎年こんな事件を起こせるはずなのに、数年に1回くらいしか起こさないのは、ほとぼりを冷ましているという説がある。

 だったら、魔法科側も、修学旅行を中止にすべきではないかと思われるかもしれないが、予算の都合や、経済の変化、特別教育といった都合もあって、廃止にするのは不可能に近かった。実際、アンケートをとらせたところ、親は3割くらい、廃止にすべきという声があがっている程度なのに加えて、子供に至っては、ほぼ全員が廃止反対の声をあげていた。

 結局、修学旅行は半ば自由参加という名目をとることにしていた。

 言うまでもないが、みすみす被害に遭わせるわけにもいかないので、一応の対策はしていた。__しかし、司闇らしき奴があまりに厄介すぎて、焼石に水にしかなっていないのだが、それを突っ込む人物は誰一人いなかった。

 恭人はというと、先日の亮夜からの一件について考えていた。

 今回の修学旅行で泊まる予定のホテルについて調査してほしいと、夏休みが終わる少し前に依頼された。

 亮夜の個人的な話は抜きにしても、下見に行くこと自体は重要だと恭人は判断したので、とりあえず調べてみたのだが、特にネタはあがらなかった。

 亮夜が勘違いした、もしくは深読みした可能性もあるのだが、この状況を考えれば、彼の心配は的中している可能性の方が高かった。

「どうした?」

 豪太良が話しかけたところで、恭人は深い思考に沈んでいたことに気づいた。

「奴らが狙う可能性のあるターゲットについて考えていました」

 恭人は正直に答えた。

 とはいえ、話の腰を折らせるほど、熟考していたと思い、恭人は少し情けなくなった。

「そうか・・・で、何か心当たりはあるか?」

 幸いなことに、豪太良の興味を引きだす種となってくれたようだった。

「今日から泊まる、キョウト・サウス・ウィズザード・ホテル。先日、ある人物からの依頼を受けて、調査を受けました」

「その人物とは?」

「その方との契約により、話すことはできません。ですが、何もなかったのです」

 豪太良からの追及を、恭人はあっさりと両断した。豪太良が少し気分を害したように見えたが、恭人は無視して、話を続けた。

「調べたところ、何一つ、痕跡はありませんでした。ですが、「司闇」が動いていたとするならば、何のおかしな話もないでしょう」

「例えば、私たちの誰かを誘拐しようとするとか」

 恭人の説明は、嫌でも納得せざるを得ないものだった。

 「司闇」が何一つ痕跡を残さずに、「何か」を仕掛けることは、十分にあり得る話だ。事実、先日、トウキョウ内で爆破事件やハッキング事件が発生した時も、発生して1週間かけてようやく、「司闇」の仕業だと見破ることが出来たのだ。

 __ちなみに、爆破事件は1か月程前にもカマクラ付近でも発生していたが、そちらとは別口であると、調査により判明している。トウキョウで発生した爆破事件とは、ハッキング事件が明るみに出た直後、政府が使用する施設の一つを壊されたというものであった。

「なるほどな・・・トウキョウのミスリードといい、この暗躍といい、奴らが本格的に動いている可能性は高いな」

「本格的に、とは?」

「いや、こっちの話だ」

 思わず口を滑らせてしまった、「司闇」にある目的。

 恭人は訝しげに豪太良を見詰めたが、すぐに諦めることにした。

「そこでだ、つい先日にも集合をかけたばかりだが、魔法六公爵を含めた政府近衛軍をここに呼んでおこうと考える」

 強引、というには微妙かもしれないが、話の内容自体は、重要なものだ。恭人は豪太良の話に集中することにした。

 なお、先日、魔法六公爵が集まったのは、定例会議のためであった。トウキョウで行われた定例会議は、カマクラの爆破事件などを除けば、いたっていつもどおりの内容であった。

「今度こそ、奴らに一泡吹かせる。恭人、お前にこのことを話しておく理由・・・分かるな?」

「はい、いざという時には」

 恭人は、疑いようのない、本気の目を豪太良に返した。

「そうか。本当なら、警告だけで済ませるつもりだったが、いい話になった」

「お役にたてて光栄です」

 恭人は座ったまま、豪太良に一礼した。




 一方、亮夜たちはキョウト地方南部の魔法師向けの豪華ホテル、キョウト・サウス・ウィズザード・ホテルに到着していた。

 魔法協会を出た後、登山の予定があったのだが、悪天候により却下。その代わり、早くからホテルに向かうことになった。

 不幸なことに、亮夜の計画が狂ってしまった。

 実は、夜美もキョウトに来ている。

 目的は、亮夜のサポートのためだ。

 家の用事だということにして、長期欠席を無理やり認めさせた夜美は、キョウトへと向かった。

 しかし、ハッキング事件により、チュウブ地方南部の交通網はほぼストップしてしまっており、仕方なくチュウブ地方北部の電車を使って移動した。

 結果、時間が非常にかかってしまったため、亮夜たちがホテルに着いたころに、夜美はキョウト駅についてしまったのだ。

 本来の予定では、先にホテルに侵入して、なるべく亮夜たちに接触しないようにするつもりだったが、亮夜たちの到着が早すぎたため、逆に夜美の方が遅れて来てしまった。

 言うまでもなく、夜美がこのホテルにいることになるのは内緒だ。

 もし、見つかってしまえば、監督責任を含めて、大目玉だ。

 ホテル内にある、アミューズメントパークで遊ぶ時間が大幅に増えたことになった一方、亮夜は一人きりで、夜美に電話をかけていた。

「夜美、悪い知らせだ」

「どうしたの?」

「予定変更により、僕たちは既にホテルに到着している」

「ええ!」

「夜美はどこにいるんだい?」

「今、キョウト駅から出発するところ」

 現在の時刻は、午後2時。次の予定は、午後7時に夕食の時間だ。それまでは、アミューズメントパークなり、入浴なり、部屋でくつろぐなり、自由だ。

「そうか・・・。こちらには、3時くらいに着くんだったね」

「うん」

「それに合わせて、僕が先導する。特に、こちらに着く前には、ちゃんと連絡するんだよ」

「分かった」

 その後、一人で骨休めをして、約束の時間通りに、夜美はやってきた。

「お兄ちゃん!」

「夜美!」

 亮夜も夜美も、嬉しさを隠そうともしていない態度だ。だが、亮夜はやってきた夜美を抱き止めた後、すぐに離した。

「うん、ありがとう。でも、時間がない。さっさと部屋に入るんだ」

「分かった」

 亮夜にとって幸いなことに、生徒たちが側にいない。全員が、部屋、アミューズメントパーク、浴場のいずれかにいて、ここにいるのは亮夜たちを除けば、フロントと一般客だけだ。

 ホテルで宿泊するには、多くの場合、個人情報を書く必要があるのだが、場所によっては、特殊なチップを使って、確認される場合がある。魔法師が扱うホテルは、色々な意味で後ろめたい事情が多くて、確認用のチップだけでいいという場所の方が多い。

 幸いなことに、夜美の個人情報を説明する必要もなかったので、特に不審に思われることはなかった。

 階段まで移動した夜美を、亮夜は見送って別れた。

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