第32話 会いたくて
短いです
この話し合い、俺はいかに早く終わらせることができるかに重きを置いているが、勿論相手はそうではないだろう。もし仮に重要な点が一致していたとすれば話し合いは驚くべき早さで終わるだろうが、そう上手くはいかないだろう。だから、俺はなるべく早く終わらせるために工夫しなければならない。それに、やみくもに話を進めればいいということでもない。本題をさくさく進めたところで、相手の反感を買って話が長引くだけだろう。だから、俺はそこらへんをどうにかして見極めなければならない。なんて面倒臭いんだろう。だが、ここまできて退くことはもうできない。相川が約束を守るかどうかはともかく、俺はひとまずこの話し合いが終われば無関係になることになっている。まぁそんなトントン拍子で話が進むとも思えないが。ともあれ、俺は最善を尽くすのみである。
「そうだ。うちの子は、君さえいなければあの事故は起きなかったし、大会に出られなくなるようなこともなかったと言っている」
まるで俺が悪いかのような言い分である。まぁ言っていることは事実なのだが。
「そして、そのおかげで助かったとも…な」
驚愕の事実である。なんということだろう、彼女は既に大会に出られなくてよかったと親に話していたのか。いや、別にありえない話ではないが、そうなると何故俺が呼ばれたのか少しわからなくなる。少し推測する時間を稼ぐため、俺は「ほう…」とだけ返す。葉山さん夫婦もこちらを新刊な眼差しで見つめていて、場は緊迫している。
そして俺は思い付いた。いつぞやの時のように、俺は人生相談の相手として呼ばれたのではないか?しかしすぐに否定する。それなら、俺よりも相川のほうがずっと頼りになるだろう。わざわざ俺を呼ぶようなことではない。それなら、相川の差し金というのはどうだろうか。あの時もそうだった。相川なら俺を相談相手に相応しいと紹介するくらいやるだろう。何はともあれ、推測しているだけでは話は進まない。
「それは以前から伺っていました。ただ、事故の件はともかく、それは本人の問題だと思います」
「わかっている…だから今回はなにも文句を言ったり責任を問うために呼んだわけではない。強いて言うなら会いたかったからだ」
「どういうことですか?話がよくわからなくなってしまったんですが」
この人は何が言いたいのだろう。会いたいから呼んだだと?仮に本当だとしても、不安が残る。まさか言外に俺のことを責めているのだろうか。だとしたらやり方がだいぶ陰湿だが、まさかそこまでひどい人物ではないだろう。
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