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とある自宅警備員の日常  作者: 布滝
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1話 朝食の時に押し掛けて来るのはやめて欲しいです

新しい朝が来て、俺はひとまず朝食を取ることにした。俺は、一般には無職やニートに分類される人間だ。しかし、無職もニートも響きが好きじゃない。中学生の頃、一時期ニートってなんかかっこいいと思っていたことは関係ない。さらにそれを公言したせいで、周囲から痛々しい視線を向けられたのは、今となっては良い思い出……ではない。最悪だ。そのうえ、教師からも呼び出しを喰らった。あの時は本当にあまりの羞恥に天に召されるところだった。

いつも通り、今日の予定を立てることなく、他愛ないことを考えながらトーストを頬張っていると、玄関のチャイムが鳴った。


「郵便でーす」


荷物を頼んだ覚えはないし、今は父親が単身赴任で母との二人暮らしのはずなので、大方母が頼んだ荷物だろうと思い、ドアを開けると。


「騙されてくれてどうもありがとう!今日も良い天気だね!ところで、今お腹が空いてるんだけど」


幼なじみもとい腐れ縁の相川早織が居た。というか騙してたのかよ。天気関係ないし、朝食もらう気満々じゃねぇか!

伊達に19年間、こいつと幼なじみをしてはいない。ここで抵抗しても、無意味なことは知っていた。なので、俺は諦めてもう1枚トーストを作り始めた。

トーストを作るといっても、我が家が誇るオーブンレンジにぶちこんでボタンを押すだけである。ちなみにこのオーブンレンジ、たまに炭を生産する。そこを除けば、多様な機能を持つ使い勝手のよいオーブンレンジである。


「まだー?お腹空いたんだけどー」


「まだ1分しか経ってないだろうが。そもそも他人ん家に上がり込んで朝食を要求した奴の態度かそれ」


「勿論。傲慢な姿勢を最後まで貫き通すのが私のスタイルだからね」


「最悪なスタイルだな!?」


こんな感じの会話を繰り広げていると、オーブンレンジ君が完成を知らせる音を鳴らせた。トーストを取りだし、適当にメープルシロップをかけ、皿に載せて出来上がりである。


「さすが幼なじみ。私の好みをきちんと把握しているねー」


そんなことで褒められても全然嬉しくないと思いつつ、朝食を再開する。すると、再び文句が飛んで来た。


「飲み物は?こんな甘ったるい物を飲み物無しで食べろと?」


「よくわかってんじゃねぇか」


「嫌だよ!早く飲み物を用意して。出来れば紅茶が良いな。ロイヤルミルクティー。マーマレード落としたやつ。」


「お前もう清々しい程クズだな。傲慢さ余って殺意百倍かよ」


甘ったるい物に甘い物を加えるのか。ちなみにこんな諺はなく、正しくは『可愛さ余って憎さ百倍』である。仕方なく、コップに緑茶を注ぎ、持っていってやる。


「緑茶?私が頼んだのはロイヤルミルクティーのはずなんだけど。それもマーマレード入り」


「茶なのに変わりはないんだから良いだろ…ていうかそのマーマレードに対するこだわりはなんだ」


「私、マーマレード至上主義だから」


何その主義。初耳なんだが。そして、最初から気になっていたことを尋ねてみる。


「お前、今日は大学の授業無いのか?」


「あっ」


あっじゃねぇよ。忘れちゃいけないだろ。


「ごめん、自転車でもいいから送ってもらえない?朝食なんて取ってないで、可及的速やかに」


最早命令じゃねぇか。抵抗する気力を朝っぱらから消費する気にもなれなかったので、大学まで送ってやることにした。

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