身分証の提示のようです
「ふむ、森から出れたのはいいが、ここはどこだ?」
森から出た俺は、よくわからない場所に飛ばされてしまったようだ。周りを見回すと遠くのほうに町があったので『超解析』で調べた結果、
『獣人国 エターナ:獣人によって作られた国。様々な種族が出入りし、町は賑やか。しかし、人間を敵視する者がわずかながらいる。』
人間を敵視しているものがいるのか…まぁ、行くか。
こうして俺は、獣人国 エターナに向かう。しかし、
「くそっ!こんなところで死んでたまるか!」
戦闘音とおっさんの叫び声?のようなものが聞こえたので、向うと、馬車がオークの集団に襲われている。
このまま見過ごすのは嫌だから助けるか。
こうして馬車を助けることに決めたが、ここで普通に助ければテンプレ通りになってしまう。それでは、ダメだ。面白くない。ということで、
「『毒蜂』。」
小さな蜂をオークの数だけ召喚し、オークを襲わせる。戦闘中だったので誰も蜂のことに気が付いておらず、簡単に毒針をさすことができたようだ。刺されたオークたちは皆、口から泡を吐き、気絶した。ここで解説、この『毒蜂』は名前の通り毒をもった蜂だ。この蜂の毒は使うときに毒の種類を変えることができる。オークに使った毒の種類は、
『麻痺毒(魔物専用):この毒をくらうと、体が痙攣し始め、最後には死に至る。ただし、魔物専用なので魔物しか効かない。』
さて、助けることもできた。町に向かおう。
俺は馬車を避けるように、遠回りをして、町に向かう。
二時間後
「止まれ。身分証を提示してもらおうか。」
「身分証は持っていないな。」
「ならば、仮の身分証を発行する。そのため、銀貨二枚をもらうことになるが、」
「構わない。」
「さらに、犯罪歴がないか調べるため、ステータスを確認させてもらう。」
「わかった。」
「ならばこっちに来い。」
そう言われ、門番たちがいる詰め所?のような場所に連れてこられた。
「まずは銀貨二枚をもらおうか。」
構わないといったが、銀貨二枚か…ゲームの時はそんなものはなかったからな。仕方ない。普通にゲームで使っていた金を出すか。
「銀貨は持ち合わせていないので、これでどうだ?」
俺はポーチから金を取り出した。すると、その硬貨を見た門番の顔が驚きの表情に変わっていく。
「そ、それは、三百年前に使われていたゴールド硬貨。」
「うん?ただの1ゴールドだろう?」
「お、お前、これがどれほどの価値があるのか知らないのか?」
「あぁ、知らないな。俺にとってはただの1ゴールドだ。これだけでは通れないのか?」
「い、いや、使えるが、」
「なら、さっさと、俺の犯罪履歴を調べろ。」
「わ、わかった。」
門番は急いで、水晶玉を取り出した。
「これは?」
「この水晶玉に手を触れるだけでいい。それだけでステータスが確認できる。ほら、触ってみろ。」
触った瞬間、水晶玉が光を放ち、俺のステータスが水晶玉に映し出された。
「どれ。」
そういうと、門番は水晶玉を俺から奪うようにして取り、ステータスを見ると、また驚きの表情になって固まり、
「え、え、う、嘘だろ。ありえない。生きていたのか…」
「おい、犯罪履歴を調べたのならもういいだろ。俺は町に入ってもいいのか?」
「は、はい!もちろんです!どうぞ、お入りください!」
そう言われ俺は、半ば無理やり門をくぐらされた。あの豹変ぶりはいったい何だったんだ?少し気になったが、どうでもよくなったので宿を探すことにする。
「どうしたんだ?」
「生きていた…」
「誰が?」
「生きていたんだよ!あの、影の暗殺者が。」
「おい、それって昔の話だろ?」
「いや、俺は確かに見た。ステータスを。」
「マジで?」
「マジ。」
「そうか、一応、陛下に報告しておくか?」
「あぁ、そうしてくれ。」
フェイズの知らない間に、門番たちがこのような会話をしていた。