第29話 平和にいきたい
短いです。
どうしてだ。俺はあの件には関係ないはずだ。それがあの子の親が俺と話したいだと?まさか文句をつけたいわけではあるまい。確かに原因の一端を担っていたというのはまぁ事実といえるが、それでも俺を呼び出す理由には足らないだろう。それに、誰かが告げ口しなければ俺の存在を知ることもなかっただろう。例えば、あの子本人とか相川とかな。この二人で疑うならば、相川のほうだろう。だからと言って、あの葉山という子が怪しくないわけではない。一応、相川と似ている性格を見るに、やってもおかしくはないだろう。そもそも、これがハッタリという可能性もある。相川ならやりかねないだろう。どのみち、俺は断るつもりだが。とにかく、もしこれが本当だとしたらろくなことにならないのは目に見えているだろう。だから、適当な理由をつけて断らなければならない。いや、なんならただ断るだけでもいいが。相川にごり押しが通用するかどうかは少し不安なところだが、それでもやらねばならない。このままなら確実に面倒なことになる。それは火を見るより明らかだ。ならば、そうなる前に確実に対処しておかねばならない。それが多少面倒だとしても、やらなかったことでもっと面倒なことになるのなら、俺はやる。それがどんなに困難だったとしても。
俺がまず拒否の言葉を発するその前に、相川は手で制した。そして、先手を打った。
「言っとくけど、これはハッタリじゃなくて本当だから。あと、もし来なかったらそれはそれで面倒なことになるからね?」
俺の考えていることを先回りして牽制してきた。一応、俺は相川の言うことを全て信用はしない。当たり前だが、相川だって嘘はつく。特に、こういう意見が対立した時は。だからこそ、眉に唾付けて聞かなければならない。だから、今のも疑わなければいけない。ハッタリじゃないというのも嘘かもしれない。それに、面倒なことになるっていうのも怪しい。
「馬鹿らしいことを言うが、ハッタリじゃないって証拠がないだろ?それに、その面倒なことってのはなんだよ?それも嘘じゃないのか?」
とりあえず、かまをかけるだけかけてみる。駆け引きは得意なほうではないが、それでも何もしないよりはいいだろう。相川も普段より少しばかり取り乱しているようだし、上手くいけば引っかかってくれるかもしれない。まぁ、さすがにそんなに都合よく進むわけはないが。
「嘘だったらなんなのさ?少なくとも私がまた押しかけてくるっていう面倒事はあるよ?それに証拠がないから信じないなんて、小学生みたいなことを言い出さないでよ」
相川がここまで言うとは割と動揺しているのだろう。軽口を叩くならともかく、普通に怒っているようなトーンで話すとはなかなかに珍しいと思う。普段なら「君が面倒くさがりなのはわかるけど、私に比べたらずいぶん楽だと思うよ?」とでも言っているだろう。実際、大抵の面倒事は相川よりは楽である。もっと揺さぶりをかけてみよう。
「もしかしてそんなことを言うんなら、本当に全部嘘なんじゃないのか?」
「うるさいうるさいうるさい!いいから黙ってついてきなよ!面倒なことにはなりたくないでしょ!?」
思ったよりも怒られた。俺は普段から怒声を浴びせられることがないので、ものすごく怯んだ。ひらたく言うと、すごいびびった。
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