表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

乙女ゲー? 何それ美味しいの?

作者: 八雲

ここは乙女ゲームの世界、らしい。

最初に違和感を感じたのは学園に入学したとき。この学園を正門から見た光景に既視感を覚えた、けどそれを私はスルーした。だってまさかゲームの世界に転生しただなんて思わないわよ。今まで15年間生きてたけど、ゲームキャラと関わり合いはなかったし。いちいち舞台となる町や学園の名前まで覚えてないもん。


突然だけど、私には誰にも言ったことがない秘密がある。それは前世の記憶がある、ということだ。

地球という星の日本という国で育った過去の私は、アニメ、漫画、小説、ゲーム等のサブカルチャーが大好きな女子だった。その頃読み漁った小説には所謂異世界トリップ、転生物というものも含まれている。だから自分が異世界に転生したんだということはすんなり理解できた。――――理解できたからといって納得できるかは別だけどね!? 大体トリップ物って巻き込まれたにしろ選ばれたにしろ、主人公が何かしら特別な力を持っていることが多い。実は空手の実力者だったり頭の回る切れ者だったり、とにかく異世界でも生きていける能力があるというのが前提。それには幸運値というものも含まれていて、中には酷い目に合う場合もあるけどいつかは親切な人に、そして将来のパートナーとなる異性に出会うことが決まっている。

だけど私は体を動かすなんて苦手だ。もう少し運が良かったら、ソーシャルゲームのガチャで目的のものを引いているだろう。頭だって良くない。中学受験をしてそれなりに良い大学までエスカレーターで進学したけれど、成績は中の下。一番得意な科目は音楽で、苦手なのは外国語。つまり、私としての意識は赤ちゃんの頃からあったけれど、かといって言語の習得は他の子供たちと同じくらいだったってこと! 政治経済についても同じ。大体私は文学部の人文学科だったんだから、政経は高校で卒業よ。辛うじて家庭教師に褒められたのは数学くらいね。


……まあ、私の生い立ちはともかくとして。

この学園は、日本で発売されたとある乙女ゲームの舞台。とはいっても最初に門を潜ったときは分からなかった。そもそも20年以上前に見たゲームの一枚絵をいちいち覚えていられない。確信を持ったのはどこかで見覚えのある登場人物たちに見覚えがあったから。

あー乙女ゲームの攻略キャラって無駄にイケメンだわ。目の保養目の保養。皆がワーキャー騒ぐ気持ち分かるは、うん。


でも私が分かるのはキャラクターの顔と、辛うじて名前だけなんだよねぇ。


確かに私は前世でゲームをやっていたけど、乙女ゲームは専門外なんだよ! 

やっていたのはRPGとアクションくらい、このゲームだって数少ない友達が布教するためにオープニング動画を見せてくれたから知ってるだけ。確かこの学園に入学した主人公たちが、仲間たちと出会って敵を倒すっていうバトル要素も含まれているらしい。漫画化、アニメ化もされたくらい人気があったから、私もビジュアルくらいは知っている。ちょっと興味はあったけれど、かといってプレイしようとは思わなかった。だって他に好きなシリーズをプレイしていたからね。


なので私は攻略キャラどころか主人公の名前すら知らない、覚えていないのである。


ということですので、私は主人公やレギュラー勢に巻き込まれないために目立たずひっそりと学園生活を送ることにしました。何でかって? そりゃあ、主人公の傍にいたら事件に巻き込まれるに決まっているからじゃない。どんな事件かは分からないけれど、面倒事に決まっているじゃない。バトル要素もあるってことは危険ってことじゃない! 自慢じゃないが現世でも私は運動が苦手なのよ。

え、イケメンたち? 見る分にはいいけど関わりたくないわー。何せこちとら彼氏いない歴イコール年齢だぞ? 前世の分を含めると40年はいく。正直恋愛してるよりもゲームしたいし、仕事も忙しかったからね。まあ両立させるのが大変で、結局前世の死因はきっと睡眠不足。眠くなると立ってても寝られるという謎の特技? があるのだけど、どうやら私は通勤中にその特技を発動させてしまったらしい。自宅から駅まで歩いている間で記憶がふっつりと途切れている。多分歩きながら寝てしまい、赤信号にでも飛び出してしまったのだろう。


ああ嫌だ、また話が脱線した。

とにかく私は決めたのだ。このゲームの主人公勢には関わらない。具体的にどんな敵と戦うのか知らないけど、私が勝てるわけないし。……まあ、キャラクターたちと同じ学園に通う以上完全に無関係なのは難しいだろうけど、可能な限りモブに徹する! 私は平穏無事に過ごしたいんだ!

……あーあ、早く家に帰って趣味の創作活動をしたい。








この数か月後、見事に主要キャラとフラグを立て、それを折りに奔走することになるだなんてこのときの私は想像だにしていなかった。

「ってもしかして、主人公って私なの!? ふざけんじゃないわよ!」



乙女ゲー? 知るかそんなもの。イケメンハーレムなんて興味ないから平凡に生活させてください!

流行りの乙女ゲームに転生したものを書いた結果です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ