学生とのお話し
「あ、あの、どうして見ず知らずの私に対して優しくしてくれるのですか?」
学生が突然そんなことを言う。
「俺の自己満足だ。あそこで見捨てたら罪悪感で夜も眠れないと思ったからだ。」
「そうですか。優しいんですね。」
俺たちはその後、会話という会話もせず家に到着した。
「ここが俺の家だ。」
そういい、家の中に二人で入ると、学生が、
「うっ!にゃ、にゃんですか、こ、このにおい?」
「ポーションの素材をすりつぶした臭いだな。」
「しょ、しょうでしゅか。」
「ここは臭いが一番する場所、調合室だからな。この先の客間で話をするか。」
俺と学生は客間に行き、俺は学生から詳しい話を聞くことにした。
「さて、どのようにしてこの世界に来たのか聞かせてくれるか?」
「わ、分かりました。」
学生は転移させられるまでのことを話し始めた。
「あれは、学校に行く時のことでした。」
学生は喋りはじめた。
「私、学校に行こうと、玄関のドアを開けました。そしたら目の前にちょうど男一人、女二人が歩いていました。私はその人たちが同じクラスの人たちだということが分かったので、挨拶だけでもしようと声を掛けました。そしたら、目の前の三人の足元に魔方陣?のようなものが出てきて三人を飲み込みました。驚いていると、私の足元にも魔方陣が出現して、気付いた時には…」
「なるほど。気づいたときにはもうこの森の中だったということか。」
「はい…」
「………君に手紙を送った神は君をこの世界から返すことはできないと手紙に書いていたそうだな?」
「…はい。」
「ならば、それが本当かどうか実験してみよう。」
「え?」
「君は本当にえ?という言葉が好きだな。まぁいい、神は匙を投げた。だが、俺は投げない。一度死んだ身だが、俺も日本に帰ってみたいからな。」
「日本に帰るって、あの、あなたは日本人なのですか?」
「元が付くけどな。」
「そうですか。でも、どうやって?」
「転移系の魔法をかなり改造すればできると思うけどな。後は、召喚用の魔法を調べる必要がある。だが、まずは転移系の魔法の解析からだな。」
「転移魔法、召喚魔法………あの!」
「なんだ?」
「私を鍛えてもらうことはできますか?」
「鍛える?」
俺はちょっと耳がおかしくなったのかな?と自分を疑い始めそうになったが、
「鍛えるのはいいが、理由を聞いても?」
「自分の身くらい自分で守りたいからです!」
「なるほど………わかった。君を鍛えてあげよう。鍛える前に君の名前を教えてくれ。」
「はい!私の名前は岸戸 玲奈といいます!これからよろしくお願いします!」
「俺の名前はフェイズ、一応偽名のクロウドという名前で呼んでくれ。」
「わかりました。」
こうして、俺の家に同居人が増えました。
「玲奈。」
「はい?」
「明日から仕事があるからそれも手伝えよ。」
「分かりました!」
ついでに従業員にもなりました。