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魔法適性のない俺は拳で異世界を救う  作者: 長雪 ぺちか
第3章 最強の魔法少女の登場と殺人事件でサスペンスの香り……?『オオイタ』編!
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今度の魔王は……?

「じゃあ、もし仮に……だよ? 俺がその秘密について気付いていたらどうする?」

「…………それはもう仕方ないの」

「了解。……それじゃあ、俺が今から話すことが正しければ『はい』と答えてくれ。違かったり、知らないことだった場合は無言で」


 俺はそう言うと一度深呼吸をして話を続ける。


「『トウキョウ』が隠している秘密というのは、1年ないし半年以内に『魔王』が発現するという情報だ」

「…………はい……なの」

「発現した『魔王』に対抗するために強い戦士が必要になる。『トウキョウ』が他国から強者を引き抜きしているのはそのためだ」

「……はい」

「『トウキョウ』がその事実を伏せているのは他国民の混乱を避けるためだ」

「はい」

「ありがとう。最後に『魔王』はリリ一人で倒せるか?」

「……………………」


 最後に少女が俯いたまま、無言を貫く。

 どうやら相手はこの最強の魔法少女さんでも倒せぬほどに強大なのだそうだ。

 今までの話を聞いたミリアはリリに一歩詰め寄り焦りを含んだ声音で言う。


「今度の『魔王』の加護ギフトは何? 知っているなら教えて頂戴」

「…………本当は言っちゃダメなことになっているから教えられないんだけど……もう分かっちゃってるみたいだから教えちゃうの。今度の『魔王』は【ダーク】の加護ギフト持ちなの」

「【ダーク】!? …………それは歴代で一度も発現の例がない『魔王』になるわね。どの程度の被害になるのかは予想出来ないけど、過去最高の被害になるのは目に見えている」

「ミリア、その【ダーク】って加護ギフトはそんなにヤバいのか?」

「ヤバいわ。他の属性系の加護と同じように魔力に属性を乗せた攻撃が主なんだけど、その加護が他の属性系と違うところは【回復】などの治癒魔法の効果が薄いということよ」

「おいおい、それじゃあ……」


 被害が永遠に拡大していくと言っているようなものじゃないか。

 下手をすれば日本列島が全滅まで考えられる。


「【ダーク】は大昔現れた最初の『魔王』の能力に最も近いものだと言われているわ。だから逸話通りならば『原初の魔法使い』の持つ加護ギフトであれば『魔王』に対抗出来るはず。だけど……その加護ギフトを持つ人間はもうこの世にいなかったはずよ」

「それじゃあ現状その【ダーク】とかいう加護ギフトを防ぐ術は無いって事かよ」

「その通りなの……」

「うわ、絶体絶命じゃねえか」


 俺たち『ウツノミヤ』で合併問題とか解決してた間に世の中はどうやら混沌としていたようだ。

 相手の加護ギフトが防げないとなると、短期決戦で一気に片付けるのが良さそうだけど、それが出来る相手なのかも不明だ。

 どうやら歴史上一度も【ダーク】の『魔王』は生まれてないという事だから、これは決して俺がこの世界の住民じゃ無いから分からないとかそういう事じゃなく、誰にも分からない脅威が迫っている事になる。

 少々強引にでも戦力を高めようとしている『トウキョウ』の行動は、強ち間違いでも無いのではないかと思った。


 俺はミリアにこれからについてどうするのか問うと、少し頭を捻り考えた。


「事情は把握したわ。さっきはついカッとなってあなたのいうことを信じられなかったけど、流石にここまで辻褄が合っていれば信じざるを得ない気がするわ。そして『魔王』の発現……これはミリア様の力が必要になるほどの事態ね」

「たぶんミリアを特別待遇で受け入れようとしているのはそういう事だろうね。ミリアが『魔王』討伐の鍵になるのは間違いなさそうだ」

「でしょ! もっと褒めても構わないわ! ミリア様強い! ミリア様カッコいい! ミリアママがんばえー! はい、アイリちゃん! タケルミラクルライトを出しなさい」

「え、ええ!? ミリアママがんばえー、ですわ!」

「アイリが困ってるからやめろ! それと俺の腕をミラクルライトにするな…………リリどうしたんだ?」

「剣の人やっぱり悪い人じゃなかったの。プリ◯ュア好きな人に悪い人はいないの」

「その理屈はおかしく無いか!?」


 ダメだ。この空間は今、ニチアサ番組に支配されている。

 アイリは頭上にクエスチョンマークを大量発生させてるし、この話題は早急に打ち切るべきだ。

 俺は一度話を切ると、不満そうな顔をミリアとリリは向けてくる。

 お前ら仲良しか。


「とにかく、ミリア。俺たちは『トウキョウ』を倒すために旅を続けていたわけだけど、この話を聞いた今でも『トウキョウ』を倒すべきだと思ってるか?」

「いいえ。そもそも私の家族が生きているのが本当なら、その時点で私の復讐はなかったことになる。でも、少し問題があるわ。私の気持ちの整理はできたけど、私に賛同してくれた人達はどうなのか分からない」

「あ、そうだった」


 完全に忘れていた。

 打倒『トウキョウ』の作戦はもう俺たちだけのものじゃないのだった。

『ウツノミヤ』の意思も関わってくる。

 どうやって彼らを説得するのか、骨が折れそうだ。


「ねえ、おにーちゃん。その協力者って誰なの?」

「……話していいか、ミリア」

「いいわよ」

「了解。『ウツノミヤ』の人たちだよ。俺たちは『ウツノミヤ』と協力して『トウキョウ』を倒すつもりだった」

「分かったの。そっちの方は『トウキョウ』で説得するから任せて欲しいの。たぶんすぐに納得してくれると思うの」

「そうか…………じゃあ任せた。これでミリアは『トウキョウ』に手助けするって事でいいか?」

「いいえ、まだよ。まだ私はつけるべきけじめを取っていない」


 ミリアはいつになく真剣な表情だ。

 いつもはバカみたいなことばかりしているバカだけど、たまに見せるこの表情。

 根は真面目なのかもしれない。


「リリ、私は『トウキョウ』の事情を全く知りもせず、反抗し迷惑をかけてきたわ」

「その通りなの。リリのせっかくのお休みを邪魔して本当に迷惑しちゃうの」

「………………それはどうでもいいわ」

「全然どうでも良くないの! 良くないの!」

「とにかく! 私はこのまますんなり『トウキョウ』の仲間になるのが許せない。だからこちらからお願いさせてもらうわ」


 大きく深呼吸し、リリの目をまっすぐと見据える。

 こういう律儀な面が彼女のいいところでもある。

 普段は傍若無人でありながら、心の奥底では自分の筋を通さなければすまない責任感を兼ね備えている。


「私を『魔王』討伐の仲間に入れて欲しい。そのためにリリ。私の力を試しなさい」


 ミリアは勝てる戦を好む。

 勝機のない戦いは挑まないタイプだ。

 そんな少女が、己の筋を通すために負け戦に挑もうとしている。

 自分よりも一回り以上小さい幼女の胸を借りようとしている。


 黄金の髪がサラリと揺れる。

 二度も敗北した格上の戦士に、彼女は頭を下げていた。


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