面倒くさい姉妹
「うわーやってしまった…」
俺は現在進行形で後悔している。なぜなら、
「来ちゃいました。」
一週間ほど前に助けた駆け出し商人のセリアが家の前にいるからだ。
「おい、何故来た?」
「いえ、あなたがこの森で薬屋を営んでいることは冒険者ギルドの人たちに聞きました。」
「で、何の用だ?」
「前回のお礼を言いに来ました。それと、」
「それと?」
「はい。商売をしにまいりました。」
俺はため息をつきそうになるのを我慢し、
「最初に言っておく。俺は商売目的のやつに薬は売らんぞ。俺はこの店でだけ薬を売るつもりだからな。」
そういうと、セリアは固まってしまった。だが、
「なら、私が持っている薬の素材を売るというのはどうでしょうか?」
「嫌だ。俺はこれでも強い。この程度の森なら普通に一人で素材を採取できる。」
「な、なら!「もういい加減にしろ。」…え?」
「商売をしたいのであれば、ここ以外でしてくれ。じゃあな。」
俺が家の中に入ろうとすると、後ろから殺気を感じ、迫ってくる剣を指で弾く。
「何のつもりだ?」
「私の妹を泣かしたからに決まっているだろう。」
「妹?」
後ろを向き、セリアを見ると、
「ひっく…う、うぅぅぅぅ……」
「ふむ、自業自得だと思うのだが…泣かれるのも面倒だ。分かった。ならばお前に薬を下ろそう。ただし、俺が作った薬ということは言うな。」
「う、うん、分かった。」
「なら、さっさと、契約書を出せ。俺と商売するつもりなら、契約書の一枚や二枚持っているだろう?」
セリアは腰のポーチから、白紙の契約書を出した。
「そこに、俺が今言ったことを書け。」
書き始めて十分後、
「出来ました。では、確認を。」
俺は契約書を受け取り、内容を確認、契約書の内容は簡単だ。
俺はセリアだけに薬を卸す。セリアは俺の薬の宣伝町でをする。以上だ契約というより約束に近いな。
そして俺は一番下に自分の名前を書いた。
「後はお前の名前を書くだけだ。」
セリアは名前を書き終え、ポーチに契約書をしまう。
「では、薬を見せてもらってもよろしいですか?」
「ほれ。」
アイテムバッグから下級ポーションを一本渡すと、
「こ、これは!?上級ポーション!」
「は?」
「貴方は上級ポーションを作れるのですか!せめて下すなら下級ポーションにしてください!」
「それが下級ポーションだぞ?」
「嘘です!私にはわかります。このポーションの色、間違いなく上級ポーションです。それも、大昔の、三百年前のものと同じポーションです!」
ふむ、薬屋を開いてから、冒険者たちはポーションを買い求めに来るが、何故か見るだけで終わっていたのはそのせいか。
俺は一人、納得していたが、
「お願いします。下級ポーションを出してください。」
「いや、俺にとってはそれが下級ポーションなんだが…そうだ。下級ポーションを持っているなら見せてくれないか?」
「…分かりました。」
俺はセリアから、下級ポーションを受け取ると、『超解析』をかけてみると
『最底辺のポーション:ごく微量だけ体力を回復するポーション使用素材:癒し草の枯れ葉・微弱な魔力水』
「成程、一週間後にまた来い。その時に薬を売ってやる。」
「分かりました。姉さん、一度町に帰りましょう。」
「分かったわ。」
姉妹が帰った後、俺は最底辺ポーションを作るための素材集めに向かった。